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夢小説設定
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数日後。伊織は早速壁にぶち当たっていた。
課題は宗一郎を諦めつつ、今までどおり接すること。
しかし残念なことに、今のところ全敗だ。
昨日も一昨日もそのまた前日も、今までどおりどころか不審に思われるぐらい怪しい態度をとって逃げ回ってしまった。
宗一郎を見ると、胸が騒ぐ。そばにいると、まるで全身の血が逆流してしまったのかと思うほど、心臓がペースを勝手に上げてしまう。平静でなんかとてもじゃないがいられない。
そんな状態から普通に会話だなんて、一体誰ができるというのだろう? いや、誰もできまい。
そして、宗一郎と一緒にいるまりあを見ると、甘い胸の疼きは、鈍い痛みに取って代わる。
二人のツーショットを見るたびに思い知らされる。
忘れなければならないのだと。
「はあぁああ~」
盛大なため息を吐くと、伊織は得点板を運ぼうと手を掛けた。
今は朝練の準備中なのに、またこのコは誰にも用意されずひとりさびしく体育倉庫で佇んでいた。
かわいそうに、お前は孤独なのね。なんて言いながら、誰に手伝ってもらおうと辺りを見回すと、不意に頭上から声がかかった。
「もしかして、俺を探してる?」
「うわわ! 神先輩っ!」
「うわわってなに? それにその飛び退きよう……。傷つくなあ」
伊織は突然の宗一郎の登場に慌てて飛びすさった。その反応に宗一郎が困ったように苦笑する。
伊織は一瞬胸がツキンと痛んだが、慌てて顔を伏せ、そのままぶんぶんと首を左右に振った。
宗一郎の顔をまともに見ることが出来ない。
バクバクとうるさい心臓と、忘れなければならないのだという胸の痛みと、いろんな感情が頭の中を交錯する。
「あ、いや、ごめんなさい! あと、得点板なら大丈夫です! ノブが一緒に運んでくれるって言ってたんで! あ、ノブ!」
ちょうどタイミング良く体育倉庫へ入ってきた信長の腕を、伊織はがしりと掴んだ。
得点板より奥に置かれているボールを取りに来た信長は、いきなり腕をひかれてバランスを崩し、よろめく。
「うおっ! なんだよ伊織あぶねえな!」
「もうっ、得点板一緒に出そうってノブが言い出したんでしょう!? ほら、早くそっち側持ってよ!」
「はぁ!? 俺はボールを……」
言いかけて、信長は口をつぐんだ。
伊織が物凄い形相で睨んでいることに気付いたからだ。
「ノブは! わたしと一緒に得点板を出しに来たんだよねえ!?」
「……ハイ、ソノトオリデス」
「じゃあさっさとそっちを持つ! ほら早くっ!」
「へいへい。わーっかりやしたよ!」
信長はしぶしぶそう言うと、先頭に立って得点板を引いて倉庫を出た。
伊織は目を丸くして成り行きを見守っていた宗一郎に小さく頭を下げて、信長に続いて倉庫を出る。
振り返ると、なんだか沈んだような表情をして宗一郎がこっちを見ていた。
ちょっと強引すぎたかもしれない。
罪悪感にズキズキ痛む胸を押さえていると、信長が不機嫌さを隠そうともしない声音で話しかけてきた。
「おい、伊織。今のなんだよ? 神さんびっくりしてたじゃんか」
「……やっぱり?」
信長の指摘に、伊織は苦い顔をした。
やはり、あれでうまく誤魔化せたわけがなかった。当たり前だ。あんなの逆に自分がやられたら、不審に思うだけだ。
どうしてうまくできないんだろう。
伊織は頭を抱えたい気持ちになった。
課題は宗一郎を諦めつつ、今までどおり接すること。
しかし残念なことに、今のところ全敗だ。
昨日も一昨日もそのまた前日も、今までどおりどころか不審に思われるぐらい怪しい態度をとって逃げ回ってしまった。
宗一郎を見ると、胸が騒ぐ。そばにいると、まるで全身の血が逆流してしまったのかと思うほど、心臓がペースを勝手に上げてしまう。平静でなんかとてもじゃないがいられない。
そんな状態から普通に会話だなんて、一体誰ができるというのだろう? いや、誰もできまい。
そして、宗一郎と一緒にいるまりあを見ると、甘い胸の疼きは、鈍い痛みに取って代わる。
二人のツーショットを見るたびに思い知らされる。
忘れなければならないのだと。
「はあぁああ~」
盛大なため息を吐くと、伊織は得点板を運ぼうと手を掛けた。
今は朝練の準備中なのに、またこのコは誰にも用意されずひとりさびしく体育倉庫で佇んでいた。
かわいそうに、お前は孤独なのね。なんて言いながら、誰に手伝ってもらおうと辺りを見回すと、不意に頭上から声がかかった。
「もしかして、俺を探してる?」
「うわわ! 神先輩っ!」
「うわわってなに? それにその飛び退きよう……。傷つくなあ」
伊織は突然の宗一郎の登場に慌てて飛びすさった。その反応に宗一郎が困ったように苦笑する。
伊織は一瞬胸がツキンと痛んだが、慌てて顔を伏せ、そのままぶんぶんと首を左右に振った。
宗一郎の顔をまともに見ることが出来ない。
バクバクとうるさい心臓と、忘れなければならないのだという胸の痛みと、いろんな感情が頭の中を交錯する。
「あ、いや、ごめんなさい! あと、得点板なら大丈夫です! ノブが一緒に運んでくれるって言ってたんで! あ、ノブ!」
ちょうどタイミング良く体育倉庫へ入ってきた信長の腕を、伊織はがしりと掴んだ。
得点板より奥に置かれているボールを取りに来た信長は、いきなり腕をひかれてバランスを崩し、よろめく。
「うおっ! なんだよ伊織あぶねえな!」
「もうっ、得点板一緒に出そうってノブが言い出したんでしょう!? ほら、早くそっち側持ってよ!」
「はぁ!? 俺はボールを……」
言いかけて、信長は口をつぐんだ。
伊織が物凄い形相で睨んでいることに気付いたからだ。
「ノブは! わたしと一緒に得点板を出しに来たんだよねえ!?」
「……ハイ、ソノトオリデス」
「じゃあさっさとそっちを持つ! ほら早くっ!」
「へいへい。わーっかりやしたよ!」
信長はしぶしぶそう言うと、先頭に立って得点板を引いて倉庫を出た。
伊織は目を丸くして成り行きを見守っていた宗一郎に小さく頭を下げて、信長に続いて倉庫を出る。
振り返ると、なんだか沈んだような表情をして宗一郎がこっちを見ていた。
ちょっと強引すぎたかもしれない。
罪悪感にズキズキ痛む胸を押さえていると、信長が不機嫌さを隠そうともしない声音で話しかけてきた。
「おい、伊織。今のなんだよ? 神さんびっくりしてたじゃんか」
「……やっぱり?」
信長の指摘に、伊織は苦い顔をした。
やはり、あれでうまく誤魔化せたわけがなかった。当たり前だ。あんなの逆に自分がやられたら、不審に思うだけだ。
どうしてうまくできないんだろう。
伊織は頭を抱えたい気持ちになった。