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夢小説設定
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「神先輩」
「ん?」
「突然泣いたりしてごめんなさい。あと、……ありがとうございます」
「うん。すっきりした?」
「はい」
頷いて、伊織は照れたように笑った。
あんなに声を上げて泣いたのはいつぶりだろう。
テニスを失った時だって、あんなふうに子供みたいに泣いたりはしなかった気がする。あの時はむしろ、感情をどこかに落としたようになっていたから、それも当たり前かもしれないけれど……。
あのときもこんな風に泣けたら、すっきりしただろうか。
とにかく、伊織の今の気持ちは、晴れやかだった。たまってた老廃物が、全部からだの外に出たみたいだ。
「よかった。――伊織ちゃんの笑顔、久しぶりに見るな」
「! ちょ、神先輩、何言ってるんですか!」
伊織が照れ隠しに怒ってみせる。
宗一郎は、嬉しそうにはははと笑った。
* * *
「うん。怒った顔も泣いてる顔もかわいいけど、やっぱり伊織ちゃんは笑顔が一番だね。ね、もう一回笑ってよ」
「なっ!」
伊織の顔が、瞬間湯沸かし器のように一気に赤くなる。
宗一郎はそれをみて、楽しそうに口の端を持ち上げた。
「照れた顔もかわいいよ」
「もう! 神先輩!? からかわないでくださいっ!」
ぷりぷり怒る伊織に、宗一郎はもう一度はははと笑った。
目の前にある伊織の髪にそっと触れると、今度は伊織がこちんと硬直した。
さらさらと、伊織の髪を手で流して全て手から零れ落ちると、もう一度一房握ってそれを繰り返す。
月の光が伊織の髪に反射して、とても綺麗に輝いていた。
「じ、じんせんぱい……」
顔を真っ赤にして、伊織がやめてくれと訴えてくる。
その様子がほんとうにかわいくて、宗一郎は声を上げて笑った。
思わず抱きしめたい衝動に駆られたけど、今はそれを我慢する。
せっかく前みたいに話せるようになったのに、またふりだしに戻るのは嫌だった。
髪をもてあそぶ手を止めて、伊織をじっと見つめる。
月と星に照らされて、伊織はいつもの何倍も綺麗だった。
「じ、神先輩。そんなに見つめないでください。とけちゃいますよぅ……」
いつもは透けるように白い頬をピンク色に染めて、伊織がかわいらしいことをいう。
「はは。おもしろいこというね。……俺の視線で、溶けてみる?」
「なっ! 何言ってるんですか!」
「ははは、冗談だよ! 痛い、痛いって!」
ちょっとからかいすぎただろうか。伊織がぽかぽかと殴ってきた。
結構本気で痛くて、一向にやめる気配のない伊織の腕を、宗一郎はぱしりと掴んだ。
「! は、離して下さい!」
「宗一郎」
「へ?」
突然、脈絡のない事を言われ、伊織が驚いて間の抜けた声を出す。
宗一郎は喉の奥でくつくつ笑いながら、もう一度言った。
「宗一郎。ね、伊織ちゃん。これからは宗一郎って呼んでよ」
「な! 無理ですよ! 呼べません!!」
頑なに拒否する伊織に、宗一郎はちょっとムッとした。
「ん?」
「突然泣いたりしてごめんなさい。あと、……ありがとうございます」
「うん。すっきりした?」
「はい」
頷いて、伊織は照れたように笑った。
あんなに声を上げて泣いたのはいつぶりだろう。
テニスを失った時だって、あんなふうに子供みたいに泣いたりはしなかった気がする。あの時はむしろ、感情をどこかに落としたようになっていたから、それも当たり前かもしれないけれど……。
あのときもこんな風に泣けたら、すっきりしただろうか。
とにかく、伊織の今の気持ちは、晴れやかだった。たまってた老廃物が、全部からだの外に出たみたいだ。
「よかった。――伊織ちゃんの笑顔、久しぶりに見るな」
「! ちょ、神先輩、何言ってるんですか!」
伊織が照れ隠しに怒ってみせる。
宗一郎は、嬉しそうにはははと笑った。
* * *
「うん。怒った顔も泣いてる顔もかわいいけど、やっぱり伊織ちゃんは笑顔が一番だね。ね、もう一回笑ってよ」
「なっ!」
伊織の顔が、瞬間湯沸かし器のように一気に赤くなる。
宗一郎はそれをみて、楽しそうに口の端を持ち上げた。
「照れた顔もかわいいよ」
「もう! 神先輩!? からかわないでくださいっ!」
ぷりぷり怒る伊織に、宗一郎はもう一度はははと笑った。
目の前にある伊織の髪にそっと触れると、今度は伊織がこちんと硬直した。
さらさらと、伊織の髪を手で流して全て手から零れ落ちると、もう一度一房握ってそれを繰り返す。
月の光が伊織の髪に反射して、とても綺麗に輝いていた。
「じ、じんせんぱい……」
顔を真っ赤にして、伊織がやめてくれと訴えてくる。
その様子がほんとうにかわいくて、宗一郎は声を上げて笑った。
思わず抱きしめたい衝動に駆られたけど、今はそれを我慢する。
せっかく前みたいに話せるようになったのに、またふりだしに戻るのは嫌だった。
髪をもてあそぶ手を止めて、伊織をじっと見つめる。
月と星に照らされて、伊織はいつもの何倍も綺麗だった。
「じ、神先輩。そんなに見つめないでください。とけちゃいますよぅ……」
いつもは透けるように白い頬をピンク色に染めて、伊織がかわいらしいことをいう。
「はは。おもしろいこというね。……俺の視線で、溶けてみる?」
「なっ! 何言ってるんですか!」
「ははは、冗談だよ! 痛い、痛いって!」
ちょっとからかいすぎただろうか。伊織がぽかぽかと殴ってきた。
結構本気で痛くて、一向にやめる気配のない伊織の腕を、宗一郎はぱしりと掴んだ。
「! は、離して下さい!」
「宗一郎」
「へ?」
突然、脈絡のない事を言われ、伊織が驚いて間の抜けた声を出す。
宗一郎は喉の奥でくつくつ笑いながら、もう一度言った。
「宗一郎。ね、伊織ちゃん。これからは宗一郎って呼んでよ」
「な! 無理ですよ! 呼べません!!」
頑なに拒否する伊織に、宗一郎はちょっとムッとした。