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「はは、冗談だよ。でもタバコ吸ってたのは頼むから内緒にしてくれ」
「貸しひとつですからね」
「へいへい」
松本は流すように返事をすると、タバコの煙をぷかーっと吐き出した。
「さ、鈴村。お前ももう帰れ。二十時になったらセコムかけるぞ」
「え!?」
驚いて職員室の時計を見ると、二十時まであと十分しかなかった。
「わ、急がなきゃ。じゃあ先生またあした! あ、一応あるならファブリーズでもリセッシュでもしといたほうがいいですよ! 吸ってる人にはわかんないだろうけど、タバコ吸わない人はすぐ匂いに気付きますからね」
「おー、了解。助言サンキュ」
「いーえ。じゃあ先生さよなら~」
「おう。あ、昇降口もう職員用しか開いてないからな。靴持ってそっから出ろよ。じゃあ、気をつけて帰れよ~」
わざわざ職員室の戸口に立って見送ってくれる松本にひらひら手をふると、伊織は駆け出した。
一年生の昇降口にたどりつき、自分の下駄箱からローファーを乱暴に掴むと、ちょうど正反対にある職員室用出口に取って返す。
なんとか二十時になる前に校舎を出ることができた。
「はあ、疲れた……」
上がった息を整えながら駐輪場へ向かうと、俯いていた視界にふと誰かの靴が入った。
(? こんな時間に誰だろ?)
何の気なしに顔をあげて、伊織は驚きに体を硬直させた。
駐輪場の柱に背を預けるようにして立っていたのは、宗一郎だった。
宗一郎は伊織に気付くと、後ろに預けていた体重を戻して、伊織に微笑む。
「お疲れさま、伊織ちゃん」
「お、お疲れ様です……」
ここでなにしてるんだろう、とか思う前に、宗一郎の姿に圧倒された。
月明かりに照らされて、ただでさえ綺麗な宗一郎のその顔が、いっそう綺麗に見えた。
真っ白な肌が浮かび上がるようで、美しい。
男の人にも美人って言う言葉を使うことを長年疑問に思っていた伊織だったが、こういうことかとやけに納得できた。
今の宗一郎は、ほんとうに美人だ。
思って頬がかあっと赤くなる。
伊織は、暗闇に感謝した。
これだけ暗かったら、どんなに顔が赤くても、宗一郎には伝わらないだろう。
思わずじっと見つめてしまったさきで、宗一郎が照れたように微笑む。
「なんか、伊織ちゃんとこんな長い間目があうの、久しぶりだな」
「! す、すみません……っ!」
その言葉にハッとして、伊織は慌てて視線を下げる。
そんな伊織に、宗一郎がはい、と何かを差し出した。
「?」
視線をやると、自動販売機で売っている缶のレモンティーだった。
この学校には、レモンティーが二種類ある。
宗一郎の差し出しているのは、伊織の好きなほうのレモンティーだった。
(そういえば、いつだったかどっちのレモンティーが好きかって神先輩と話したことがあったっけ)
こんな些細な事まで覚えていてくれる宗一郎が、伊織はほんとうに大好きだ。
慌てて目尻に浮かんだ涙を隠すように、伊織は俯いてそのレモンティーを受け取った。
「あ、ありがとうございます」
声が震えないように、細心の注意を払いながら伊織がそう言うと、頭上で宗一郎が微笑んだ雰囲気がした。
胸が苦しい。きゅうっとしめつけられて、呼吸さえままならなくなる。
伊織は泣きたい気持ちを必死で我慢しながら、なんとか口を開く。
「貸しひとつですからね」
「へいへい」
松本は流すように返事をすると、タバコの煙をぷかーっと吐き出した。
「さ、鈴村。お前ももう帰れ。二十時になったらセコムかけるぞ」
「え!?」
驚いて職員室の時計を見ると、二十時まであと十分しかなかった。
「わ、急がなきゃ。じゃあ先生またあした! あ、一応あるならファブリーズでもリセッシュでもしといたほうがいいですよ! 吸ってる人にはわかんないだろうけど、タバコ吸わない人はすぐ匂いに気付きますからね」
「おー、了解。助言サンキュ」
「いーえ。じゃあ先生さよなら~」
「おう。あ、昇降口もう職員用しか開いてないからな。靴持ってそっから出ろよ。じゃあ、気をつけて帰れよ~」
わざわざ職員室の戸口に立って見送ってくれる松本にひらひら手をふると、伊織は駆け出した。
一年生の昇降口にたどりつき、自分の下駄箱からローファーを乱暴に掴むと、ちょうど正反対にある職員室用出口に取って返す。
なんとか二十時になる前に校舎を出ることができた。
「はあ、疲れた……」
上がった息を整えながら駐輪場へ向かうと、俯いていた視界にふと誰かの靴が入った。
(? こんな時間に誰だろ?)
何の気なしに顔をあげて、伊織は驚きに体を硬直させた。
駐輪場の柱に背を預けるようにして立っていたのは、宗一郎だった。
宗一郎は伊織に気付くと、後ろに預けていた体重を戻して、伊織に微笑む。
「お疲れさま、伊織ちゃん」
「お、お疲れ様です……」
ここでなにしてるんだろう、とか思う前に、宗一郎の姿に圧倒された。
月明かりに照らされて、ただでさえ綺麗な宗一郎のその顔が、いっそう綺麗に見えた。
真っ白な肌が浮かび上がるようで、美しい。
男の人にも美人って言う言葉を使うことを長年疑問に思っていた伊織だったが、こういうことかとやけに納得できた。
今の宗一郎は、ほんとうに美人だ。
思って頬がかあっと赤くなる。
伊織は、暗闇に感謝した。
これだけ暗かったら、どんなに顔が赤くても、宗一郎には伝わらないだろう。
思わずじっと見つめてしまったさきで、宗一郎が照れたように微笑む。
「なんか、伊織ちゃんとこんな長い間目があうの、久しぶりだな」
「! す、すみません……っ!」
その言葉にハッとして、伊織は慌てて視線を下げる。
そんな伊織に、宗一郎がはい、と何かを差し出した。
「?」
視線をやると、自動販売機で売っている缶のレモンティーだった。
この学校には、レモンティーが二種類ある。
宗一郎の差し出しているのは、伊織の好きなほうのレモンティーだった。
(そういえば、いつだったかどっちのレモンティーが好きかって神先輩と話したことがあったっけ)
こんな些細な事まで覚えていてくれる宗一郎が、伊織はほんとうに大好きだ。
慌てて目尻に浮かんだ涙を隠すように、伊織は俯いてそのレモンティーを受け取った。
「あ、ありがとうございます」
声が震えないように、細心の注意を払いながら伊織がそう言うと、頭上で宗一郎が微笑んだ雰囲気がした。
胸が苦しい。きゅうっとしめつけられて、呼吸さえままならなくなる。
伊織は泣きたい気持ちを必死で我慢しながら、なんとか口を開く。