21
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ふうん」
「わー、なんで宗くんそんな不機嫌そうな声なの!?」
「伊織があんまり鈍感だから」
「……っ!」
えー、と振り返ろうとして伊織はからだを硬直させた。
すぐ目の前、唇が触れてしまいそうなほどの距離に宗一郎の顔があった。
(き、キスされる……!?)
伊織は思わず目をつぶった。
ところが、覚悟したぬくもりは唇に触れず、かわりに鼻をぎゅっとつままれた。
「ふわっ」
驚いて目を開けると、にこりと悪戯に笑む宗一郎の顔。
「伊織。わかったら俺の前以外で隙をみせちゃダメだよ? 伊織は鈍感なうえに、ガードがゆるいんだから。わかった?」
「わ、わかった」
「あ、それと。キスは後でね。さすがにここでは誰かに見られるかもしれないからね」
期待した? と耳元で囁いてくる宗一郎に、伊織の全身が一気に真っ赤に染まる。
「もう! 宗くん!」
「はは。――好きだよ、伊織」
宗一郎の大きな手の平で頭を撫でられた。
伊織は照れたように俯きながら、言う。
「……わたしも好き」
「うん」
嬉しそうに微笑んでくる宗一郎に自分も笑顔を返した。
もうすぐ体育館が近づいてくる。
伊織はさりげなく宗一郎の手を放した。
さっきまで繋がっていたぬくもりがなくなって、急に胸に不安が舞い降りる。
テニス。やるとは決めたけど、やっぱり気が重い。
ラケットを握ったとき。ボールを手にしたとき。コートに立ったとき。
自分は平静でいられるだろうか。
(うう、あんまり自信ないなぁ……)
「伊織」
そんなことを考えていると、ふと頭に宗一郎の手のぬくもりを感じた。
顔をあげると宗一郎が優しく見守るような表情で見つめてくる。
「不安そうな顔してどうしたの? 大丈夫。俺がいるよ。俺が、いつでも伊織のそばにいるから」
「――うん。ありがとう」
「ちょっとでもつらいことや困ったことがあったら我慢しないですぐ俺に言うんだよ? わかった?」
「うん」
伊織は返事を返すと、もう一度目の前にある宗一郎の手にそっと自分の手を滑り込ませた。
宗一郎は一瞬驚いたようにこちらを振り返ったけれど、すぐに力強く握り返してくれた。
テニスをやることに不安はあるけれど。過去が他の人にもバレてしまうのはまだ抵抗があるけれど。
でも、今ならそれにも立ち向かうことができる気がする。
伊織は繋がった手から伝わってくる宗一郎のぬくもりを感じて、自分を励ますように小さく頷いた。
「わー、なんで宗くんそんな不機嫌そうな声なの!?」
「伊織があんまり鈍感だから」
「……っ!」
えー、と振り返ろうとして伊織はからだを硬直させた。
すぐ目の前、唇が触れてしまいそうなほどの距離に宗一郎の顔があった。
(き、キスされる……!?)
伊織は思わず目をつぶった。
ところが、覚悟したぬくもりは唇に触れず、かわりに鼻をぎゅっとつままれた。
「ふわっ」
驚いて目を開けると、にこりと悪戯に笑む宗一郎の顔。
「伊織。わかったら俺の前以外で隙をみせちゃダメだよ? 伊織は鈍感なうえに、ガードがゆるいんだから。わかった?」
「わ、わかった」
「あ、それと。キスは後でね。さすがにここでは誰かに見られるかもしれないからね」
期待した? と耳元で囁いてくる宗一郎に、伊織の全身が一気に真っ赤に染まる。
「もう! 宗くん!」
「はは。――好きだよ、伊織」
宗一郎の大きな手の平で頭を撫でられた。
伊織は照れたように俯きながら、言う。
「……わたしも好き」
「うん」
嬉しそうに微笑んでくる宗一郎に自分も笑顔を返した。
もうすぐ体育館が近づいてくる。
伊織はさりげなく宗一郎の手を放した。
さっきまで繋がっていたぬくもりがなくなって、急に胸に不安が舞い降りる。
テニス。やるとは決めたけど、やっぱり気が重い。
ラケットを握ったとき。ボールを手にしたとき。コートに立ったとき。
自分は平静でいられるだろうか。
(うう、あんまり自信ないなぁ……)
「伊織」
そんなことを考えていると、ふと頭に宗一郎の手のぬくもりを感じた。
顔をあげると宗一郎が優しく見守るような表情で見つめてくる。
「不安そうな顔してどうしたの? 大丈夫。俺がいるよ。俺が、いつでも伊織のそばにいるから」
「――うん。ありがとう」
「ちょっとでもつらいことや困ったことがあったら我慢しないですぐ俺に言うんだよ? わかった?」
「うん」
伊織は返事を返すと、もう一度目の前にある宗一郎の手にそっと自分の手を滑り込ませた。
宗一郎は一瞬驚いたようにこちらを振り返ったけれど、すぐに力強く握り返してくれた。
テニスをやることに不安はあるけれど。過去が他の人にもバレてしまうのはまだ抵抗があるけれど。
でも、今ならそれにも立ち向かうことができる気がする。
伊織は繋がった手から伝わってくる宗一郎のぬくもりを感じて、自分を励ますように小さく頷いた。