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信長はチッと舌を鳴らした。
はっきり言っておもしろくなかった。自分は伊織とは親しい友人のつもりだし、部活の仲間でもある。それなのに、なぜ何も話してくれないんだろう。
信長は、自分でもよくわからない感情に胸をもやもやさせた。
そのしかめっつらを見て、信長の手当てをしている小百合が小さく吹き出した。
「あら。ノブくん、真っ赤な顔して眉間にそんなにしわを寄せたら、本当におサルさんみたいよ?」
「なっ! 小百合さん、それはないっすよ~!」
情けなく抗議をする信長に小百合はくすくす笑うと、冷水で絞ったタオルを信長の顔にあてがった。
信長は目を閉じる。ひやりとした感触が、ぶつけて熱を持った顔に心地よかった。
「すんません、小百合さん。ありがとうございます」
「いいえ。それにしても、ゴールデンルーキーがまさかの失態だったね、ノブくん」
「ぐっ。……小百合さんって見かけによらずイジワルッスよね」
「ふふ。生きがいだもの」
渾身の反撃のつもりが、にこやかな声音で返され、信長はさらにぐっとつまった。
タオルに隠されて小百合の表情は見えなかったが、きっと天使のような罪のない笑顔で言っていたに違いない。
想像しただけで背筋が凍るようだ。
(……見えなくて逆によかったかも)
信長が人知れずそんな小百合に怯えていると、その小百合からさらに言葉が降ってきた。
「ねえ、ノブくん。なんでそんな失態を犯したのか、この小百合さんが当ててあげようか」
なにやら自信満々なその声音に、信長は目元だけタオルをずらすと、ちらと小百合を見上げた。
小百合は、信長を見てなにやら楽しそうな笑顔でにこにこ微笑んでいる。
そのすべらかな白い人差し指を信長の鼻先まで近づけると、透明感のある綺麗な声で言い放った。
「伊織ちゃん、でしょ?」
「なっ! な、んでわかったんすか!?」
まさか当てられまいと高をくくっていた信長は、図星を指されてあわわと動揺した。
小百合はイジワルなだけでなく、人の心まで読めるのだろうか。
(この人だったらありえるかもしれない……)
よからぬ想像に拍車がかかりそうになったところで、小百合の視線とぶつかった。
小百合は、澄んだ瞳を半分閉じて、じっとりと信長を凝視している。
「ちょっと、ノブくん。なんか変なこと考えてない?」
「ははは、まさか! 何いってんスか小百合さん!」
下手なごまかし笑いをする信長を、小百合は測るような目でしばらく見、それから嘆息した。
「…………。まあ、それはいったん置いといて。ノブくん、ずっと伊織ちゃんのことばっかり見てるんだもの。誰だってわかるわよ。――ねえ、もしかして、伊織ちゃんに恋しちゃった?」
「な!? 違うッスよ!」
信長の心臓が大きく跳ねる。
伊織に恋!? そんなバカな!
「ふふ。ごまかしたってムダよ。この小百合さんには全部お見通しなんだから」
「いや、ほんとうに違うんスって! 伊織! 伊織最近様子がおかしいじゃないッスか! 小百合さんも気付いてますよね?」
「確かにここのところちょっと変よね。気持ちがこっちにないみたい」
「でしょう!? 前以上にドジも多いし……」
信長がそう言ったところで、タイミング良く後ろの方でゴンと大きな音がした。
そちらに視線をやると、伊織が体育館の入り口付近で頭を押さえてうずくまっていた。
どうやら、外に出ようとして壁に激突したらしい。近くにいたまりあが伊織を助け起こしている。
信長と小百合はそれを見届けると、二人同時に顔を見合わせた。
神妙な表情をして頷きあう。
「伊織ちゃん、深刻なようね」
「なんスよ」
はっきり言っておもしろくなかった。自分は伊織とは親しい友人のつもりだし、部活の仲間でもある。それなのに、なぜ何も話してくれないんだろう。
信長は、自分でもよくわからない感情に胸をもやもやさせた。
そのしかめっつらを見て、信長の手当てをしている小百合が小さく吹き出した。
「あら。ノブくん、真っ赤な顔して眉間にそんなにしわを寄せたら、本当におサルさんみたいよ?」
「なっ! 小百合さん、それはないっすよ~!」
情けなく抗議をする信長に小百合はくすくす笑うと、冷水で絞ったタオルを信長の顔にあてがった。
信長は目を閉じる。ひやりとした感触が、ぶつけて熱を持った顔に心地よかった。
「すんません、小百合さん。ありがとうございます」
「いいえ。それにしても、ゴールデンルーキーがまさかの失態だったね、ノブくん」
「ぐっ。……小百合さんって見かけによらずイジワルッスよね」
「ふふ。生きがいだもの」
渾身の反撃のつもりが、にこやかな声音で返され、信長はさらにぐっとつまった。
タオルに隠されて小百合の表情は見えなかったが、きっと天使のような罪のない笑顔で言っていたに違いない。
想像しただけで背筋が凍るようだ。
(……見えなくて逆によかったかも)
信長が人知れずそんな小百合に怯えていると、その小百合からさらに言葉が降ってきた。
「ねえ、ノブくん。なんでそんな失態を犯したのか、この小百合さんが当ててあげようか」
なにやら自信満々なその声音に、信長は目元だけタオルをずらすと、ちらと小百合を見上げた。
小百合は、信長を見てなにやら楽しそうな笑顔でにこにこ微笑んでいる。
そのすべらかな白い人差し指を信長の鼻先まで近づけると、透明感のある綺麗な声で言い放った。
「伊織ちゃん、でしょ?」
「なっ! な、んでわかったんすか!?」
まさか当てられまいと高をくくっていた信長は、図星を指されてあわわと動揺した。
小百合はイジワルなだけでなく、人の心まで読めるのだろうか。
(この人だったらありえるかもしれない……)
よからぬ想像に拍車がかかりそうになったところで、小百合の視線とぶつかった。
小百合は、澄んだ瞳を半分閉じて、じっとりと信長を凝視している。
「ちょっと、ノブくん。なんか変なこと考えてない?」
「ははは、まさか! 何いってんスか小百合さん!」
下手なごまかし笑いをする信長を、小百合は測るような目でしばらく見、それから嘆息した。
「…………。まあ、それはいったん置いといて。ノブくん、ずっと伊織ちゃんのことばっかり見てるんだもの。誰だってわかるわよ。――ねえ、もしかして、伊織ちゃんに恋しちゃった?」
「な!? 違うッスよ!」
信長の心臓が大きく跳ねる。
伊織に恋!? そんなバカな!
「ふふ。ごまかしたってムダよ。この小百合さんには全部お見通しなんだから」
「いや、ほんとうに違うんスって! 伊織! 伊織最近様子がおかしいじゃないッスか! 小百合さんも気付いてますよね?」
「確かにここのところちょっと変よね。気持ちがこっちにないみたい」
「でしょう!? 前以上にドジも多いし……」
信長がそう言ったところで、タイミング良く後ろの方でゴンと大きな音がした。
そちらに視線をやると、伊織が体育館の入り口付近で頭を押さえてうずくまっていた。
どうやら、外に出ようとして壁に激突したらしい。近くにいたまりあが伊織を助け起こしている。
信長と小百合はそれを見届けると、二人同時に顔を見合わせた。
神妙な表情をして頷きあう。
「伊織ちゃん、深刻なようね」
「なんスよ」