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信長は無言でまりあを見つめた。
伊織に決定的に失恋したあの頃から、次第に胸に芽生え始めてるこの気持ち。
伊織を想う様な、焼け付くような感情ではないけれど。
この気持ちは多分……。
「ノブくん?」
不思議そうに首をかしげてもう一度訊ねてくるまりあ。
信長は沈黙を誤魔化すように髪を大きく掻き毟ると、遊歩道の脇にある木の柵に腰掛けた。
まりあもならうようにしてそこに腰掛ける。
触れそうな肩が、妙にもどかしい。
「まりあちゃんは、さ。まだ、その……神さんのことが好きなのか?」
「うーん……。どう、かな。正直まだよくわからない」
「そっか」
「うん。でも、もう伊織ちゃんと二人のところを見て苦しいような胸の痛みを感じることはなくなったよ。宗ちゃんに愛されてる伊織ちゃんを見るとムカつくけど、それはもう宗ちゃんが好きだからというよりは一種の条件反射みたいなものだし」
「はは、伊織も災難だな」
まりあのその言葉に、昨日の昼間伊織に突っかかってたまりあの様子を思い出して、信長は苦笑した。
信長のその様子に、まりあがふたたびほっぺを膨らます。
「なによう、いいじゃないそれくらい。伊織ちゃんはまりあから大事な大事な宗ちゃんを奪ったんだもの。伊織ちゃんをいじめるのはわたしの特権なの」
「なるほどな」
「その代わり、他の人が伊織ちゃんをいじめてたら教えてよね! まりあが百倍にして返してやるんだから!」
むんと意気込んで言うまりあに、信長は本格的に声をあげて笑った。
「はは! まりあちゃんは本当に伊織が大好きなんだな!」
「あんな愛すべきおバカさんは他にいないと思う!」
言ってまりあは空を見上げた。目を細めて、輝く星空を見つめる。
その横顔があまりに綺麗で、信長の心臓が再び早鐘を打ち始めた。
まりあのむき出しになった白い首筋に目が吸い寄せられて、それを誤魔化すように信長は慌てて下を向く。
「まりあね、伊織ちゃんがはじめての女友達なの。……ほら、まりあってばこんな性格でしょ。だからいっつも女子には妬まれて、まりあもそれがわかってたから代わりに男子を利用して……。だから本音を話せる女友達なんていなかったのよ」
「へえ。じゃあ、神さんの彼女になったのが、その伊織でよかったな」
「――うん。逆に伊織ちゃんだったから、まりあも納得できたのかなぁ。まりあだって、最初は宗ちゃんから伊織ちゃんを引き離すつもりで近づいたのに、いつのまにか伊織ちゃんを好きになっちゃったもんね」
「……だな」
信長は目を閉じた。
伊織のころころと変わる表情、友達思いなところ、頑張りやな性格、そのくせ泣き虫なところ。
そのどれもが愛しかった。
いまでも伊織を大切に想う気持ちには変わりがないけれど、その気持ちはあの頃とはちょっと形が違う。
「でも、まりあが伊織ちゃんを許せた一番の理由は、きっとノブくんだよ」
「オレ!?」
信長は驚いて顔をあげた。
まりあがにこりと優しい表情で微笑んでくる。
「そう。ノブくんのおかげ。伊織ちゃんと宗ちゃんが両想いだってわかったときも、わたしが宗ちゃんに振られたときも、いつもノブくんがいてくれて……。ほんとうに心強かった。ノブくんがいてくれたから、まりあも二人を許したいって思えた。いつかノブくんみたいに二人を応援できるようになりたいって。……いまは、だいぶそれに近づけてる気がするんだ」
言いながら、まりあが信長の手の上に自分の手を重ねてきた。
突然のまりあのぬくもりに、信長の心臓がどきんと大きく跳ねる。
「ありがとう、ノブくん」
「お、おう……」
信長は照れを隠すようにまりあが触れているのと反対の手で頬をかいた。
意を決して、触れているまりあの手を強く握る。
「ノブくん?」
驚いたようにまりあがこちらを凝視してくる。
信長はその視線を避けるように俯くと、早口に言った。
「大丈夫だから。これからもまりあちゃんにはオレがついてるから。だからなにかあったらオレのとこに来いよ」
息を呑むような気配が隣りからして、次の瞬間、肩にまりあの頭の重みを感じた。
信長の首に、まりあのやわらかな髪が触れる。
心臓が狂ったように暴れだす。
「――うん。頼りにしてるね」
「お、おう……」
肩から伝わるまりあのぬくもりを感じながら、信長は頷いた。
伊織に決定的に失恋したあの頃から、次第に胸に芽生え始めてるこの気持ち。
伊織を想う様な、焼け付くような感情ではないけれど。
この気持ちは多分……。
「ノブくん?」
不思議そうに首をかしげてもう一度訊ねてくるまりあ。
信長は沈黙を誤魔化すように髪を大きく掻き毟ると、遊歩道の脇にある木の柵に腰掛けた。
まりあもならうようにしてそこに腰掛ける。
触れそうな肩が、妙にもどかしい。
「まりあちゃんは、さ。まだ、その……神さんのことが好きなのか?」
「うーん……。どう、かな。正直まだよくわからない」
「そっか」
「うん。でも、もう伊織ちゃんと二人のところを見て苦しいような胸の痛みを感じることはなくなったよ。宗ちゃんに愛されてる伊織ちゃんを見るとムカつくけど、それはもう宗ちゃんが好きだからというよりは一種の条件反射みたいなものだし」
「はは、伊織も災難だな」
まりあのその言葉に、昨日の昼間伊織に突っかかってたまりあの様子を思い出して、信長は苦笑した。
信長のその様子に、まりあがふたたびほっぺを膨らます。
「なによう、いいじゃないそれくらい。伊織ちゃんはまりあから大事な大事な宗ちゃんを奪ったんだもの。伊織ちゃんをいじめるのはわたしの特権なの」
「なるほどな」
「その代わり、他の人が伊織ちゃんをいじめてたら教えてよね! まりあが百倍にして返してやるんだから!」
むんと意気込んで言うまりあに、信長は本格的に声をあげて笑った。
「はは! まりあちゃんは本当に伊織が大好きなんだな!」
「あんな愛すべきおバカさんは他にいないと思う!」
言ってまりあは空を見上げた。目を細めて、輝く星空を見つめる。
その横顔があまりに綺麗で、信長の心臓が再び早鐘を打ち始めた。
まりあのむき出しになった白い首筋に目が吸い寄せられて、それを誤魔化すように信長は慌てて下を向く。
「まりあね、伊織ちゃんがはじめての女友達なの。……ほら、まりあってばこんな性格でしょ。だからいっつも女子には妬まれて、まりあもそれがわかってたから代わりに男子を利用して……。だから本音を話せる女友達なんていなかったのよ」
「へえ。じゃあ、神さんの彼女になったのが、その伊織でよかったな」
「――うん。逆に伊織ちゃんだったから、まりあも納得できたのかなぁ。まりあだって、最初は宗ちゃんから伊織ちゃんを引き離すつもりで近づいたのに、いつのまにか伊織ちゃんを好きになっちゃったもんね」
「……だな」
信長は目を閉じた。
伊織のころころと変わる表情、友達思いなところ、頑張りやな性格、そのくせ泣き虫なところ。
そのどれもが愛しかった。
いまでも伊織を大切に想う気持ちには変わりがないけれど、その気持ちはあの頃とはちょっと形が違う。
「でも、まりあが伊織ちゃんを許せた一番の理由は、きっとノブくんだよ」
「オレ!?」
信長は驚いて顔をあげた。
まりあがにこりと優しい表情で微笑んでくる。
「そう。ノブくんのおかげ。伊織ちゃんと宗ちゃんが両想いだってわかったときも、わたしが宗ちゃんに振られたときも、いつもノブくんがいてくれて……。ほんとうに心強かった。ノブくんがいてくれたから、まりあも二人を許したいって思えた。いつかノブくんみたいに二人を応援できるようになりたいって。……いまは、だいぶそれに近づけてる気がするんだ」
言いながら、まりあが信長の手の上に自分の手を重ねてきた。
突然のまりあのぬくもりに、信長の心臓がどきんと大きく跳ねる。
「ありがとう、ノブくん」
「お、おう……」
信長は照れを隠すようにまりあが触れているのと反対の手で頬をかいた。
意を決して、触れているまりあの手を強く握る。
「ノブくん?」
驚いたようにまりあがこちらを凝視してくる。
信長はその視線を避けるように俯くと、早口に言った。
「大丈夫だから。これからもまりあちゃんにはオレがついてるから。だからなにかあったらオレのとこに来いよ」
息を呑むような気配が隣りからして、次の瞬間、肩にまりあの頭の重みを感じた。
信長の首に、まりあのやわらかな髪が触れる。
心臓が狂ったように暴れだす。
「――うん。頼りにしてるね」
「お、おう……」
肩から伝わるまりあのぬくもりを感じながら、信長は頷いた。