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夢小説設定
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「え!? 牧さん手伝わないんすか!?」
「これぐらい鈴村ひとりでなんとかなるだろ。最近失敗続きだからな。ちょっとは罰をやらんと」
「いや、でも伊織ひとりじゃ……」
そう言って手伝いにいこうとした信長の首根っこを、牧が掴む。
「ぎゃ!」
「手伝ったら罰にならんだろ、清田」
「……すまん伊織! オレは無力だ!」
許せ~! と叫ぶ信長に、伊織はあははと笑った。
その言い回しが、大げさでおもしろかった。
「ああ、いいよ! わたしの不注意が原因だし」
「ほんとにごめんな!」
いいながらも、信長は牧にずるずると引きずられていく。
他のみんなも、一様にすまなそうな視線を向けてくる。
やはり、誰も牧には逆らえないようだ。
伊織はみんなに変な気を遣わせまいと、にこりと微笑んだ。
「ほんとうに大丈夫! あ、ノブ、先に帰ってていいからね! また明日六時に駅で! それからみなさんも気をつけて! お疲れ様でした!」
おつかれさま~という声を最後に、みんなが姿を消した。
それを見送って、伊織は早速ボールたちの確保にとりかかる。
ほんとよくもまあこんなに散らばったものだ。
伊織は体育館中を駆けずり回りながら、ボールを回収してまわった。
最後のひとつを放り込み、ふうと息を吐いて額の汗をぬぐう。
それから更衣室で制服に着替えて、部室、用具室、体育館と鍵を閉めると、職員室に向かった。
鍵は、最後に体育館を出た人が職員室に返す決まりだった。
さすがに二十時近くにもなると、学校内にはもうだれもいない。
幽霊やお化けの類を信じない伊織でも、しんと冷え切った暗い廊下はさすがにちょっと怖かった。
「う~。さすが、夜の学校。迫力あっる~」
自分を勇気付けるようにそんなことを呟くと、唯一明かりのともっている職員室を目指した。
リノリウムの床をぺたぺたと足音を鳴らしながら進み、目的のドアを開ける。
「しつれいしまーす」
「おう、鈴村か。こんな遅くまでごくろうさまだな」
職員室にいたのは、伊織の担任教師である松本だった。
松本はまだ年も若く、なかなかイケメンで、気さくで飾らない性質が生徒たちに人気があった。
伊織も例に漏れず、松本が好きだ。
マンモス校の海南大附属高校で、数少ない知っている先生が残っていたことで、伊織はホッと息をはく。
やっぱり夜の学校はこわくて緊張していたらしい。
松本の顔を見て、それが一気に弛緩した。
「先生こそ。夜の学校ってほんっと怖いですね。ちょっとビビッちゃった」
「はは。確かにな。暗いってだけでも迫力あるけど、普段活気あるから余計だな。輪をかけてさびしく見えるんだよ」
「ああ、言えてますね」
「だろ?」
他愛無い話をしながら、伊織は鍵置き場に体育館の鍵をぶら下げる。
なんか匂うなと思って振り返ると、松本はおもむろにタバコに火をつけていた。
もちろん、喫煙所はほかにあり、職員室内は禁煙だ。
「先生。いいんですかこんなとこでタバコなんて吸って。匂いでバレますよ?」
「うるせえな。固いこというなよ鈴村。お前が言わなきゃバレない。絶対言うなよ。言ったら数学赤点にするからな」
松本の担当科目は伊織の苦手な数学だった。
まったく、なんて教師だ。伊織は軽く苦笑をもらす。
「じゃあ、言わなかったら成績10くれます?」
「10はずうずうしいだろ。5からスタートしてやるよ」
「えー、びみょー」
「これぐらい鈴村ひとりでなんとかなるだろ。最近失敗続きだからな。ちょっとは罰をやらんと」
「いや、でも伊織ひとりじゃ……」
そう言って手伝いにいこうとした信長の首根っこを、牧が掴む。
「ぎゃ!」
「手伝ったら罰にならんだろ、清田」
「……すまん伊織! オレは無力だ!」
許せ~! と叫ぶ信長に、伊織はあははと笑った。
その言い回しが、大げさでおもしろかった。
「ああ、いいよ! わたしの不注意が原因だし」
「ほんとにごめんな!」
いいながらも、信長は牧にずるずると引きずられていく。
他のみんなも、一様にすまなそうな視線を向けてくる。
やはり、誰も牧には逆らえないようだ。
伊織はみんなに変な気を遣わせまいと、にこりと微笑んだ。
「ほんとうに大丈夫! あ、ノブ、先に帰ってていいからね! また明日六時に駅で! それからみなさんも気をつけて! お疲れ様でした!」
おつかれさま~という声を最後に、みんなが姿を消した。
それを見送って、伊織は早速ボールたちの確保にとりかかる。
ほんとよくもまあこんなに散らばったものだ。
伊織は体育館中を駆けずり回りながら、ボールを回収してまわった。
最後のひとつを放り込み、ふうと息を吐いて額の汗をぬぐう。
それから更衣室で制服に着替えて、部室、用具室、体育館と鍵を閉めると、職員室に向かった。
鍵は、最後に体育館を出た人が職員室に返す決まりだった。
さすがに二十時近くにもなると、学校内にはもうだれもいない。
幽霊やお化けの類を信じない伊織でも、しんと冷え切った暗い廊下はさすがにちょっと怖かった。
「う~。さすが、夜の学校。迫力あっる~」
自分を勇気付けるようにそんなことを呟くと、唯一明かりのともっている職員室を目指した。
リノリウムの床をぺたぺたと足音を鳴らしながら進み、目的のドアを開ける。
「しつれいしまーす」
「おう、鈴村か。こんな遅くまでごくろうさまだな」
職員室にいたのは、伊織の担任教師である松本だった。
松本はまだ年も若く、なかなかイケメンで、気さくで飾らない性質が生徒たちに人気があった。
伊織も例に漏れず、松本が好きだ。
マンモス校の海南大附属高校で、数少ない知っている先生が残っていたことで、伊織はホッと息をはく。
やっぱり夜の学校はこわくて緊張していたらしい。
松本の顔を見て、それが一気に弛緩した。
「先生こそ。夜の学校ってほんっと怖いですね。ちょっとビビッちゃった」
「はは。確かにな。暗いってだけでも迫力あるけど、普段活気あるから余計だな。輪をかけてさびしく見えるんだよ」
「ああ、言えてますね」
「だろ?」
他愛無い話をしながら、伊織は鍵置き場に体育館の鍵をぶら下げる。
なんか匂うなと思って振り返ると、松本はおもむろにタバコに火をつけていた。
もちろん、喫煙所はほかにあり、職員室内は禁煙だ。
「先生。いいんですかこんなとこでタバコなんて吸って。匂いでバレますよ?」
「うるせえな。固いこというなよ鈴村。お前が言わなきゃバレない。絶対言うなよ。言ったら数学赤点にするからな」
松本の担当科目は伊織の苦手な数学だった。
まったく、なんて教師だ。伊織は軽く苦笑をもらす。
「じゃあ、言わなかったら成績10くれます?」
「10はずうずうしいだろ。5からスタートしてやるよ」
「えー、びみょー」