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月曜日。天気は晴れ。時刻は十時二十分。
二時間目の授業中、神宗一郎は頬杖をついて窓の外の雲を眺めていた。
さっきから教師が熱心にしゃべっているけれど、まったくと言っていいほど耳に入ってこない。
しばらくそのまま漂う雲を眺め、いい加減授業に集中しようと宗一郎が雲から目を離そうとした時、つんつんした形の雲がのんびりと流れてきた。
その形に宗一郎はある人物を連想して、ムッと表情を尖らせた。
脳裏に土曜の練習試合後の光景がよみがえる。
* * *
練習試合後、片付けも終わり、帰り始める部員も増える頃、宗一郎も例に漏れず帰宅の身支度を整えていた。
部室では咽び泣く伊織を信長が励ましている。
自分もそこへ行きたい衝動を必死に堪えながら、宗一郎はアイロンのかかったしわひとつないワイシャツに袖を通した。
きつく目を閉じる。
今自分が伊織の元へ行ってもなにもできないのは明白だった。
そばにいっても、なにもしてやれない。
だったら……。
宗一郎はゆっくりと目を開いた。
右腕に嵌めた時計に視線を落とす。
時計は夕方の五時を指していた。
これなら六時には陵南高校へつけるはず。目的の人物はいなくても、誰かしら自主練をしているやつはいるだろう。そいつに居場所を聞けばいい。
思って宗一郎はカバンを肩に掛けた。
陵南に行って、仙道に話を聞くつもりだった。
宗一郎は自主練する部員の中に牧の姿を見つけると、その背中に声を掛けた。
「牧さん」
「おう、神。どうした?」
「俺、今日はもう帰ります」
「ほう……。めずらしいな。自主練していかないのか?」
興味深げに牧は宗一郎を眺めた。
その探るような視線をかわすように、宗一郎は穏やかな笑顔を浮かべる。
「シューティングならもう終わりましたよ」
「そうか。――まあ、体をゆっくり休めるのも大事だからな。気をつけて帰れよ」
「はい。お先に失礼します」
小さく頭を下げて、宗一郎は体育館出口へと歩き出す。
「神!」
数歩歩いたところで、牧の声が飛んできた。
宗一郎は足を止めて振り返る。
「はい?」
「陵南なら、帰ってから六時ごろまで練習だって言ってたぞ。お前が着く頃にはちょうどいいんじゃないか?」
「!」
驚いて目を見開く宗一郎に、牧はにやりと唇を持ち上げた。
「気をつけていけよ」
「……ありがとうございます」
完全に見透かされている。
宗一郎は複雑な表情で牧にお礼を言うと、踵をかえし再び出口へ歩を進めた。
その腕に、まりあが飛び込んでくる。
「待って、宗ちゃん! まりあも一緒に帰る!」
「まりあ。俺はちょっと寄るところあるから、今日は一人で帰って」
「いま、牧さんがなんか言ってたけど……。宗ちゃん陵南に行くの?」
「そうだよ」
「なんで?」
「陵南の部員が忘れ物をしたからね。それを届けに」
下駄箱から靴を出しそれに履き替えながら、宗一郎はもっともらしい嘘をついてみせた。
まりあの頬が、ぷくっと膨れる。
二時間目の授業中、神宗一郎は頬杖をついて窓の外の雲を眺めていた。
さっきから教師が熱心にしゃべっているけれど、まったくと言っていいほど耳に入ってこない。
しばらくそのまま漂う雲を眺め、いい加減授業に集中しようと宗一郎が雲から目を離そうとした時、つんつんした形の雲がのんびりと流れてきた。
その形に宗一郎はある人物を連想して、ムッと表情を尖らせた。
脳裏に土曜の練習試合後の光景がよみがえる。
* * *
練習試合後、片付けも終わり、帰り始める部員も増える頃、宗一郎も例に漏れず帰宅の身支度を整えていた。
部室では咽び泣く伊織を信長が励ましている。
自分もそこへ行きたい衝動を必死に堪えながら、宗一郎はアイロンのかかったしわひとつないワイシャツに袖を通した。
きつく目を閉じる。
今自分が伊織の元へ行ってもなにもできないのは明白だった。
そばにいっても、なにもしてやれない。
だったら……。
宗一郎はゆっくりと目を開いた。
右腕に嵌めた時計に視線を落とす。
時計は夕方の五時を指していた。
これなら六時には陵南高校へつけるはず。目的の人物はいなくても、誰かしら自主練をしているやつはいるだろう。そいつに居場所を聞けばいい。
思って宗一郎はカバンを肩に掛けた。
陵南に行って、仙道に話を聞くつもりだった。
宗一郎は自主練する部員の中に牧の姿を見つけると、その背中に声を掛けた。
「牧さん」
「おう、神。どうした?」
「俺、今日はもう帰ります」
「ほう……。めずらしいな。自主練していかないのか?」
興味深げに牧は宗一郎を眺めた。
その探るような視線をかわすように、宗一郎は穏やかな笑顔を浮かべる。
「シューティングならもう終わりましたよ」
「そうか。――まあ、体をゆっくり休めるのも大事だからな。気をつけて帰れよ」
「はい。お先に失礼します」
小さく頭を下げて、宗一郎は体育館出口へと歩き出す。
「神!」
数歩歩いたところで、牧の声が飛んできた。
宗一郎は足を止めて振り返る。
「はい?」
「陵南なら、帰ってから六時ごろまで練習だって言ってたぞ。お前が着く頃にはちょうどいいんじゃないか?」
「!」
驚いて目を見開く宗一郎に、牧はにやりと唇を持ち上げた。
「気をつけていけよ」
「……ありがとうございます」
完全に見透かされている。
宗一郎は複雑な表情で牧にお礼を言うと、踵をかえし再び出口へ歩を進めた。
その腕に、まりあが飛び込んでくる。
「待って、宗ちゃん! まりあも一緒に帰る!」
「まりあ。俺はちょっと寄るところあるから、今日は一人で帰って」
「いま、牧さんがなんか言ってたけど……。宗ちゃん陵南に行くの?」
「そうだよ」
「なんで?」
「陵南の部員が忘れ物をしたからね。それを届けに」
下駄箱から靴を出しそれに履き替えながら、宗一郎はもっともらしい嘘をついてみせた。
まりあの頬が、ぷくっと膨れる。