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夢小説設定
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「……ごめん」
「え?」
「ごめん伊織ちゃん、無理強いして。……神先輩でいいよ」
なんだか切なそうな宗一郎の声音に、伊織の胸がぐっと詰まる。
伊織は慌てて口を開いた。
「嫌です!」
「え?」
「違います、照れてただけです。……呼びたいです、宗先輩って」
「……ほんと?」
「ほんとです」
「じゃあ、呼んで?」
「……そ、宗先輩」
「うん」
宗一郎が嬉しそうに返事をする。
伊織は自分の胸に温かいものが広がるのを感じた。なんだかくすぐったい気持ちだ。
宗一郎が喜んでくれていることが、彼の背中からも伝わってくる。
「ふふ、宗先輩」
「うん」
「そーうせんぱい!」
「はは。なに? 伊織ちゃん」
重ねて呼ぶ伊織に、宗一郎が可笑しそうに笑い声を上げる。
大好き。伊織は心の中でだけそう呟いた。
(ちょっとだけなら……バレないよね?)
伊織は思って、こっそり体重を前に寄せた。
少しだけ密着する、自分と宗一郎の体。
どきどきとせわしなく脈打つ自分の鼓動の音が、そこから宗一郎に伝わってしまったらどうしようと頭の片隅で考える。
でも、もうすこしだけこのままでいたい。
伊織は学校に着くまでの間、ほんのすこしの、でもとても大きな幸せを噛み締めていた。
体育館に着くと、なにやら先に集まっていた部員たちが大急ぎで体育館中を右往左往していた。
伊織と宗一郎は顔を見合わせた。
体育館の時計を確認しても、まだ部活開始の九時までにはあと十分あった。
なのに、この大慌てぶりはなんだろう……?
すぐに信長たちも追いついて、この現状に首をひねった。
「なんすか、これ。オレら開始時間、間違えたんすかね?」
「いや、そんなことないはずだけど……」
宗一郎と信長が、困惑気味に呟く。
そのとき、伊織は足に鋭い痛みを感じて、思わず肩を飛び上がらせた。
「いっ!」
足もとを見ると、自分の足の上に、まりあの足が乗っていた。
ついで感じる、まりあの鋭い視線。
まりあが前の二人に聞こえないように、ひそひそと怒りをあらわに言ってきた。
「ちょっと伊織ちゃん! なによさっきの! どういうことなのよ!? 宗ちゃんのうしろに乗ってんじゃないわよ、誰の許可よ!」
もちろん宗一郎本人の許可に決まっているが、当然そういう意味ではない。
それに、そのことならまりあだって知っている。
伊織は、眉を下げた。