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夢小説設定
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朝の海南大学駅。
そこに、一本の電車が滑り込んできた。
ぷしゅうという油圧が変化する音と同時に金属のドアが開かれ、信長は電車から降りた。
今日は土曜日だ。サラリーマンの姿もほとんどなく、この時間帯のホームはひとがまばらにしかいない。
信長は改札に向けて、ゆうゆうと足を踏み出した。
いつもは人の波を縫うように向かう改札も、今日は苦労せず通り抜けることができる。
信長はケータイの電子定期券を利用していた。
ポケットからケータイ電話を取り出すと、フェリカポートを改札のそれにあてる。
ピッという軽い電子音がして、すぐにゲートが開かれた。
信長はするりとそこを通り抜け、外へ出る。
ホームの時計は、八時二十分を指していた。
今日の部活は九時開始で、伊織との待ち合わせは八時半だ。
ちょうどいい時間だった。
いつも伊織のいる定位置に目を向けると、こちらに気付いた伊織が微笑んで手を振ってくる。
信長もそれに軽く手を挙げると、足早に伊織の元へ向かった。
「ウッス!」
「おはよ、ノブ。今日はいつもどおりのご登場だね」
「言ったろ? 昨日は時間を読み違えたんだって」
「ああ、そうだっけ。ノブのことだから二日連続でやるかと思った」
「――まさか、おまえ今日も早く来てたりしたか?」
「まさか。わたしもさっき来たとこ」
「だよな。今日顔色いいもんな」
「? なにそれ」
信長の言葉に、伊織が眉を寄せる。
信長はにかっと笑うと、なんでもないというように首を振った。
「いや、こっちの話」
「ふうん?」
まだ眉根を寄せる伊織の顔を見て、信長は小さく笑った。
どうやら伊織は、昨日はぐっすり眠れたようだ。ここ一週間ばかし、少し青ざめていた顔色が元に戻っている。
(よかった)
信長は内心で安堵すると、駅前のコンビニをあごでしゃくった。
「伊織、今日オレ買い弁。ちょっとあそこのコンビニで買って来るからまっててくんね?」
「あ、そうなの? わかった。じゃあ、お菓子買ってきて。忍者めし」
「は!? なにそれ。忍者めし?」
「ハードグミだよ。売ってればグミのとこにあると思う。何味でもいいからさ」
「……お前変なのが好きなんだな」
忍者めしなんて、聞いたことがない。
信長が意地悪く笑って言うと、伊織は拗ねたように唇を尖らせた。
「いいじゃない。昔から時代劇が好きで、特に忍者が大好きなんだもん。その忍者のめしってテンション上がるでしょ」
「いや。理解に苦しむ」
「……学校置いてくよ」
「うおっとぉ! 忍者めし、ただちに買ってまいります!」
「うむ、行ってまいれ」
おどけたようにそう言うと、信長はコンビニに駆け込んだ。
スタミナ弁当と、あとはツナと明太子のおにぎりを掴んで、グミの陳列棚に移動する。
忍者めし、と書かれたグミは、ほんとうにあった。
ピーチとグレープの二種類が、仲良く並んでいる。
信長はしばらくどちらにするか悩んだが、めんどくさくなって二つとも手に掴んだ。
レジに移動して会計をすまし、伊織の待つ場所へ急ぎ足で戻る。
「わりい、伊織。待たせた」
「いいよ。ほら、袋、カゴに入れなよ。忍者めしあった?」
「あった。二種類あったから、二種類買ってきた」
「二つも? ごめんねありがと。いくらだった?」
「いいよ。いらない」
「え、なんで?」
「お前の快気祝い」
「快気祝いって、わたし病気してないですけど」
そこに、一本の電車が滑り込んできた。
ぷしゅうという油圧が変化する音と同時に金属のドアが開かれ、信長は電車から降りた。
今日は土曜日だ。サラリーマンの姿もほとんどなく、この時間帯のホームはひとがまばらにしかいない。
信長は改札に向けて、ゆうゆうと足を踏み出した。
いつもは人の波を縫うように向かう改札も、今日は苦労せず通り抜けることができる。
信長はケータイの電子定期券を利用していた。
ポケットからケータイ電話を取り出すと、フェリカポートを改札のそれにあてる。
ピッという軽い電子音がして、すぐにゲートが開かれた。
信長はするりとそこを通り抜け、外へ出る。
ホームの時計は、八時二十分を指していた。
今日の部活は九時開始で、伊織との待ち合わせは八時半だ。
ちょうどいい時間だった。
いつも伊織のいる定位置に目を向けると、こちらに気付いた伊織が微笑んで手を振ってくる。
信長もそれに軽く手を挙げると、足早に伊織の元へ向かった。
「ウッス!」
「おはよ、ノブ。今日はいつもどおりのご登場だね」
「言ったろ? 昨日は時間を読み違えたんだって」
「ああ、そうだっけ。ノブのことだから二日連続でやるかと思った」
「――まさか、おまえ今日も早く来てたりしたか?」
「まさか。わたしもさっき来たとこ」
「だよな。今日顔色いいもんな」
「? なにそれ」
信長の言葉に、伊織が眉を寄せる。
信長はにかっと笑うと、なんでもないというように首を振った。
「いや、こっちの話」
「ふうん?」
まだ眉根を寄せる伊織の顔を見て、信長は小さく笑った。
どうやら伊織は、昨日はぐっすり眠れたようだ。ここ一週間ばかし、少し青ざめていた顔色が元に戻っている。
(よかった)
信長は内心で安堵すると、駅前のコンビニをあごでしゃくった。
「伊織、今日オレ買い弁。ちょっとあそこのコンビニで買って来るからまっててくんね?」
「あ、そうなの? わかった。じゃあ、お菓子買ってきて。忍者めし」
「は!? なにそれ。忍者めし?」
「ハードグミだよ。売ってればグミのとこにあると思う。何味でもいいからさ」
「……お前変なのが好きなんだな」
忍者めしなんて、聞いたことがない。
信長が意地悪く笑って言うと、伊織は拗ねたように唇を尖らせた。
「いいじゃない。昔から時代劇が好きで、特に忍者が大好きなんだもん。その忍者のめしってテンション上がるでしょ」
「いや。理解に苦しむ」
「……学校置いてくよ」
「うおっとぉ! 忍者めし、ただちに買ってまいります!」
「うむ、行ってまいれ」
おどけたようにそう言うと、信長はコンビニに駆け込んだ。
スタミナ弁当と、あとはツナと明太子のおにぎりを掴んで、グミの陳列棚に移動する。
忍者めし、と書かれたグミは、ほんとうにあった。
ピーチとグレープの二種類が、仲良く並んでいる。
信長はしばらくどちらにするか悩んだが、めんどくさくなって二つとも手に掴んだ。
レジに移動して会計をすまし、伊織の待つ場所へ急ぎ足で戻る。
「わりい、伊織。待たせた」
「いいよ。ほら、袋、カゴに入れなよ。忍者めしあった?」
「あった。二種類あったから、二種類買ってきた」
「二つも? ごめんねありがと。いくらだった?」
「いいよ。いらない」
「え、なんで?」
「お前の快気祝い」
「快気祝いって、わたし病気してないですけど」