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伊織はしばらく、その四つの瞳から放たれる心配オーラをなんとかうまくかわそうと奮闘したが、ついには心が折れた。
観念したように小さく息を吐き、言う。
「やっぱり、二人には隠し事できないなあ」
「当たり前だよ。俺たち何年ねーちゃんの弟してると思ってんの!?」
「父さん母さんは誤魔化せても、俺たちは誤魔化せないよ、姉ちゃん」
「ふふ。ほんとうだね。――――実はね」
伊織は口を開いた。
高校に入学して、好きな人ができたこと。その好きな人が、高校に入って初めて出来た親友の好きな人だったこと。それを知って諦めようとしたこと。でもできなくてついには気持ちを親友に見透かされてしまったこと。なのに、親友に素直に気持ちを打ち明けることができずにうそをつき、挙句協力すると言ってしまったこと……。
「はぁあ!? 何その女! むっかつく~!」
すべての事情を話し終えると、星が今にも地団駄を踏みそうな様子で言った。
それに、月が淡々と反論する。
「違う。悪いのは姉ちゃんの方だ。その親友に気持ちがバレたときに、素直に認めるべきだったんだ」
「うう、月の言うとおりです……」
「なっ! おい、月!」
月のその言葉を受けて、伊織がみるからにしょぼんと肩を落とした。
それを見て、星が慌てて月に詰め寄る。
「そんなこと言うなよ! ねーちゃんは優しいから言い出せなかっただけだろ!?」
「そういうのは本当の優しさとは言わない。真実が知れたとき、相手を余計に傷つけるだけだ」
「ぐっ。それは! 確かに! そうかもしれないけど! ああもう、お前どっちの味方なんだよ!」
「もちろん姉ちゃんだけど」
「だったらそんなねーちゃん追い込むようなこと言うなよなぁ!? ねーちゃんが可哀想だろ!」
「その人にとって都合のいい言葉を掛けるだけが優しさじゃないってことさ。お前にはまだわかんないだろうけどな」
「なにをう!?」
「なんだよ」
「ストップストーップ!」
額と額をくっつけて睨み合う二人に割ってはいるように、伊織は言葉を挟んだ。
「ちょっと落ち着いてよ二人とも! ケンカしないで」
「「だってこいつが!」」
月と星がお互いを指さして言う。
また二人が睨み合う。がるるるる、と唸る声が聞こえてきそうだ。
伊織はその様子にやれやれと肩を竦めると、立ち上がり二人を引き剥がした。
そして、そのまま二人の間にはいると月と星の肩を抱いた。
「もうほんとにケンカはダメ! それにわたしには、わたしを肯定してくれる星の優しさも、わたしを否定してくれる月の優しさも両方必要なの! ――ほんとうにありがとう、二人とも」
言って伊織は二人の頬に自分の頬をこすりつけた。
月は照れくさそうに、星は嬉しそうに笑う。
月と星は、しばらくして伊織の部屋をでた。
自分達の部屋へずんずん突き進む星には続かずに、月はぴたりと足を止め、伊織の部屋を振り返った。
すでに閉まっているドア。その中にいるだろう伊織を思い、月はぽつりと呟く。
「それにしても……。姉ちゃん、好きな人できたんだ……」
あの人はどうするんだろう。
月はふとよぎったそんな考えにふるふると首を振ると、自分の部屋へと再び足を向けた。
高校に入ってから、姉は明るくなった。別の未来を見れるようになったのなら、それは良いことだ。ひとり胸のうちで呟きながら、月はうるさい弟のいる部屋のドアを開けた。
観念したように小さく息を吐き、言う。
「やっぱり、二人には隠し事できないなあ」
「当たり前だよ。俺たち何年ねーちゃんの弟してると思ってんの!?」
「父さん母さんは誤魔化せても、俺たちは誤魔化せないよ、姉ちゃん」
「ふふ。ほんとうだね。――――実はね」
伊織は口を開いた。
高校に入学して、好きな人ができたこと。その好きな人が、高校に入って初めて出来た親友の好きな人だったこと。それを知って諦めようとしたこと。でもできなくてついには気持ちを親友に見透かされてしまったこと。なのに、親友に素直に気持ちを打ち明けることができずにうそをつき、挙句協力すると言ってしまったこと……。
「はぁあ!? 何その女! むっかつく~!」
すべての事情を話し終えると、星が今にも地団駄を踏みそうな様子で言った。
それに、月が淡々と反論する。
「違う。悪いのは姉ちゃんの方だ。その親友に気持ちがバレたときに、素直に認めるべきだったんだ」
「うう、月の言うとおりです……」
「なっ! おい、月!」
月のその言葉を受けて、伊織がみるからにしょぼんと肩を落とした。
それを見て、星が慌てて月に詰め寄る。
「そんなこと言うなよ! ねーちゃんは優しいから言い出せなかっただけだろ!?」
「そういうのは本当の優しさとは言わない。真実が知れたとき、相手を余計に傷つけるだけだ」
「ぐっ。それは! 確かに! そうかもしれないけど! ああもう、お前どっちの味方なんだよ!」
「もちろん姉ちゃんだけど」
「だったらそんなねーちゃん追い込むようなこと言うなよなぁ!? ねーちゃんが可哀想だろ!」
「その人にとって都合のいい言葉を掛けるだけが優しさじゃないってことさ。お前にはまだわかんないだろうけどな」
「なにをう!?」
「なんだよ」
「ストップストーップ!」
額と額をくっつけて睨み合う二人に割ってはいるように、伊織は言葉を挟んだ。
「ちょっと落ち着いてよ二人とも! ケンカしないで」
「「だってこいつが!」」
月と星がお互いを指さして言う。
また二人が睨み合う。がるるるる、と唸る声が聞こえてきそうだ。
伊織はその様子にやれやれと肩を竦めると、立ち上がり二人を引き剥がした。
そして、そのまま二人の間にはいると月と星の肩を抱いた。
「もうほんとにケンカはダメ! それにわたしには、わたしを肯定してくれる星の優しさも、わたしを否定してくれる月の優しさも両方必要なの! ――ほんとうにありがとう、二人とも」
言って伊織は二人の頬に自分の頬をこすりつけた。
月は照れくさそうに、星は嬉しそうに笑う。
月と星は、しばらくして伊織の部屋をでた。
自分達の部屋へずんずん突き進む星には続かずに、月はぴたりと足を止め、伊織の部屋を振り返った。
すでに閉まっているドア。その中にいるだろう伊織を思い、月はぽつりと呟く。
「それにしても……。姉ちゃん、好きな人できたんだ……」
あの人はどうするんだろう。
月はふとよぎったそんな考えにふるふると首を振ると、自分の部屋へと再び足を向けた。
高校に入ってから、姉は明るくなった。別の未来を見れるようになったのなら、それは良いことだ。ひとり胸のうちで呟きながら、月はうるさい弟のいる部屋のドアを開けた。