21
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(ええっと、それでなんでこんなことになってるんだろう……?)
伊織は不可解な気持ちで手の中のラケットをくるくると回した。
嫌というほど手に馴染んだこの感触。
自分のラケットに触ったのはどれくらいぶりだろう。
まさか再びこれを手にする日がくるなんて、思いもしなかった。
思い起こせばあの種目決めの日。
宗一郎と一緒に部活へ行くと、信長とまりあが話したんだろう、なぜかもう伊織が球技大会でテニスになったことが広まっていて。
信長とまりあも、牧も小百合も球技大会の種目がテニスで。
それならちょうどいいわねなんて小百合が天使のお面をかぶった悪魔の笑顔で言って。
それからどういう経緯でか、次の日曜日は球技大会前日で部活が休みだからみんなでテニスの練習をしようということになって。
そして現在に至っている。
今日は近くの体育館でテニスのコートを4時間レンタルして、牧・小百合・信長・まりあ、それから宗一郎と6人でテニスの練習に来ていた。
「伊織、行ったよ!」
ぼんやりとそんな事を考えていると、ふいに宗一郎の声が耳に飛び込んできた。
ハッと我に返ると、宗一郎の逆サイドを抜けてくるボール。
そうだった。今は2時間の網特訓を終えて、信長・まりあチームと練習試合をしているところだった。
伊織はぐっと足に力を入れると、ボールの来てる右サイドに駆けた。
ボールの落下予測地点で足を止め、腰を低く落としてボールを待つ。
少し先でボールがバウンドした。
山なりに弧を描いて落下してくるボール。
立ち位置はどんぴしゃだ。
相手コートを視界に捉えると、そこにいる信長もまりあも左に寄っている。
狙いをストレートのライン上に定めると、伊織はグッとラケットを握る手に力を入れた。
ボールがラケットに当たるまで確認しながら、腰の回転を利用し、後ろから前へ重心を移動する力をボールに叩き込む。
ぱああんとボールがスイートスポットに当たった軽い音を響かせて、低く鋭い弾道でネットぎりぎりを通り抜けた。そのまま鋭く右サイドのライン上に落ちる。
その鮮やかなショットに試合を見ていた牧と小百合から感嘆の声があがった。
ナイッショ! と声をかけてくる宗一郎のさらに奥、信長がラケットを振り回して抗議の声をあげる。
「ずっりーぞ、伊織! そんなはええ球取れっか!」
「あはは、ごめんごめん。気づいたらボールが来ててちょっと咄嗟に本気だしちゃった」
しまったなという表情で頭をかく伊織に、信長がさらに言い募る。
「元中学日本一の本気が取れるわけねえだろバカー!」
「えー、ノブならいけるいける! 見えたでしょ?」
「見えても反応できるか! バスケとテニスじゃ球速が違いすぎるっつーの!」
「そっかなあ。でも速いひとはもっと速度でるよ?」
「それは日本トップレベルのやつらの話だろ! 球技大会にはそんなやつお前くらいだろが!」
「ああ、そっか。ごめんごめん」
伊織はもう一度謝った。
そしてふたたびポジションに戻ると、手元のラケットをくるくると回す。
懐かしい感触。思ったより胸は痛まない。
それどころか、久しぶりのテニスは楽しかった。
やっぱり自分は純粋にテニスが好きなんだと改めて自覚する。
再びボールが来る。
今度は宗一郎が前でボレーを決めた。
宗一郎とのコンビネーションもいい感じだ。
なかなか息が合っている。
しばらく時を忘れて、伊織は純粋にテニスを楽しんだ。
「それにしても伊織ちゃん、プレーだけじゃなくて教えるのも上手なのね」
コートのレンタル時間も終え、6人は汗を流してから近くのファミレスに立ち寄った。
今日はここで夕飯を食べて、それで解散だ。
伊織は手元のメニューとにらめっこしていると、小百合にそんな風に声をかけられた。
メニューから顔をあげて、小百合に向き直る。
「そうですか?」
「ええ。だってわたし、今まで相手コートに球を打ち返せたことがなかったのに、教えてもらってからはもう完璧だもの」
伊織は不可解な気持ちで手の中のラケットをくるくると回した。
嫌というほど手に馴染んだこの感触。
自分のラケットに触ったのはどれくらいぶりだろう。
まさか再びこれを手にする日がくるなんて、思いもしなかった。
思い起こせばあの種目決めの日。
宗一郎と一緒に部活へ行くと、信長とまりあが話したんだろう、なぜかもう伊織が球技大会でテニスになったことが広まっていて。
信長とまりあも、牧も小百合も球技大会の種目がテニスで。
それならちょうどいいわねなんて小百合が天使のお面をかぶった悪魔の笑顔で言って。
それからどういう経緯でか、次の日曜日は球技大会前日で部活が休みだからみんなでテニスの練習をしようということになって。
そして現在に至っている。
今日は近くの体育館でテニスのコートを4時間レンタルして、牧・小百合・信長・まりあ、それから宗一郎と6人でテニスの練習に来ていた。
「伊織、行ったよ!」
ぼんやりとそんな事を考えていると、ふいに宗一郎の声が耳に飛び込んできた。
ハッと我に返ると、宗一郎の逆サイドを抜けてくるボール。
そうだった。今は2時間の網特訓を終えて、信長・まりあチームと練習試合をしているところだった。
伊織はぐっと足に力を入れると、ボールの来てる右サイドに駆けた。
ボールの落下予測地点で足を止め、腰を低く落としてボールを待つ。
少し先でボールがバウンドした。
山なりに弧を描いて落下してくるボール。
立ち位置はどんぴしゃだ。
相手コートを視界に捉えると、そこにいる信長もまりあも左に寄っている。
狙いをストレートのライン上に定めると、伊織はグッとラケットを握る手に力を入れた。
ボールがラケットに当たるまで確認しながら、腰の回転を利用し、後ろから前へ重心を移動する力をボールに叩き込む。
ぱああんとボールがスイートスポットに当たった軽い音を響かせて、低く鋭い弾道でネットぎりぎりを通り抜けた。そのまま鋭く右サイドのライン上に落ちる。
その鮮やかなショットに試合を見ていた牧と小百合から感嘆の声があがった。
ナイッショ! と声をかけてくる宗一郎のさらに奥、信長がラケットを振り回して抗議の声をあげる。
「ずっりーぞ、伊織! そんなはええ球取れっか!」
「あはは、ごめんごめん。気づいたらボールが来ててちょっと咄嗟に本気だしちゃった」
しまったなという表情で頭をかく伊織に、信長がさらに言い募る。
「元中学日本一の本気が取れるわけねえだろバカー!」
「えー、ノブならいけるいける! 見えたでしょ?」
「見えても反応できるか! バスケとテニスじゃ球速が違いすぎるっつーの!」
「そっかなあ。でも速いひとはもっと速度でるよ?」
「それは日本トップレベルのやつらの話だろ! 球技大会にはそんなやつお前くらいだろが!」
「ああ、そっか。ごめんごめん」
伊織はもう一度謝った。
そしてふたたびポジションに戻ると、手元のラケットをくるくると回す。
懐かしい感触。思ったより胸は痛まない。
それどころか、久しぶりのテニスは楽しかった。
やっぱり自分は純粋にテニスが好きなんだと改めて自覚する。
再びボールが来る。
今度は宗一郎が前でボレーを決めた。
宗一郎とのコンビネーションもいい感じだ。
なかなか息が合っている。
しばらく時を忘れて、伊織は純粋にテニスを楽しんだ。
「それにしても伊織ちゃん、プレーだけじゃなくて教えるのも上手なのね」
コートのレンタル時間も終え、6人は汗を流してから近くのファミレスに立ち寄った。
今日はここで夕飯を食べて、それで解散だ。
伊織は手元のメニューとにらめっこしていると、小百合にそんな風に声をかけられた。
メニューから顔をあげて、小百合に向き直る。
「そうですか?」
「ええ。だってわたし、今まで相手コートに球を打ち返せたことがなかったのに、教えてもらってからはもう完璧だもの」