終
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思ってしゃくりあげていると、ぎゅっと宗一郎の腕に包まれた。
「!」
驚いて抵抗しようとする伊織のからだは、なんなく宗一郎によって押さえ込まれる。
「伊織、ごめん。泣かないで? ……伊織の、言うとおりだよね。ごめんね。俺も、伊織がそんな風にひとりで苦しんでるって考えたらすごくつらい。だから、変にかっこつけたりしないから。――伊織に、ちゃんと話すから。だからお願い、泣かないで?」
「……ほんと?」
涙に濡れた瞳で、伊織はじっと宗一郎を見つめた。
宗一郎は落ち着いた静かな表情で、ほんとう、と頷いた。
伊織はしばらくそのまま宗一郎の瞳をのぞきこんで、やがて納得したように頷いた。
「わかった。信じる」
「うん」
「さっき言ってた、前にあったつらいことも話してくれる?」
「いいよ。……でも、さ」
宗一郎が言いにくそうに言葉を切る。
「……話しても、情けないって俺のこと嫌わないって約束できる?」
その言葉に、伊織ははたと表情を止めた。
恥ずかしそうに頬を薄く染めて視線をさまよわせている宗一郎をまじまじと見つめて、ふいに込み上げてきたおかしさそのままに小さく吹き出した。
「あ、なんで笑うの」
宗一郎が拗ねたように伊織の顔を覗き込んでくる。
伊織はその視線を受けても、ひたすらに笑い続けた。
「い、いや、だって……っ! そ、宗くんがあんまりにもかわいいこと言うから……っ」
「…………へー。やっぱり話すのやめようかな」
「わあ、ウソウソ! もう笑わない! 笑わないから! おしえて、ね!? ね!?」
「絶対に笑わない?」
慌てて宗一郎に取りすがると、拗ねたように宗一郎が訊き返してきた。
あまりのかわいさに胸をきゅんきゅんさせながら伊織が大きく首を振ると、宗一郎が一度大きく息を吐き出して、言いにくそうにしゃべりだした。
まだ宗一郎が一年生だったとき、控え選手にすらなれなかったこと。
そのときに、監督の高頭に中学でつとめていたポジションであるセンターでは通用しないと言われたこと。
それから自分のとりえを必死で探して、そうして死に物狂いでシューティングの練習を重ね、今の地位を獲得したこと。
話し終わると、宗一郎はふうと息をついて、気まずそうに伊織を見てきた。
「……幻滅した?」
伊織は左右に首を振る。
「ううん。しないよ」
幻滅どころかその逆だ。
よりいっそう惚れ直した。
伝えると、宗一郎の顔が赤く染まった。
「!!」
滅多に見れないその反応に、伊織も驚いて顔を赤くした。
「宗くん、顔が赤くなった」
「や、だって絶対幻滅されると思ってたから不意打ちで……」
まさか惚れ直してくれるとは……とまだほんのり赤い顔でぶつぶつ言う宗一郎の腕を、伊織はとった。
「ね、宗くん」
「うん?」
「これからはさ、辛いことや悲しいことは、ふたりで一緒に乗り越えて行こうね。絶対にひとりで悩まないでね? ね、約束!」
「いいよ。伊織もつらいことや悲しいことがあったら絶対に俺に話すんだよ?」
「うん!」
「約束」
宗一郎の唇が伊織の唇に重なった。
目の前で優しく微笑む宗一郎に、伊織も笑顔を返す。
宗一郎は伊織の頭を一度優しく撫でると、傍らの自転車に手をかけた。
「さ。帰ろうか、伊織」
「うん!」
元気良く返事を返すと、伊織は歩き出した宗一郎の隣りに並んだ。
どんなに辛い過去も、受け止めがたい現実も。逃げないで立ち向かえば、やがてそれは変化して、こうして幸福な今を連れてくる。
こんなふうに、いつまで歩んでいけたらいいな。
傍らには大好きな仲間と、できれば最愛のキミを連れて……。
桜色の恋 end
「!」
驚いて抵抗しようとする伊織のからだは、なんなく宗一郎によって押さえ込まれる。
「伊織、ごめん。泣かないで? ……伊織の、言うとおりだよね。ごめんね。俺も、伊織がそんな風にひとりで苦しんでるって考えたらすごくつらい。だから、変にかっこつけたりしないから。――伊織に、ちゃんと話すから。だからお願い、泣かないで?」
「……ほんと?」
涙に濡れた瞳で、伊織はじっと宗一郎を見つめた。
宗一郎は落ち着いた静かな表情で、ほんとう、と頷いた。
伊織はしばらくそのまま宗一郎の瞳をのぞきこんで、やがて納得したように頷いた。
「わかった。信じる」
「うん」
「さっき言ってた、前にあったつらいことも話してくれる?」
「いいよ。……でも、さ」
宗一郎が言いにくそうに言葉を切る。
「……話しても、情けないって俺のこと嫌わないって約束できる?」
その言葉に、伊織ははたと表情を止めた。
恥ずかしそうに頬を薄く染めて視線をさまよわせている宗一郎をまじまじと見つめて、ふいに込み上げてきたおかしさそのままに小さく吹き出した。
「あ、なんで笑うの」
宗一郎が拗ねたように伊織の顔を覗き込んでくる。
伊織はその視線を受けても、ひたすらに笑い続けた。
「い、いや、だって……っ! そ、宗くんがあんまりにもかわいいこと言うから……っ」
「…………へー。やっぱり話すのやめようかな」
「わあ、ウソウソ! もう笑わない! 笑わないから! おしえて、ね!? ね!?」
「絶対に笑わない?」
慌てて宗一郎に取りすがると、拗ねたように宗一郎が訊き返してきた。
あまりのかわいさに胸をきゅんきゅんさせながら伊織が大きく首を振ると、宗一郎が一度大きく息を吐き出して、言いにくそうにしゃべりだした。
まだ宗一郎が一年生だったとき、控え選手にすらなれなかったこと。
そのときに、監督の高頭に中学でつとめていたポジションであるセンターでは通用しないと言われたこと。
それから自分のとりえを必死で探して、そうして死に物狂いでシューティングの練習を重ね、今の地位を獲得したこと。
話し終わると、宗一郎はふうと息をついて、気まずそうに伊織を見てきた。
「……幻滅した?」
伊織は左右に首を振る。
「ううん。しないよ」
幻滅どころかその逆だ。
よりいっそう惚れ直した。
伝えると、宗一郎の顔が赤く染まった。
「!!」
滅多に見れないその反応に、伊織も驚いて顔を赤くした。
「宗くん、顔が赤くなった」
「や、だって絶対幻滅されると思ってたから不意打ちで……」
まさか惚れ直してくれるとは……とまだほんのり赤い顔でぶつぶつ言う宗一郎の腕を、伊織はとった。
「ね、宗くん」
「うん?」
「これからはさ、辛いことや悲しいことは、ふたりで一緒に乗り越えて行こうね。絶対にひとりで悩まないでね? ね、約束!」
「いいよ。伊織もつらいことや悲しいことがあったら絶対に俺に話すんだよ?」
「うん!」
「約束」
宗一郎の唇が伊織の唇に重なった。
目の前で優しく微笑む宗一郎に、伊織も笑顔を返す。
宗一郎は伊織の頭を一度優しく撫でると、傍らの自転車に手をかけた。
「さ。帰ろうか、伊織」
「うん!」
元気良く返事を返すと、伊織は歩き出した宗一郎の隣りに並んだ。
どんなに辛い過去も、受け止めがたい現実も。逃げないで立ち向かえば、やがてそれは変化して、こうして幸福な今を連れてくる。
こんなふうに、いつまで歩んでいけたらいいな。
傍らには大好きな仲間と、できれば最愛のキミを連れて……。
桜色の恋 end