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夢小説設定
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「昨日、神さんと仲直りできたんだろ?」
その言葉に、伊織が動きをぴたりと止めた。
「え、なんで知ってるの?」
「さあ。なんでだろうな」
にっと笑って言ってやると、伊織がなにかに気付いたように、はっと表情をあらためた。
「まさか……。仕組んでた?」
「ぴんぽーん。オレ、ボールカゴの車輪にちょっと細工した。すまん」
「ええー! あれ、ノブの仕業だったの!?」
「そう。車輪のしたに、ペットボトルのふた忍ばせといた」
「ど、どーりで……。なんか不自然な倒れ方したと思ったんだよね……」
伊織が遠い目をして言う。
昨日の惨劇を思い出してるんだろう。次第に、伊織の眉間にしわがよってきた。
危機感を感じた信長は、さりげなく話を宗一郎の話題に戻す。
「神さんと仲直りできてよかったな」
「う、うん……」
伊織が、頬を薄く染めて嬉しそうに微笑む。
信長はその笑顔をみて、自分も口の端を持ち上げた。
やっぱり伊織は、こんな風に笑顔なのが一番いい。
(オレって案外、健気なやつだったんだな)
思って信長は自嘲する。
絶対に叶う事のない恋。この気持ちは、伊織には告げないと決めた。
変に気持ちを打ちあけて、伊織を傷つけたくなかった。
苦しくないわけじゃない。今だって、胸の奥は鈍く軋んで痛い。
でもそれでもいい。伊織の笑顔を見るだけで、自分はこんなにも満たされる。
(その笑顔を陰で守るくらい、オレがやってもいいよな)
信長は切ない胸の痛みを隠しながら、伊織の頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でてやった。
「ぎゃあ! ノブ、また! 髪が! 髪が崩れるっ!」
「おう!」
「おうって! ちょっと、ノブ!」
いつもは抗議されるとすぐにやめる信長だが、今日は止めなかった。
伊織が信長を見上げ、何か言おうとして開きかけた口を、また再び閉じた。
訝しげに眉を寄せて、信長を見る。
「ノブ……?」
「はは! バケモンみたいになった!」
「ああそうかい」
ぐしゃぐしゃ頭のまま伊織が不機嫌そうに言い放つ。
信長はそのさまにくしゃりと破顔すると、伊織のぼさぼさになった髪にもう一度手を伸ばした。
「わりいわりい、ちょっとやりすぎた」
「すごく、だよ」
「悪かったって」
言って信長は髪を少し整えてやる。
伊織は黙って信長に髪を直させながら、何かを決意したようにきっと視線をあげて、信長をみやる。
「ノブ、わたしね。決めたの」
「あ?」
「まりあちゃんに、ちゃんと言う。許してもらえないかもしれないし、もう口もきいてもらえなくなるかもしれないし、絶交だってされちゃうかもしれないけど……。わたしやっぱり神先輩が好き。もう自分じゃどうしようもないの」
「うん。……いいんじゃないか」
信長は伊織に優しく微笑んで言ってやる。
彼女が不安に思っていることが、手に取るようにわかった。
自分が笑って背中を押してやることで、伊織が安心できるなら、それでよかった。
その言葉に、伊織が動きをぴたりと止めた。
「え、なんで知ってるの?」
「さあ。なんでだろうな」
にっと笑って言ってやると、伊織がなにかに気付いたように、はっと表情をあらためた。
「まさか……。仕組んでた?」
「ぴんぽーん。オレ、ボールカゴの車輪にちょっと細工した。すまん」
「ええー! あれ、ノブの仕業だったの!?」
「そう。車輪のしたに、ペットボトルのふた忍ばせといた」
「ど、どーりで……。なんか不自然な倒れ方したと思ったんだよね……」
伊織が遠い目をして言う。
昨日の惨劇を思い出してるんだろう。次第に、伊織の眉間にしわがよってきた。
危機感を感じた信長は、さりげなく話を宗一郎の話題に戻す。
「神さんと仲直りできてよかったな」
「う、うん……」
伊織が、頬を薄く染めて嬉しそうに微笑む。
信長はその笑顔をみて、自分も口の端を持ち上げた。
やっぱり伊織は、こんな風に笑顔なのが一番いい。
(オレって案外、健気なやつだったんだな)
思って信長は自嘲する。
絶対に叶う事のない恋。この気持ちは、伊織には告げないと決めた。
変に気持ちを打ちあけて、伊織を傷つけたくなかった。
苦しくないわけじゃない。今だって、胸の奥は鈍く軋んで痛い。
でもそれでもいい。伊織の笑顔を見るだけで、自分はこんなにも満たされる。
(その笑顔を陰で守るくらい、オレがやってもいいよな)
信長は切ない胸の痛みを隠しながら、伊織の頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でてやった。
「ぎゃあ! ノブ、また! 髪が! 髪が崩れるっ!」
「おう!」
「おうって! ちょっと、ノブ!」
いつもは抗議されるとすぐにやめる信長だが、今日は止めなかった。
伊織が信長を見上げ、何か言おうとして開きかけた口を、また再び閉じた。
訝しげに眉を寄せて、信長を見る。
「ノブ……?」
「はは! バケモンみたいになった!」
「ああそうかい」
ぐしゃぐしゃ頭のまま伊織が不機嫌そうに言い放つ。
信長はそのさまにくしゃりと破顔すると、伊織のぼさぼさになった髪にもう一度手を伸ばした。
「わりいわりい、ちょっとやりすぎた」
「すごく、だよ」
「悪かったって」
言って信長は髪を少し整えてやる。
伊織は黙って信長に髪を直させながら、何かを決意したようにきっと視線をあげて、信長をみやる。
「ノブ、わたしね。決めたの」
「あ?」
「まりあちゃんに、ちゃんと言う。許してもらえないかもしれないし、もう口もきいてもらえなくなるかもしれないし、絶交だってされちゃうかもしれないけど……。わたしやっぱり神先輩が好き。もう自分じゃどうしようもないの」
「うん。……いいんじゃないか」
信長は伊織に優しく微笑んで言ってやる。
彼女が不安に思っていることが、手に取るようにわかった。
自分が笑って背中を押してやることで、伊織が安心できるなら、それでよかった。