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それに宗一郎が不思議そうに首をめぐらせる。
「伊織ちゃん? どうしたの、仙道と知り合いなの?」
「し、知りません」
「ええ!? ちょっと伊織ちゃん! いくらオレでもそれは傷つく……」
情けない声を上げる仙道に、伊織はぎんっと視線を向けた。
苦痛にゆがむ顔で、目尻に涙を浮かべながら声を荒げる。
「とにかく! 知らないったら知らないんです! ――もうほっといて下さい!」
それだけ言い放つと、伊織は宗一郎に行きましょ、と告げて海南のベンチに向けて逃げるように歩き出した。
宗一郎は戸惑いながらも先を行く伊織を追いかける。
「伊織ちゃん!」
そのとき、背中から追いかけるようにして仙道の声がかかった。
「伊織ちゃん、デートしよう!」
「は!?」
突拍子もないその言葉に、伊織が驚いて足を止めた。
振り返り、眉間にしわを寄せてまじまじと仙道を見やる。
伊織の隣りを歩いていた宗一郎も、目を見開いて仙道に顔を向けた。
ざわざわと体育館がどよめく。
伊織は口の端を引きつらせて、仙道に向き直る。
「な、何言ってるんですか、彰さん」
「オレ、この試合でひとりで30得点あげる。そうしたら、デートしよう。約束!」
にっと笑って仙道が言う。
「し、しません、そんな約束!」
「決まりね」
「え、ちょ、彰さん!?」
否定する伊織のことなど気にも止めずに、仙道はひとりで勝手に話を進めて満足げに笑うと、足取りも軽く陵南ベンチに戻っていった。
伊織は呆然と立ち尽くしてその背中を見送った。
試合開始のブザーが鳴り響く。
伊織はその音を絶望的な心境で聞いていた。
なんということだ。
あと四十分後に、世界の破滅が待っているんじゃないだろうか。
伊織ははぁぁとため息をつくと、両手で顔を覆った。
仙道と再会したなんて、いまだに信じられない。
夢だったらいいのに。そう思って伊織は自分の頬を思いっきり引っ張ってみる。
「いっ!」
物凄く痛かった。
夢じゃないんだという実感と、ひりひりとしびれるような痛みを放つ頬が伊織の涙を誘った。
目の前の現実から目を背けたくても、コートに目をうつせばあの頃と変わらず活躍する仙道がいて、伊織は本気で視界がぼやけるのを感じる。
コート上の仙道は、相変わらずかっこよくて伊織の目を惹きつけた。
身長もぐんと伸びて、体格もがっしりとして、雰囲気だって大人っぽくなって。たった一年弱会わなかっただけなのに、すっかり変わったその姿に、伊織の鼻がつんと刺激されてどんどん景色が滲んでいった。
どうして仙道と宗一郎たちが試合をしているんだろう。
どうして。
仙道を見ると、どうしても昔の自分を思い出してしまう。
テニスをしていた自分。
ずっとテニスと共にこの先の人生を歩んでいくんだと信じて疑いもしなかった自分。
仙道が悪いわけじゃない。それは伊織だってわかっている。
「伊織ちゃん? どうしたの、仙道と知り合いなの?」
「し、知りません」
「ええ!? ちょっと伊織ちゃん! いくらオレでもそれは傷つく……」
情けない声を上げる仙道に、伊織はぎんっと視線を向けた。
苦痛にゆがむ顔で、目尻に涙を浮かべながら声を荒げる。
「とにかく! 知らないったら知らないんです! ――もうほっといて下さい!」
それだけ言い放つと、伊織は宗一郎に行きましょ、と告げて海南のベンチに向けて逃げるように歩き出した。
宗一郎は戸惑いながらも先を行く伊織を追いかける。
「伊織ちゃん!」
そのとき、背中から追いかけるようにして仙道の声がかかった。
「伊織ちゃん、デートしよう!」
「は!?」
突拍子もないその言葉に、伊織が驚いて足を止めた。
振り返り、眉間にしわを寄せてまじまじと仙道を見やる。
伊織の隣りを歩いていた宗一郎も、目を見開いて仙道に顔を向けた。
ざわざわと体育館がどよめく。
伊織は口の端を引きつらせて、仙道に向き直る。
「な、何言ってるんですか、彰さん」
「オレ、この試合でひとりで30得点あげる。そうしたら、デートしよう。約束!」
にっと笑って仙道が言う。
「し、しません、そんな約束!」
「決まりね」
「え、ちょ、彰さん!?」
否定する伊織のことなど気にも止めずに、仙道はひとりで勝手に話を進めて満足げに笑うと、足取りも軽く陵南ベンチに戻っていった。
伊織は呆然と立ち尽くしてその背中を見送った。
試合開始のブザーが鳴り響く。
伊織はその音を絶望的な心境で聞いていた。
なんということだ。
あと四十分後に、世界の破滅が待っているんじゃないだろうか。
伊織ははぁぁとため息をつくと、両手で顔を覆った。
仙道と再会したなんて、いまだに信じられない。
夢だったらいいのに。そう思って伊織は自分の頬を思いっきり引っ張ってみる。
「いっ!」
物凄く痛かった。
夢じゃないんだという実感と、ひりひりとしびれるような痛みを放つ頬が伊織の涙を誘った。
目の前の現実から目を背けたくても、コートに目をうつせばあの頃と変わらず活躍する仙道がいて、伊織は本気で視界がぼやけるのを感じる。
コート上の仙道は、相変わらずかっこよくて伊織の目を惹きつけた。
身長もぐんと伸びて、体格もがっしりとして、雰囲気だって大人っぽくなって。たった一年弱会わなかっただけなのに、すっかり変わったその姿に、伊織の鼻がつんと刺激されてどんどん景色が滲んでいった。
どうして仙道と宗一郎たちが試合をしているんだろう。
どうして。
仙道を見ると、どうしても昔の自分を思い出してしまう。
テニスをしていた自分。
ずっとテニスと共にこの先の人生を歩んでいくんだと信じて疑いもしなかった自分。
仙道が悪いわけじゃない。それは伊織だってわかっている。