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信長が言い終わる前に、伊織は信長の襟首を掴んだ。
「ちょっと! どういう意味よ! わたしがいなきゃノブなんて徒歩通学のくせに!」
「わああ、そうでした! 俺が悪かった伊織! だからその拳をおろせ!」
伊織の高く振り上げた拳に、信長が両手を顔の前に出してガードの体勢をとる。
伊織は一度鼻でフンと息を吐き出すと、信長から手を離した。
「まあ、忍者めしのこともあるし? 今回は許してあげる」
「へへー。ありがたき幸せ!」
大げさに言う信長に、口許を緩める伊織。
それをみて、宗一郎はなんとなくおもしろくない気持ちになる。
そんなとき、まりあがコンビニから走り出てきた。
「おまたせ、みんな!」
「まりあちゃん! ううん全然待ってないよ」
そうにっこり笑って、信長の自転車にまたがろうとした伊織の腕を、宗一郎はむんずと掴んだ。
「わっ。神先輩?」
「伊織ちゃんはこっち」
「?」
そう言って親指で自分の背後を指す宗一郎に、伊織は首を傾ける。
「え、でもそこはまりあちゃんが」
「たまにはいいでしょ。ノブ、伊織ちゃんはオレが乗せてくから、ノブはまりあをお願いね」
「え、神さん!?」
「ちょっと宗ちゃん! やだやだなんで!?」
驚く二人を尻目に、宗一郎は伊織をむりやり自分の自転車の後ろに乗せると、自分も自転車にまたがった。
「じゃあ、先いってるよ」
爽やかにそれだけ言い残し、宗一郎はペダルを漕ぎ出した。
「…………」
突然どうしたんだろう。伊織は宗一郎の自転車に乗りながらも、戸惑いを隠せなかった。
時々宗一郎は、こういうよくわからない行動をする。彼が何を考えているのか、伊織にはまったくわからなかった。
伊織は吹き抜ける風を顔に受け、自分の前で自転車をこぐ宗一郎の頭を見下ろした。
普段見る事のない宗一郎の頭に、さっきまでの困惑なんか忘れて、なんだか新鮮なような、得したような気持ちになる。
「神先輩、つむじが二つなんですね。ふふ、意外にわんぱくものなんですか?」
「…………」
「神先輩?」
風の音で聞こえないのだろうか。少し声を大きくして呼びかけると、宗一郎の不機嫌そうな声が返ってきた。
「宗先輩」
「え?」
「昨日、俺のこと宗先輩って呼ぶって言ってなかった?」
「あ! えと、それは……」
もちろん、忘れたわけじゃない。
ただ、呼び方を急に変えるのは結構勇気がいるものだ。特に、その相手が好きな人ならなおのこと。
伊織は、宗一郎の肩を掴む手の平に、緊張してじわりと汗が浮かぶのを感じる。
耳元で、心臓がどきどきと音を立てはじめた。
名前を呼ぼうと意を決して唇を持ち上げたそのとき、宗一郎が先に謝ってきた。