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夢小説設定
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「まりあちゃん、手伝いにきてくれたの? ちょうど今終わったところだから大丈夫だよ。ありがとう」
そう言ってまりあと体育館に戻ろうとする伊織。
しかし、まりあは何か思いつめたような表情で伊織を見据えたまま、動こうとしない。
「まりあちゃん……?」
怪訝に思って問いかけると、まりあがぷっくりと形のいい唇をゆっくりと持ち上げた。
「伊織ちゃん。しんどいってなにが?」
「え?」
その言葉に、伊織の頭が一瞬真っ白になる。
再び鼓動を早める心臓。
まりあの真剣な表情。
いつからまりあはそこに立っていたのだろうか?
「しんどいって、なにがしんどいの?」
まりあは、もう一度同じ質問を繰り返す。
「あ、えっと……。ドリンクボトル! そう、ドリンクボトルだよ。数が多いから一人はしんどいなぁって……」
「ウソ!」
まりあの鋭い声が飛ぶ。
「そんなのウソでしょ! まりあ、もう気付いてるんだから」
「気付いてる……?」
嫌な予感が伊織を襲う。
気付いてる? 何を?
(――まさか)
目の前のまりあの瞳が、みるみるうちに潤んでいく。
「伊織ちゃん。宗ちゃんのこと好きなの?」
心臓が凍りついた。
「え?」
呼吸の仕方を忘れてしまったように、息がうまく吸えない。
そんなことないと笑い飛ばしたかったのに、出来なかった。
顔の筋肉が麻痺してしまったかのように、表情がひきつってしまう。
まりあの大きな瞳から零れる、透明な涙。涙。涙。
「宗ちゃんのことが好きなんでしょ? でも宗ちゃんはわたしの好きな人なの。知ってるよね、伊織ちゃん?」
まりあの綺麗な唇から次々と発せられる言葉に、伊織は反応を返すことが出来なかった。
ただただ呆然と、その先が紡ぎだされるのを聞いていることしか出来ない。
「ねえ、伊織ちゃん。宗ちゃんのこと、諦めてくれるよね? まりあから奪おうなんて考えてたりしないよね? ねえ、宗ちゃんのこと、諦めてくれるでしょう?」
猫のような瞳を悲しみに染めて懇願してくるまりあ。
伊織は、どこか遠くのほうで、自分が微笑むのを感じた。
口が、勝手に動き出す。
「何言ってるの、まりあちゃん、私が神先輩を好きだなんて誤解だよ」
「ほんとう?」
「ほんとう」
伊織が眉尻をさげて微笑んで見せると、まりあも安心したように表情を緩めた。
「じゃあ、伊織ちゃん。宗ちゃんとのこと、もちろん協力してくれるよね?」
どこか遠くで、まりあの声が響く。
伊織は、目の前が真っ暗になるのを感じた。
自分がもはやどこにいるのかわからない。だけれども、口だけはまるで機械のように軽快に言葉を吐き出す。
「もちろんだよ。神先輩とまりあちゃんがうまくいくように、しっかり協力してあげる。当たり前でしょ?」
「……伊織ちゃん!」
まりあが、伊織の胸に抱きついてきた。
伊織はその衝撃を、自分のものじゃないように感じながら受け止める。
「伊織ちゃんごめんね! まりあ、誤解してたみたい。伊織ちゃんがまりあを裏切ったりするわけないのにね。だってわたしと伊織ちゃん、親友なのにね」
「うん……。そうだよ、まりあちゃん。もう、バカだなぁ」
バカは私だ。
伊織は、顔の下にあるまりあの頭を撫でながら、眉尻を下げて微笑んだ。
まりあは伊織に頭を撫でられながら、そのかわいらしい小さな舌をぺろっと出して、ほくそ笑んだ。
To be continued…
そう言ってまりあと体育館に戻ろうとする伊織。
しかし、まりあは何か思いつめたような表情で伊織を見据えたまま、動こうとしない。
「まりあちゃん……?」
怪訝に思って問いかけると、まりあがぷっくりと形のいい唇をゆっくりと持ち上げた。
「伊織ちゃん。しんどいってなにが?」
「え?」
その言葉に、伊織の頭が一瞬真っ白になる。
再び鼓動を早める心臓。
まりあの真剣な表情。
いつからまりあはそこに立っていたのだろうか?
「しんどいって、なにがしんどいの?」
まりあは、もう一度同じ質問を繰り返す。
「あ、えっと……。ドリンクボトル! そう、ドリンクボトルだよ。数が多いから一人はしんどいなぁって……」
「ウソ!」
まりあの鋭い声が飛ぶ。
「そんなのウソでしょ! まりあ、もう気付いてるんだから」
「気付いてる……?」
嫌な予感が伊織を襲う。
気付いてる? 何を?
(――まさか)
目の前のまりあの瞳が、みるみるうちに潤んでいく。
「伊織ちゃん。宗ちゃんのこと好きなの?」
心臓が凍りついた。
「え?」
呼吸の仕方を忘れてしまったように、息がうまく吸えない。
そんなことないと笑い飛ばしたかったのに、出来なかった。
顔の筋肉が麻痺してしまったかのように、表情がひきつってしまう。
まりあの大きな瞳から零れる、透明な涙。涙。涙。
「宗ちゃんのことが好きなんでしょ? でも宗ちゃんはわたしの好きな人なの。知ってるよね、伊織ちゃん?」
まりあの綺麗な唇から次々と発せられる言葉に、伊織は反応を返すことが出来なかった。
ただただ呆然と、その先が紡ぎだされるのを聞いていることしか出来ない。
「ねえ、伊織ちゃん。宗ちゃんのこと、諦めてくれるよね? まりあから奪おうなんて考えてたりしないよね? ねえ、宗ちゃんのこと、諦めてくれるでしょう?」
猫のような瞳を悲しみに染めて懇願してくるまりあ。
伊織は、どこか遠くのほうで、自分が微笑むのを感じた。
口が、勝手に動き出す。
「何言ってるの、まりあちゃん、私が神先輩を好きだなんて誤解だよ」
「ほんとう?」
「ほんとう」
伊織が眉尻をさげて微笑んで見せると、まりあも安心したように表情を緩めた。
「じゃあ、伊織ちゃん。宗ちゃんとのこと、もちろん協力してくれるよね?」
どこか遠くで、まりあの声が響く。
伊織は、目の前が真っ暗になるのを感じた。
自分がもはやどこにいるのかわからない。だけれども、口だけはまるで機械のように軽快に言葉を吐き出す。
「もちろんだよ。神先輩とまりあちゃんがうまくいくように、しっかり協力してあげる。当たり前でしょ?」
「……伊織ちゃん!」
まりあが、伊織の胸に抱きついてきた。
伊織はその衝撃を、自分のものじゃないように感じながら受け止める。
「伊織ちゃんごめんね! まりあ、誤解してたみたい。伊織ちゃんがまりあを裏切ったりするわけないのにね。だってわたしと伊織ちゃん、親友なのにね」
「うん……。そうだよ、まりあちゃん。もう、バカだなぁ」
バカは私だ。
伊織は、顔の下にあるまりあの頭を撫でながら、眉尻を下げて微笑んだ。
まりあは伊織に頭を撫でられながら、そのかわいらしい小さな舌をぺろっと出して、ほくそ笑んだ。
To be continued…