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伊織は一人、自室でため息をついた。
先ほどから繰り返し思い出されるのは、今日の部活終了間際のまりあとのやりとり。
宗一郎を好きなのではと詰問するまりあに、伊織は好きではないと嘘をついた。
おまけに、まりあと宗一郎がうまくいくよう協力する約束までしてしまった。
「ああ、バカだぁ……!」
悔恨の波が伊織を襲う。
伊織はショートカットの髪をぐしゃぐしゃと掻き回した。
いまさら後悔したって遅い。そんなことはわかっている。明日学校に行って、まりあにやっぱり宗一郎が好きですと告げたところで、どうなるわけでもない。まりあを怒らせるだけだ。もしかしたら口だって利いてもらえなくなるかもしれない。
「うう、それは嫌だ……」
伊織は頭を抱えた。
と、そのとき。
「ねーちゃあ~ん!」
伊織の背中に物凄い勢いで何かがタックルしてきた。
「ぐぇっ!」
その衝撃に耐えられず、伊織はカエルがつぶれるような声を出してうつぶせに倒れた。
こういうことをしてくるのは、この家の中でただ一人。弟の星(ほし)だけだ。
星は、そのまま甘えるように伊織の背中に張り付いていて、すこぶる重い。
このままでは窒息してしまう。
「ほ、星……。お、重い……」
助けを求めて宙に手を伸ばしたところで、不意に背中が軽くなった。
驚いて見上げると、星は彼と同じ顔をした少年に首根っこを掴まれていた。
星の双子の兄、月(つき)だった。
月は呆れた様な目で弟を見つめると、静かに言った。
「星。姉ちゃんが死ぬ」
「あはは、ごめんごめんねーちゃん」
星がまったく悪びれた様子もなく謝ってくる。
「別に……いいけど……」
やっと自由になった呼吸に、伊織は胸一杯息を吸い込みながら答えた。
鈴村月。鈴村星。
伊織より二つ年下の、一卵性双生児の弟たち。
短く切った黒髪に、それと同じ黒い瞳。きりりと上がった眉にすっと通った鼻筋。細身だが筋肉も十分についており、均整の取れた体つきをしている。
頭からつま先まで外見はまったく同じ二人だが、兄の月はクールで知的で落ち着きがあり、弟の星は明るく元気でやんちゃという、まったく正反対の性格を持つ。
そのため、同じ顔でも醸し出す雰囲気がまったく異なるので、あまり間違われることはなかった。
伊織はそんな弟たちを座らせると、自分も机を挟んで正面に腰を落とし、二人に向き直った。
「それで、二人ともどうしたの? ここ、わたしの部屋だよ」
「そんなことわかってる」
「ねーちゃん、夕飯のとき元気なかっただろ? いつもご飯三杯はおかわりするのに、今日は一杯も食べ切れなかったじゃんか。だから学校でなにかあったのかなって気になってさ」
「月……星……。わたしのこと心配してくれたの? ありがとう」
目を潤ませて感激する伊織に、星は身を乗り出して姉の手を取った。
月も、その上に自分の手をそっと重ねる。
「ねーちゃん! オレたちでよければ力になるよ。なにかあったなら話してよ」
「ふふ。ありがとう。でもなんでもないよ。大丈夫」
「嘘。姉ちゃんはひとりで我慢しすぎ。体に良くない」
「ほんとうになんでもないってば」
「嘘だね」
「ほんとう」
「「う・そ・だ!」」
ユニゾンでハモると、月も星も瞳を心配の色に染めて、伊織をじっと見つめた。
先ほどから繰り返し思い出されるのは、今日の部活終了間際のまりあとのやりとり。
宗一郎を好きなのではと詰問するまりあに、伊織は好きではないと嘘をついた。
おまけに、まりあと宗一郎がうまくいくよう協力する約束までしてしまった。
「ああ、バカだぁ……!」
悔恨の波が伊織を襲う。
伊織はショートカットの髪をぐしゃぐしゃと掻き回した。
いまさら後悔したって遅い。そんなことはわかっている。明日学校に行って、まりあにやっぱり宗一郎が好きですと告げたところで、どうなるわけでもない。まりあを怒らせるだけだ。もしかしたら口だって利いてもらえなくなるかもしれない。
「うう、それは嫌だ……」
伊織は頭を抱えた。
と、そのとき。
「ねーちゃあ~ん!」
伊織の背中に物凄い勢いで何かがタックルしてきた。
「ぐぇっ!」
その衝撃に耐えられず、伊織はカエルがつぶれるような声を出してうつぶせに倒れた。
こういうことをしてくるのは、この家の中でただ一人。弟の星(ほし)だけだ。
星は、そのまま甘えるように伊織の背中に張り付いていて、すこぶる重い。
このままでは窒息してしまう。
「ほ、星……。お、重い……」
助けを求めて宙に手を伸ばしたところで、不意に背中が軽くなった。
驚いて見上げると、星は彼と同じ顔をした少年に首根っこを掴まれていた。
星の双子の兄、月(つき)だった。
月は呆れた様な目で弟を見つめると、静かに言った。
「星。姉ちゃんが死ぬ」
「あはは、ごめんごめんねーちゃん」
星がまったく悪びれた様子もなく謝ってくる。
「別に……いいけど……」
やっと自由になった呼吸に、伊織は胸一杯息を吸い込みながら答えた。
鈴村月。鈴村星。
伊織より二つ年下の、一卵性双生児の弟たち。
短く切った黒髪に、それと同じ黒い瞳。きりりと上がった眉にすっと通った鼻筋。細身だが筋肉も十分についており、均整の取れた体つきをしている。
頭からつま先まで外見はまったく同じ二人だが、兄の月はクールで知的で落ち着きがあり、弟の星は明るく元気でやんちゃという、まったく正反対の性格を持つ。
そのため、同じ顔でも醸し出す雰囲気がまったく異なるので、あまり間違われることはなかった。
伊織はそんな弟たちを座らせると、自分も机を挟んで正面に腰を落とし、二人に向き直った。
「それで、二人ともどうしたの? ここ、わたしの部屋だよ」
「そんなことわかってる」
「ねーちゃん、夕飯のとき元気なかっただろ? いつもご飯三杯はおかわりするのに、今日は一杯も食べ切れなかったじゃんか。だから学校でなにかあったのかなって気になってさ」
「月……星……。わたしのこと心配してくれたの? ありがとう」
目を潤ませて感激する伊織に、星は身を乗り出して姉の手を取った。
月も、その上に自分の手をそっと重ねる。
「ねーちゃん! オレたちでよければ力になるよ。なにかあったなら話してよ」
「ふふ。ありがとう。でもなんでもないよ。大丈夫」
「嘘。姉ちゃんはひとりで我慢しすぎ。体に良くない」
「ほんとうになんでもないってば」
「嘘だね」
「ほんとう」
「「う・そ・だ!」」
ユニゾンでハモると、月も星も瞳を心配の色に染めて、伊織をじっと見つめた。