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夢小説設定
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(あんな顔、させたいわけじゃないのに……)
うまく立ち回れない自分が呪わしかった。
と、そのとき。
「伊織っ!!」
「ひゃあっ!?」
急に耳元で名前を呼ばれ、伊織は肩をとびあがらせた。
いつの間に来たのか、すぐ目の前に信長がいた。
海南バスケットボールクラブと英字で刻印の入ったエナメルカバンを頭から掛け、両腕をポケットに突っ込んだだらしない格好で、伊織を訝しそうに見ている。
伊織は、へらっと笑った。
「あれ、ノブ。おはよう」
「あれ、ノブおはよう、じゃねえっ! 何回呼んだと思ってんだお前っ! 朝っぱらから意識飛ばしてんなよなあ!?」
「ええ? そうだった? あはは、ごめんごめーん」
「…………。まあ、いいけどよ」
呆れたように嘆息しながら信長はそう言うと、路肩に止めてあった伊織の自転車に手をかけた。
またがらず、ハンドルを握ってその脇に立つ信長に、伊織は首を傾げる。
「あれ、乗らないの?」
「いい。今日は早く来たし、たまには歩いていこうぜ」
言われて時計を見ると、まだ五時四十分だった。
いつもは待ち合わせ時間ぎりぎりなのに、珍しい。
伊織は目をぱちくりさせた。
「ほんとだ、ずいぶん早いね。どうしたの?」
自転車を引いて歩く信長の横に並んで、伊織は訊ねる。
「今日から朝練、三十分早くなったろ? 時間読み違えた」
「ああ、なるほど。じゃあわたしも早く来て正解だったね」
「まあ、お前いなくても家まで迎えに行って、茶でも飲みながら待ってたけどな」
「おいおい、出さないよお茶なんて」
「ケッチだな~! わざわざ迎えに行ってるんだからそれくらいするだろ、普通!?」
「わざわざってそっちのミスでしょ? 指くわえて玄関先で待っててもらうね」
「鬼だ……。マジで悪魔だぜ鈴村伊織!」
「あはは!」
信長のその反応に、伊織は腹を抱えて笑った。
信長と話しているのは楽しい。
嫌なことさえ、信長と話しているときは忘れることが出来た。
笑いすぎて目尻に浮かんだ涙を指で拭っていると、ふいに真剣な表情をした信長がこちらを見ていた。
伊織は眉を寄せる。
「なに? 急にそんな顔してどうしたの?」
「……なあ、そろそろ話してくれてもいいんじゃん?」
「話す? なにを?」
「お前が変な理由! ドジは少なくなったみたいだけど、やっぱりちょっと変だよお前。どっか元気ないように見えるし、神さんに相変わらず態度おかしいし」
「ええ~? そんなことないって。気のせいだよ、ノブ」
伊織は内心ぎくりとしながら答える。
小百合にアノことを言われたときから、ドジはしないように細心の注意を払っていた。
それからは誰にも異変に気付かれることがなかったのに。
(意外にノブって鋭いんだよなー。……野生の勘ってやつ?)
信長には、あまり理由を話したくなかった。宗一郎のことを言いたくないのではなくて、まりあのことが絡んでくるから。
信長を不用意に傷つけたくない。
伊織は適当にはぐらかそうと笑っていると、突然信長に腕をつかまれた。
びっくりして信長に向き直ると、信長が心配そうな色を瞳にたたえて伊織を見つめてきた。
(うっ……!)
うまく立ち回れない自分が呪わしかった。
と、そのとき。
「伊織っ!!」
「ひゃあっ!?」
急に耳元で名前を呼ばれ、伊織は肩をとびあがらせた。
いつの間に来たのか、すぐ目の前に信長がいた。
海南バスケットボールクラブと英字で刻印の入ったエナメルカバンを頭から掛け、両腕をポケットに突っ込んだだらしない格好で、伊織を訝しそうに見ている。
伊織は、へらっと笑った。
「あれ、ノブ。おはよう」
「あれ、ノブおはよう、じゃねえっ! 何回呼んだと思ってんだお前っ! 朝っぱらから意識飛ばしてんなよなあ!?」
「ええ? そうだった? あはは、ごめんごめーん」
「…………。まあ、いいけどよ」
呆れたように嘆息しながら信長はそう言うと、路肩に止めてあった伊織の自転車に手をかけた。
またがらず、ハンドルを握ってその脇に立つ信長に、伊織は首を傾げる。
「あれ、乗らないの?」
「いい。今日は早く来たし、たまには歩いていこうぜ」
言われて時計を見ると、まだ五時四十分だった。
いつもは待ち合わせ時間ぎりぎりなのに、珍しい。
伊織は目をぱちくりさせた。
「ほんとだ、ずいぶん早いね。どうしたの?」
自転車を引いて歩く信長の横に並んで、伊織は訊ねる。
「今日から朝練、三十分早くなったろ? 時間読み違えた」
「ああ、なるほど。じゃあわたしも早く来て正解だったね」
「まあ、お前いなくても家まで迎えに行って、茶でも飲みながら待ってたけどな」
「おいおい、出さないよお茶なんて」
「ケッチだな~! わざわざ迎えに行ってるんだからそれくらいするだろ、普通!?」
「わざわざってそっちのミスでしょ? 指くわえて玄関先で待っててもらうね」
「鬼だ……。マジで悪魔だぜ鈴村伊織!」
「あはは!」
信長のその反応に、伊織は腹を抱えて笑った。
信長と話しているのは楽しい。
嫌なことさえ、信長と話しているときは忘れることが出来た。
笑いすぎて目尻に浮かんだ涙を指で拭っていると、ふいに真剣な表情をした信長がこちらを見ていた。
伊織は眉を寄せる。
「なに? 急にそんな顔してどうしたの?」
「……なあ、そろそろ話してくれてもいいんじゃん?」
「話す? なにを?」
「お前が変な理由! ドジは少なくなったみたいだけど、やっぱりちょっと変だよお前。どっか元気ないように見えるし、神さんに相変わらず態度おかしいし」
「ええ~? そんなことないって。気のせいだよ、ノブ」
伊織は内心ぎくりとしながら答える。
小百合にアノことを言われたときから、ドジはしないように細心の注意を払っていた。
それからは誰にも異変に気付かれることがなかったのに。
(意外にノブって鋭いんだよなー。……野生の勘ってやつ?)
信長には、あまり理由を話したくなかった。宗一郎のことを言いたくないのではなくて、まりあのことが絡んでくるから。
信長を不用意に傷つけたくない。
伊織は適当にはぐらかそうと笑っていると、突然信長に腕をつかまれた。
びっくりして信長に向き直ると、信長が心配そうな色を瞳にたたえて伊織を見つめてきた。
(うっ……!)