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夢小説設定

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仙道に名前をひょうきんに呼ばれると?

でも、どうしても思い出してしまう。
あのとき中学三連覇を遂げていれば、自分はきっと仙道を探して会いに来ていた。
そして、きっと……。
あの夏に失ったもの。
テニスも、仙道も。身を切るような思いをして、死ぬ程苦しい思いをして諦めたものが、急に今になって目の前に現れても、伊織にはただツライだけだった。

伊織ちゃん、どういうこと? 仙道くんと知り合いだったの?」

伊織が鼻をすんと啜ったとき、隣りに座る小百合が訊いてきた。
伊織は小百合に気付かれないように涙を拭くと、小さく頷いて押し出すように呟いた。

「……中学の、先輩なんです」
「中学の――!」

小百合はその答えに目を瞠った。
伊織がこれほどまでに様子がおかしいのも、これで納得がいった。
伊織はおそらく、まだ過去と触れるのを怖がっている。そのときの知り合いが突然現れたともなれば、怯えて当然だ。

「なるほど。でも、それなら知ってるでしょ、仙道くんが女性にだらしないこと。だからあんなの……」
「え?」

小百合の言葉に、伊織がびっくりしたように顔を向けた。
その勢いに、思わず小百合は言葉を途中で止めてしまう。
伊織は自分の中の記憶と照らし合わせるように考えると、眉間にしわを寄せる。

「彰さんが女にだらしない? そんなはずは……」
「え?」

今度はその言葉に小百合が驚いたように表情を止める。
そんな二人にはお構いなしに、きゃあきゃあ騒いで試合を見ていたまりあがのんきに口を開く。

「でも、あの仙道さんてかっこいいね。バスケもすっごくうまいし! いーじゃん元カレなんでしょ? せっかく再会したんだし、もっかい付き合っちゃえばいいじゃない」

伊織は泣きそうな顔で小さく首を振った。

「違うよ、彰さんとはそんなんじゃないの」
「えー? いーよう隠さなくて。あんなラブラブなとこ見せつけて、いまさら何をおっしゃる……」
「本当に違うの」

まりあの言葉を遮るように鋭く伊織が言う。
伊織の眉間が、苦しそうにしわを作った。

「だから、お願いします。二人とも祈ってください」
「え? 祈る?」

まりあと小百合がきょとんと顔を見合わせた。
伊織は真剣な表情で頷く。

「はい。――彰さんが30得点してしまわないように……」








「七番オッケー」

宗一郎は仙道の前に立つと、パスコースを塞ぐように腕と足を動かした。
仙道はそれを振り切ろうと、体を左右に小さく揺らす。

「へえ。オレのマークは神か」

おもしろそうに唇を持ち上げて言う仙道に、宗一郎は鋭いまなざしを向ける。

「30得点だっけ? させないよ」
「なに、神。やきもち?」
「…………」
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