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夢小説設定
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「「ああっ!」」
絶望的な声を上げる伊織とハモるように、それまで息をつめて成り行きを見守っていた信長も叫んだ。
伊織はあまりのショックに、その場にがっくりと膝をつく。
そうだった。仙道彰はこういう男だった。思わずケータイを取り出してしまった自分の行動を悔やんでも悔やみきれない。
仙道は自分もしゃがみ込むと、伊織と向き合うようにして彼女のケータイを差し出した。
「はい」
「……ありがとうございます」
伊織はそれを素直に受け取って、仙道から視線を逸らすように目を伏せた。
仙道はそれを切なそうな表情で見つめて、ぽつりと呟いた。
「伊織ちゃん。伊織ちゃんの言うとおり、オレ、知ってるよ」
その言葉に、伊織が張り詰めた表情で顔を上げた。
その頬を、次第に涙が伝い落ちる。
「じゃあ、なんで……?」
仙道はそっと伊織の頬に手を伸ばすと、人差し指で優しくそこに流れる涙を拭った。
愛おしむように目を細めて、口の端を持ち上げる。
「でも大丈夫だよ、伊織ちゃん。今みたいにすぐだまされちゃうとことか、ころころ変わる表情とか……。伊織ちゃん、キミは全然変わってない」
「あきら、さん」
戸惑うようにゆれる、伊織の涙に滲む瞳。
それに見上げられて仙道は心を落ち着かなくさせながらも、伊織を安心させるようににこりと微笑むと、その頬に手を伸ばした。
流れる涙を今度は親指の腹で拭って、そのままおでこにそっと唇を寄せる。
ちゅっという軽いリップ音をたてて、それはゆっくりと離れていった。
伊織の瞳が、驚きに見開かれていく。
体育館中が、シンと静まり返る。
そこに響く、仙道の声。
「大丈夫。伊織ちゃんは、オレの大好きなあの頃の伊織ちゃんのままだよ」
「!」
「あとで連絡するね」
呆然としている伊織の頭を優しく撫でて仙道は立ち上がると、そのまま体育館を後にした。
それを見送って、それまで水を打ったように静かだった体育館が瞬時にどっとざわめく。
「あー!!」
信長もハッと我に返って叫ぶと、仙道にキスされた伊織のおでこを自分のジャージでごしごしと拭いた。
「大丈夫か伊織!? ちくしょう、あのやろう! 二度と伊織にちょっかい出すな! ああ、誰か塩まけ塩~っ!!」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ信長の声をどこか遠くで聞きながら、伊織は呆然とする頭で昔の事を思い出していた。
そうだった。仙道は、いつだって自分が不安で弱っているときには、こんな風におでこにキスをくれた。
思って伊織は、自分のおでこにそっと手を伸ばす。
『伊織ちゃん、大丈夫。オレがついてるよ』
耳元で蘇る、いつかの仙道の声。
「~~~~っ!」
伊織はどうしようもなくなって、頭を抱えこんだ。
伊織が仙道に会って何を思ったのか、きっと仙道は全部見抜いてた。
会いたくなかったと思ったことも。体中で拒絶していることも。
その責任は仙道にはないのに。
それすらも全部受け止めて。
『大丈夫だよ』
そういって、また伊織のおでこにキスをくれた。
胸が苦しい。痛い。息ができない。
体育館の輝く床が、伊織の落とす涙を受け止めてさらにきらきらと輝いた。
伊織は喘ぐような呼吸を繰り返しながら、声を殺すように泣いた。
「伊織大丈夫か!? おい、しっかりしろ!」
信長が心配して伊織の震える背中を撫でさする。
伊織はその大きな手の平のぬくもりを感じながら、さらに涙を溢れさせた。
こんなのってない。もう今更なにもかも遅すぎる。
わたしが勝手にダメにしたのに。
約束をしたのに。大切な約束をしたのに。
わたしが勝手に一人でダメになって。勝手に一人で終わらせて。
仙道だって、もうとっくに終わってると思ってたのに。
もう二度と、会うこともないと。
そう、思っていたのに……!
(こんなことって……!)
「うぅぅ……。あ、ぁあ……!」
伊織は言葉にできない、苦しいほどに自身の内側を駆け巡る感情をどうしていいかわからずに、ただただうずくまって涙を流し続けた。
To be continued…
絶望的な声を上げる伊織とハモるように、それまで息をつめて成り行きを見守っていた信長も叫んだ。
伊織はあまりのショックに、その場にがっくりと膝をつく。
そうだった。仙道彰はこういう男だった。思わずケータイを取り出してしまった自分の行動を悔やんでも悔やみきれない。
仙道は自分もしゃがみ込むと、伊織と向き合うようにして彼女のケータイを差し出した。
「はい」
「……ありがとうございます」
伊織はそれを素直に受け取って、仙道から視線を逸らすように目を伏せた。
仙道はそれを切なそうな表情で見つめて、ぽつりと呟いた。
「伊織ちゃん。伊織ちゃんの言うとおり、オレ、知ってるよ」
その言葉に、伊織が張り詰めた表情で顔を上げた。
その頬を、次第に涙が伝い落ちる。
「じゃあ、なんで……?」
仙道はそっと伊織の頬に手を伸ばすと、人差し指で優しくそこに流れる涙を拭った。
愛おしむように目を細めて、口の端を持ち上げる。
「でも大丈夫だよ、伊織ちゃん。今みたいにすぐだまされちゃうとことか、ころころ変わる表情とか……。伊織ちゃん、キミは全然変わってない」
「あきら、さん」
戸惑うようにゆれる、伊織の涙に滲む瞳。
それに見上げられて仙道は心を落ち着かなくさせながらも、伊織を安心させるようににこりと微笑むと、その頬に手を伸ばした。
流れる涙を今度は親指の腹で拭って、そのままおでこにそっと唇を寄せる。
ちゅっという軽いリップ音をたてて、それはゆっくりと離れていった。
伊織の瞳が、驚きに見開かれていく。
体育館中が、シンと静まり返る。
そこに響く、仙道の声。
「大丈夫。伊織ちゃんは、オレの大好きなあの頃の伊織ちゃんのままだよ」
「!」
「あとで連絡するね」
呆然としている伊織の頭を優しく撫でて仙道は立ち上がると、そのまま体育館を後にした。
それを見送って、それまで水を打ったように静かだった体育館が瞬時にどっとざわめく。
「あー!!」
信長もハッと我に返って叫ぶと、仙道にキスされた伊織のおでこを自分のジャージでごしごしと拭いた。
「大丈夫か伊織!? ちくしょう、あのやろう! 二度と伊織にちょっかい出すな! ああ、誰か塩まけ塩~っ!!」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ信長の声をどこか遠くで聞きながら、伊織は呆然とする頭で昔の事を思い出していた。
そうだった。仙道は、いつだって自分が不安で弱っているときには、こんな風におでこにキスをくれた。
思って伊織は、自分のおでこにそっと手を伸ばす。
『伊織ちゃん、大丈夫。オレがついてるよ』
耳元で蘇る、いつかの仙道の声。
「~~~~っ!」
伊織はどうしようもなくなって、頭を抱えこんだ。
伊織が仙道に会って何を思ったのか、きっと仙道は全部見抜いてた。
会いたくなかったと思ったことも。体中で拒絶していることも。
その責任は仙道にはないのに。
それすらも全部受け止めて。
『大丈夫だよ』
そういって、また伊織のおでこにキスをくれた。
胸が苦しい。痛い。息ができない。
体育館の輝く床が、伊織の落とす涙を受け止めてさらにきらきらと輝いた。
伊織は喘ぐような呼吸を繰り返しながら、声を殺すように泣いた。
「伊織大丈夫か!? おい、しっかりしろ!」
信長が心配して伊織の震える背中を撫でさする。
伊織はその大きな手の平のぬくもりを感じながら、さらに涙を溢れさせた。
こんなのってない。もう今更なにもかも遅すぎる。
わたしが勝手にダメにしたのに。
約束をしたのに。大切な約束をしたのに。
わたしが勝手に一人でダメになって。勝手に一人で終わらせて。
仙道だって、もうとっくに終わってると思ってたのに。
もう二度と、会うこともないと。
そう、思っていたのに……!
(こんなことって……!)
「うぅぅ……。あ、ぁあ……!」
伊織は言葉にできない、苦しいほどに自身の内側を駆け巡る感情をどうしていいかわからずに、ただただうずくまって涙を流し続けた。
To be continued…