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せんせー、そんなこと言っちゃっていいんですか。ばかやろうあれは他言無用だぞ! なんていうやり取りを聞きながら、宗一郎は机から数Ⅱの教科書を取り出す。
なんだか急に、いままでうじうじ悩んでいたのがバカらしくなった。
そうだ。悩んでたってはじまらない。何も知らないのなら、これから知ればいい。
今更もう、伊織のことを諦めることなんてできないんだから。
(だったら前に進むだけだ)
宗一郎はやけにすっきりした気持ちでそう思うと、黒板の文字をノートに写し始めた。
昼休み。
伊織、信長、まりあの三人は仲良く屋上でお弁当を広げていた。
青空の下で食べるお弁当はいつもよりおいしいはずなのに、伊織の心はちっとも弾まなかった。
目の前に広がるお弁当にも、全然箸が進まない。
今日のお弁当は大好きな五目チャーハン弁当なのに!
ううううと変な唸り声を上げながらお弁当を見つめている伊織の視界に、ふいに信長の箸が飛び込んできた。
それは迷うことなく伊織特製の玉子焼きを掴んで、ひょいと信長の口の中へ運んでいく。
「ああっ!」
伊織はそれを見届けて絶望的な声を上げた。
その玉子焼きは、せっかく早起きして作った傑作だったのに!
信長はもぐもぐとしっかり咀嚼してごくんと飲み込むと、きらきらと顔を輝かせて叫んだ。
「うっめ~! これ、伊織が作ったのか!? すごいな、お前! 玉子焼きの天才!」
「……ありがと」
ここまで褒められたら、怒る気力も出てこない。
伊織は少しの悲しさを胸に、ぐったり疲れた様子でお礼を言った。
ああ、わたしの玉子焼き……。
「にしても伊織ちゃん、元気ないね。大丈夫?」
まりあがぱたぱたと伊織に手で風を送りながら言った。
伊織はその問いに、ふるふると首を振る。
「大丈夫じゃない……」
「なんだよ、辛気くせえな」
「だってしょうがないじゃない! あんなに大泣きしちゃうなんて! しかもノブなんかに慰められるなんて!」
「おい! オレなんかってのはないだろ!?」
「うわーん、もうわたしどんな顔して部活に行けばいいの~!?」
日曜日は体育館をワックスがけするとかで部活が休みで、今日の朝練もその影響で休みだった。
今日の午後練が、伊織が仙道と会って大泣きした後の初めての部活だった。
あんな恥ずかしい醜態をさらしたあとで、とても顔を出せない。
おまけに仙道とのこととか泣いた理由とかも詮索されたくない!
伊織は思って頭を抱え込む。
「普通に行きゃいいだろーが」
あっけらかんと言い放つ信長に、伊織はきっと鋭い視線を向ける。
「それができれば苦労しないっての! あー、やっぱり類人猿には人間の気持ちなんて理解できないんだわ」
「おい! 誰が類人猿だこのやろっ!」
「うっさい、このアウストラロピテクス!」
「なんだと!?」
信長は暴言を吐く伊織の頭をぐしゃぐしゃかき回した。
ああ、やめて~! と伊織の絶望的な叫び声が信長の手の下から漏れ聞こえる。
「まあまあ」
なんだか急に、いままでうじうじ悩んでいたのがバカらしくなった。
そうだ。悩んでたってはじまらない。何も知らないのなら、これから知ればいい。
今更もう、伊織のことを諦めることなんてできないんだから。
(だったら前に進むだけだ)
宗一郎はやけにすっきりした気持ちでそう思うと、黒板の文字をノートに写し始めた。
昼休み。
伊織、信長、まりあの三人は仲良く屋上でお弁当を広げていた。
青空の下で食べるお弁当はいつもよりおいしいはずなのに、伊織の心はちっとも弾まなかった。
目の前に広がるお弁当にも、全然箸が進まない。
今日のお弁当は大好きな五目チャーハン弁当なのに!
ううううと変な唸り声を上げながらお弁当を見つめている伊織の視界に、ふいに信長の箸が飛び込んできた。
それは迷うことなく伊織特製の玉子焼きを掴んで、ひょいと信長の口の中へ運んでいく。
「ああっ!」
伊織はそれを見届けて絶望的な声を上げた。
その玉子焼きは、せっかく早起きして作った傑作だったのに!
信長はもぐもぐとしっかり咀嚼してごくんと飲み込むと、きらきらと顔を輝かせて叫んだ。
「うっめ~! これ、伊織が作ったのか!? すごいな、お前! 玉子焼きの天才!」
「……ありがと」
ここまで褒められたら、怒る気力も出てこない。
伊織は少しの悲しさを胸に、ぐったり疲れた様子でお礼を言った。
ああ、わたしの玉子焼き……。
「にしても伊織ちゃん、元気ないね。大丈夫?」
まりあがぱたぱたと伊織に手で風を送りながら言った。
伊織はその問いに、ふるふると首を振る。
「大丈夫じゃない……」
「なんだよ、辛気くせえな」
「だってしょうがないじゃない! あんなに大泣きしちゃうなんて! しかもノブなんかに慰められるなんて!」
「おい! オレなんかってのはないだろ!?」
「うわーん、もうわたしどんな顔して部活に行けばいいの~!?」
日曜日は体育館をワックスがけするとかで部活が休みで、今日の朝練もその影響で休みだった。
今日の午後練が、伊織が仙道と会って大泣きした後の初めての部活だった。
あんな恥ずかしい醜態をさらしたあとで、とても顔を出せない。
おまけに仙道とのこととか泣いた理由とかも詮索されたくない!
伊織は思って頭を抱え込む。
「普通に行きゃいいだろーが」
あっけらかんと言い放つ信長に、伊織はきっと鋭い視線を向ける。
「それができれば苦労しないっての! あー、やっぱり類人猿には人間の気持ちなんて理解できないんだわ」
「おい! 誰が類人猿だこのやろっ!」
「うっさい、このアウストラロピテクス!」
「なんだと!?」
信長は暴言を吐く伊織の頭をぐしゃぐしゃかき回した。
ああ、やめて~! と伊織の絶望的な叫び声が信長の手の下から漏れ聞こえる。
「まあまあ」