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「あ、でも。宗くんがわたしのために怒ってくれて、すごく嬉しかった」
思い出して赤くなった伊織の頬に、ふいに宗一郎の手が触れる。
「伊織が大事だからだよ」
「宗くん……」
「元気そうで安心した」
「宗くんのおかげだよ。宗くんがいつもそばにいてくれて、テニス部員からも庇ってくれて、いざとなったら泣いていいって言ってくれてたから……」
伊織は頬に添えられた宗一郎の手に自分の手を重ねると、そのぬくもりを感じるように瞳を閉じた。
「宗くんがいなかったらわたし、きっとダメだった」
「伊織……」
「わたし、今回の球技大会で、本当の意味でテニスを、過去を乗り越えられた気がする。全部全部宗くんのおかげだよ。ほんとうにありがとう、宗くん」
「伊織、おいで」
宗一郎が優しく瞳を細めて広げた腕の中に、伊織は身を寄せた。
宗一郎の腕が、力強く伊織を抱きしめてくれる。
「俺も、前は伊織を守れなくて……。自分の無力さが情けなくて、すごく悔しかったんだ。だから俺が少しでも伊織の力になることができたんだったら、ほんとうに嬉しい」
「うん。宗くんは、いつだってわたしのパワーの源なんだよ? 宗くんがいてくれるから、頑張れる。宗くん、大好きだよ」
「――俺も、大好きだよ、伊織……」
ゆっくりと宗一郎の顔が近づいてきた。
伊織はそっと目を閉じる。
「伊織……」
ほとんど唇が触れそうな距離で、宗一郎が名前を呟いた。
唇に吐息がかかったと思うとすぐにふさがれるそこ。
「ん……」
触れ合った唇を宗一郎の舌がなぞる。
そのもどかしいようなじれったいような感触に思わず声を漏らすと、啄ばむようにちゅっと口付けされて、唇が離れていった。
再びギュッと抱きしめられる。
「宗くん」
「うん?」
「わたし、これでやっとショウにも会いに行ける気がする」
「うん。よかったね、伊織」
「うん……」
耳に触れている宗一郎の胸から響くように聞こえてくるその声。
とても心地いい。
伊織はその感覚に神経を傾けながら、口を開く。
「ねえ、宗くん」
「うん?」
「そのときは、一緒に行ってくれる?」
「いいよ。伊織が望むならどこにでも行くよ」
「ふふ、大げさだなぁ。ショウに会いに行くだけだって。……でもその前に種田先輩に連絡しなきゃいけないのよね。うう、そこが難関だなぁ……」
嫌そうに言うと、宗一郎が小さく笑った。
「はは、伊織は種田が苦手なの?」
「苦手っていうか……。え、宗くんこの前の種田先輩見たでしょ? あの真性の悪魔」
「ああ、うん。なかなかおもしろいヤツだったよね。悪魔はさすがに言いすぎだと思うけど……」
「違うんだよ宗くん!」
伊織は思わず宗一郎から身を離した。
「あのひとは本当に悪魔なの! 多分、ショウに会いたいって連絡したら、ああ随分時間がかかったねうすのろで意気地なしの伊織ちゃんって満面の笑みをうかがわせる声音で言われるに決まってる!」
そこからさらなる嫌味の応酬がああ恐ろしいとからだをぶるぶるいわせていると、宗一郎がくつくつと笑い声を上げた。
伊織はそんな宗一郎をジト目でみやる。
「……なんで、このタイミングで笑うかなぁ」
「いや、怯える伊織があんまりかわいくて……」
「…………」
あのねえ、という顔で睨んでも、宗一郎はまだ小さく身を震わせて笑っている。
「もう、宗くん!」
伊織は小さく頬を膨らませると、肩を竦めた。
なんだか自分もおかしさが込み上げてきて、くつくつ笑っている宗一郎と一緒に笑い出した。
逃げ出した過去のすべてに清算がつくまで、あともう少し……。
To be continued…
思い出して赤くなった伊織の頬に、ふいに宗一郎の手が触れる。
「伊織が大事だからだよ」
「宗くん……」
「元気そうで安心した」
「宗くんのおかげだよ。宗くんがいつもそばにいてくれて、テニス部員からも庇ってくれて、いざとなったら泣いていいって言ってくれてたから……」
伊織は頬に添えられた宗一郎の手に自分の手を重ねると、そのぬくもりを感じるように瞳を閉じた。
「宗くんがいなかったらわたし、きっとダメだった」
「伊織……」
「わたし、今回の球技大会で、本当の意味でテニスを、過去を乗り越えられた気がする。全部全部宗くんのおかげだよ。ほんとうにありがとう、宗くん」
「伊織、おいで」
宗一郎が優しく瞳を細めて広げた腕の中に、伊織は身を寄せた。
宗一郎の腕が、力強く伊織を抱きしめてくれる。
「俺も、前は伊織を守れなくて……。自分の無力さが情けなくて、すごく悔しかったんだ。だから俺が少しでも伊織の力になることができたんだったら、ほんとうに嬉しい」
「うん。宗くんは、いつだってわたしのパワーの源なんだよ? 宗くんがいてくれるから、頑張れる。宗くん、大好きだよ」
「――俺も、大好きだよ、伊織……」
ゆっくりと宗一郎の顔が近づいてきた。
伊織はそっと目を閉じる。
「伊織……」
ほとんど唇が触れそうな距離で、宗一郎が名前を呟いた。
唇に吐息がかかったと思うとすぐにふさがれるそこ。
「ん……」
触れ合った唇を宗一郎の舌がなぞる。
そのもどかしいようなじれったいような感触に思わず声を漏らすと、啄ばむようにちゅっと口付けされて、唇が離れていった。
再びギュッと抱きしめられる。
「宗くん」
「うん?」
「わたし、これでやっとショウにも会いに行ける気がする」
「うん。よかったね、伊織」
「うん……」
耳に触れている宗一郎の胸から響くように聞こえてくるその声。
とても心地いい。
伊織はその感覚に神経を傾けながら、口を開く。
「ねえ、宗くん」
「うん?」
「そのときは、一緒に行ってくれる?」
「いいよ。伊織が望むならどこにでも行くよ」
「ふふ、大げさだなぁ。ショウに会いに行くだけだって。……でもその前に種田先輩に連絡しなきゃいけないのよね。うう、そこが難関だなぁ……」
嫌そうに言うと、宗一郎が小さく笑った。
「はは、伊織は種田が苦手なの?」
「苦手っていうか……。え、宗くんこの前の種田先輩見たでしょ? あの真性の悪魔」
「ああ、うん。なかなかおもしろいヤツだったよね。悪魔はさすがに言いすぎだと思うけど……」
「違うんだよ宗くん!」
伊織は思わず宗一郎から身を離した。
「あのひとは本当に悪魔なの! 多分、ショウに会いたいって連絡したら、ああ随分時間がかかったねうすのろで意気地なしの伊織ちゃんって満面の笑みをうかがわせる声音で言われるに決まってる!」
そこからさらなる嫌味の応酬がああ恐ろしいとからだをぶるぶるいわせていると、宗一郎がくつくつと笑い声を上げた。
伊織はそんな宗一郎をジト目でみやる。
「……なんで、このタイミングで笑うかなぁ」
「いや、怯える伊織があんまりかわいくて……」
「…………」
あのねえ、という顔で睨んでも、宗一郎はまだ小さく身を震わせて笑っている。
「もう、宗くん!」
伊織は小さく頬を膨らませると、肩を竦めた。
なんだか自分もおかしさが込み上げてきて、くつくつ笑っている宗一郎と一緒に笑い出した。
逃げ出した過去のすべてに清算がつくまで、あともう少し……。
To be continued…