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夢小説設定
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「別にそんなの宗ちゃんが持ってかなくてもいいじゃん!」
「でも誰かが持っていかないといけないだろ?」
「それは、そうだけど……。一緒に行っちゃダメなの?」
「遅くなるからね」
「じゃあ、駅まで! 駅まででいいから一緒に帰ろう!」
「…………」
宗一郎は困ったような笑顔を浮かべて眼前の幼馴染を見つめた。
その表情には、ダメって行ってもついてくもんねという決意がありありと見て取れた。
宗一郎は降参したようにため息をはくと、微笑する。
「いいよ。じゃあ駅までだよ」
「うん! やったあ、宗ちゃん大好き!」
そう言って腕に抱きついてくるまりあを優しく引き剥がしながら、宗一郎は駐輪場へ自転車を取りに行った。
鍵を差し込んでハンドルに手を伸ばし、スタンドを軽く蹴り上げる。
がちゃんという鈍い振動を手の平に感じながら、宗一郎はそれをゆっくり押した。
からからとタイヤの回転する音がする。
「お待たせ、まりあ」
「うん!」
そのまま自転車にはまたがらず、校門まで自転車を押して歩いた。
まりあもそれに並んで歩き出す。
「ね、宗ちゃん! 伊織ちゃんと仙道さんってどんな関係だったのかなぁ?」
ふいに飛び出したまりあのその言葉に、宗一郎はわずかに眉を寄せた。
胸の中にもやもやとした不快感が広がる。
宗一郎はそれを隠すように、わざと興味ない風を装って答えた。
「さあね」
「でもでも、あれは絶対付き合ってたよね! しかも、なんかワケありっぽいし!」
楽しそうなまりあの言葉。
胸につもっていく苛立ち。
「どうだろう」
「ええ~っ! 絶対そうだよう! しかも、見たでしょ宗ちゃん! 仙道さん伊織ちゃんのおでこにちゅーって! しかもね、しかもあの後、仙道さん伊織ちゃんに好きって言ったんだよ好きって!」
「…………」
眉間に刻まれる深いしわ。
けれどまりあは気付かない。
「ね、宗ちゃん! あの二人付き合うのかなぁ!? きゃ~、ステキステキ! すっごくお似合いだよね、伊織ちゃんと仙道さん! ね、宗ちゃん」
「まりあ」
宗一郎は静かに、けれど鋭い声で幼馴染の名前を呼んだ。
まりあはその硬質な響きにびくりと肩を揺らして、おそるおそる宗一郎を見上げる。
「そう……ちゃん?」
「まりあ、ごめん。少し静かにしてて」
「あ、ご……ごめんな、さい」
低く抑えた声で宗一郎がぴしゃりとそう言うと、まりあはおとなしく口をつぐんだ。
隣りでまりあがしゅんとしぼむのを感じて、宗一郎は小さくため息を吐いた。
自責の念が心の中をうずまく。
まりあは悪くない。頭ではわかっているけれど、どうしても苛立ちを抑えることができなかった。
(俺、余裕ないな……)
思って宗一郎は自嘲すると、まりあに謝ろうと唇を持ち上げた。
そのとき、校門で長身の影がうごいたのを視界の端で捉えた。
なにげなくそちらに視線を移して、宗一郎は驚いたように足を止めた。
「よお、神。待ってたぜ」
「――仙道」
「でも誰かが持っていかないといけないだろ?」
「それは、そうだけど……。一緒に行っちゃダメなの?」
「遅くなるからね」
「じゃあ、駅まで! 駅まででいいから一緒に帰ろう!」
「…………」
宗一郎は困ったような笑顔を浮かべて眼前の幼馴染を見つめた。
その表情には、ダメって行ってもついてくもんねという決意がありありと見て取れた。
宗一郎は降参したようにため息をはくと、微笑する。
「いいよ。じゃあ駅までだよ」
「うん! やったあ、宗ちゃん大好き!」
そう言って腕に抱きついてくるまりあを優しく引き剥がしながら、宗一郎は駐輪場へ自転車を取りに行った。
鍵を差し込んでハンドルに手を伸ばし、スタンドを軽く蹴り上げる。
がちゃんという鈍い振動を手の平に感じながら、宗一郎はそれをゆっくり押した。
からからとタイヤの回転する音がする。
「お待たせ、まりあ」
「うん!」
そのまま自転車にはまたがらず、校門まで自転車を押して歩いた。
まりあもそれに並んで歩き出す。
「ね、宗ちゃん! 伊織ちゃんと仙道さんってどんな関係だったのかなぁ?」
ふいに飛び出したまりあのその言葉に、宗一郎はわずかに眉を寄せた。
胸の中にもやもやとした不快感が広がる。
宗一郎はそれを隠すように、わざと興味ない風を装って答えた。
「さあね」
「でもでも、あれは絶対付き合ってたよね! しかも、なんかワケありっぽいし!」
楽しそうなまりあの言葉。
胸につもっていく苛立ち。
「どうだろう」
「ええ~っ! 絶対そうだよう! しかも、見たでしょ宗ちゃん! 仙道さん伊織ちゃんのおでこにちゅーって! しかもね、しかもあの後、仙道さん伊織ちゃんに好きって言ったんだよ好きって!」
「…………」
眉間に刻まれる深いしわ。
けれどまりあは気付かない。
「ね、宗ちゃん! あの二人付き合うのかなぁ!? きゃ~、ステキステキ! すっごくお似合いだよね、伊織ちゃんと仙道さん! ね、宗ちゃん」
「まりあ」
宗一郎は静かに、けれど鋭い声で幼馴染の名前を呼んだ。
まりあはその硬質な響きにびくりと肩を揺らして、おそるおそる宗一郎を見上げる。
「そう……ちゃん?」
「まりあ、ごめん。少し静かにしてて」
「あ、ご……ごめんな、さい」
低く抑えた声で宗一郎がぴしゃりとそう言うと、まりあはおとなしく口をつぐんだ。
隣りでまりあがしゅんとしぼむのを感じて、宗一郎は小さくため息を吐いた。
自責の念が心の中をうずまく。
まりあは悪くない。頭ではわかっているけれど、どうしても苛立ちを抑えることができなかった。
(俺、余裕ないな……)
思って宗一郎は自嘲すると、まりあに謝ろうと唇を持ち上げた。
そのとき、校門で長身の影がうごいたのを視界の端で捉えた。
なにげなくそちらに視線を移して、宗一郎は驚いたように足を止めた。
「よお、神。待ってたぜ」
「――仙道」