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「オレは、文字通り伊織ちゃんのことずっと探してた。失ってから今まで、一度も彼女を忘れたことなんてない」
「……その割にはずいぶん女の子と遊んでたみたいだけど。そのままそのうちの一人として伊織ちゃんのこと泣かすつもり?」
「まさか。もう他の子と遊ぶのはやめるよ。伊織ちゃんさえいてくれれば、それだけでいいんだ」
「…………」
目を閉じて仙道が言う。
仙道の、祈りにも似たような声。それに宗一郎が驚いたように沈黙した。
こんな表情を仙道がするなんて。
胸がざわざわする。よりどころのない不安感がまとわりつく。
二人の過去にいったいなにがあったのだろうか?
自分は、二人の間に入っていけないのではないか……?
「仙道。おまえ、伊織ちゃんとはどういう関係なの?」
早くなる動悸に、声が震えないように細心の注意を払いながら宗一郎は言った。
答えを、聞きたいようで聞きたくなかった。
簡単には踏み込めないような、特別な絆が二人の間に存在している。それをただ確かめるだけのような気がしてならなかった。
仙道は切ないような苦しいような、なんともいえない複雑な表情を浮かべて薄く笑う。
「関係、ね。言葉にするなら中学の先輩と後輩だよ。だけど、オレたちはそれよりもうちょっと特別だった。それを表現する言葉をオレは持ち合わせてないけど、とにかくオレにとって伊織ちゃんは大切な女の子だったし、伊織ちゃんも同じようにオレのこと大切に思ってくれてたよ」
「…………」
言葉よりも表情が、声音が、仙道を取り巻くもの全てが、仙道が伊織のことをどれほど大切に思っているのかを伝えてきた。
宗一郎は言葉をなくした。
負けなんて認めたくない。自分にとっても伊織は大切な存在だ。誰にも渡したくない。
だけど。
宗一郎はぎゅっと拳を握り締める。
「伊織ちゃんは仙道のこと拒絶してるように見えるよ」
「そうだな。……でも、神。違うんだ。伊織ちゃんはオレに怯えてるんじゃあない」
「? それじゃあいったい……?」
「オレと一緒に見え隠れするものに怯えてるんだ」
眉をひそめて顔を上げた宗一郎の目に、仙道の沈痛な表情が飛び込んできた。
見ているこちらが切なくなるくらいの沈んだ表情。
そんな表情をたたえて、仙道はひどく静かに言葉を続ける。
「伊織ちゃんのこと、一番近くで支えてやりたいんだ。今だって、伊織ちゃんは深い暗闇の底で、じっと助けを待ってる」
「…………」
「神。お前は伊織ちゃんのこと何も知らない。そんなお前には、伊織ちゃんのこと守ることはできないよ」
そう言って仙道は正面から静かな瞳で宗一郎を見据えた。
その瞳が、言葉よりも雄弁に宗一郎に語りかける。
だからお前は手をだすなと。迂闊に近づいて、彼女を傷つけるようなことはするなと。
「仙道……」
何も言えなかった。自分の中に反論の余地がなにも残されてないことに気付いて、宗一郎は愕然とする。
こんなにも伊織を好きなのに……。
唇を噛み締める宗一郎に、仙道が追い討ちをかけるように口を開く。
「おまえに、伊織ちゃんは渡さない」
仙道はそれだけ言うと、呆然と立ち尽くす宗一郎をそのままにくるりと踵をかえした。
「! 仙道!」
ハッと我に返って呼び止める宗一郎の声に振り返ることなく、仙道は公園から姿を消した。
* * *
「……その割にはずいぶん女の子と遊んでたみたいだけど。そのままそのうちの一人として伊織ちゃんのこと泣かすつもり?」
「まさか。もう他の子と遊ぶのはやめるよ。伊織ちゃんさえいてくれれば、それだけでいいんだ」
「…………」
目を閉じて仙道が言う。
仙道の、祈りにも似たような声。それに宗一郎が驚いたように沈黙した。
こんな表情を仙道がするなんて。
胸がざわざわする。よりどころのない不安感がまとわりつく。
二人の過去にいったいなにがあったのだろうか?
自分は、二人の間に入っていけないのではないか……?
「仙道。おまえ、伊織ちゃんとはどういう関係なの?」
早くなる動悸に、声が震えないように細心の注意を払いながら宗一郎は言った。
答えを、聞きたいようで聞きたくなかった。
簡単には踏み込めないような、特別な絆が二人の間に存在している。それをただ確かめるだけのような気がしてならなかった。
仙道は切ないような苦しいような、なんともいえない複雑な表情を浮かべて薄く笑う。
「関係、ね。言葉にするなら中学の先輩と後輩だよ。だけど、オレたちはそれよりもうちょっと特別だった。それを表現する言葉をオレは持ち合わせてないけど、とにかくオレにとって伊織ちゃんは大切な女の子だったし、伊織ちゃんも同じようにオレのこと大切に思ってくれてたよ」
「…………」
言葉よりも表情が、声音が、仙道を取り巻くもの全てが、仙道が伊織のことをどれほど大切に思っているのかを伝えてきた。
宗一郎は言葉をなくした。
負けなんて認めたくない。自分にとっても伊織は大切な存在だ。誰にも渡したくない。
だけど。
宗一郎はぎゅっと拳を握り締める。
「伊織ちゃんは仙道のこと拒絶してるように見えるよ」
「そうだな。……でも、神。違うんだ。伊織ちゃんはオレに怯えてるんじゃあない」
「? それじゃあいったい……?」
「オレと一緒に見え隠れするものに怯えてるんだ」
眉をひそめて顔を上げた宗一郎の目に、仙道の沈痛な表情が飛び込んできた。
見ているこちらが切なくなるくらいの沈んだ表情。
そんな表情をたたえて、仙道はひどく静かに言葉を続ける。
「伊織ちゃんのこと、一番近くで支えてやりたいんだ。今だって、伊織ちゃんは深い暗闇の底で、じっと助けを待ってる」
「…………」
「神。お前は伊織ちゃんのこと何も知らない。そんなお前には、伊織ちゃんのこと守ることはできないよ」
そう言って仙道は正面から静かな瞳で宗一郎を見据えた。
その瞳が、言葉よりも雄弁に宗一郎に語りかける。
だからお前は手をだすなと。迂闊に近づいて、彼女を傷つけるようなことはするなと。
「仙道……」
何も言えなかった。自分の中に反論の余地がなにも残されてないことに気付いて、宗一郎は愕然とする。
こんなにも伊織を好きなのに……。
唇を噛み締める宗一郎に、仙道が追い討ちをかけるように口を開く。
「おまえに、伊織ちゃんは渡さない」
仙道はそれだけ言うと、呆然と立ち尽くす宗一郎をそのままにくるりと踵をかえした。
「! 仙道!」
ハッと我に返って呼び止める宗一郎の声に振り返ることなく、仙道は公園から姿を消した。
* * *