21
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あーあ。退屈だよなぁ」
宗一郎の隣り、同じく体育祭実行委員の要請でバスケにエントリーが決まっている九条要が話しかけてきた。九条は力強い瞳が印象的な少年だ。関東大会常連のサッカー部で二年生ながらエースストライカーを務めており、ひょうきんで明るい性格と整った顔立ちが手伝って女子からの人気が高い。宗一郎とは一年の頃から同じクラスで仲が良かった。
宗一郎は九条にうんざりとした返事を返す。
「ほんとう。俺も早く部活行きたい」
「だーよなあ。種目決まってるやつらは帰ってもいいよな」
同じくテニスに種目が決まっている相沢透が同意した。
相沢は帰宅部だが、中学時代は将来有望な野球選手としてかなり有名だったらしい。当の本人は何事にも夢中になることができない性格らしく、高校入学と同時にあっさり野球をやめてしまった。
中学の時はイガグリ坊主だった頭も、現在は軽く脱色された今風の無造作ヘアになっている。
軽そうな見た目に反することなく中身も相当軽いのだが、最近は夏休み前に付き合い始めた同じクラスの宮本琴美と真剣交際中らしい。
九条がだるそうな相沢にケッと毒づく。
「なんだよ。お前の種目は本当はソフトのはずだったじゃんか」
「別にいいだろ。ソフトは希望者が殺到してんだしさ」
「何言ってんだよ、元野球部注目選手! お前が抜けるとソフトがえらい戦力ダウンだろ!」
「あはは、そんなのオレの知ったこっちゃないし。だいたいオレがソフトやっちゃうと琴美が誰か知らない男とテニスでペアになっちゃうだろ。そしたら九条責任取ってくれんの?」
「それこそオレが知るかってんだよ! てめーばっか幸せになりやがって!」
言いながら九条が相沢にヘッドロックをかけた。
相沢が苦しそうに手足をばたばたさせるさまを、宗一郎は笑って見守る。
「く、苦しい! ギブギブギブ!」
「ケッ! 女のケツばっかおっかけやがって。ちょっとは学生らしく青春しろっての」
「九条にはまだ早すぎてわっかんないかなー。女の子こそ青春なのに。ふわふわでかわいくて、あんな素敵な生き物いないぜ?」
相沢のその言葉に、宗一郎は心の中で頷いた。
女の子というより伊織限定だけれど、あんなにふわふわでかわいくて素敵な子はいないと思う。
「あーあ。それでいったい何人の女が泣かされてきたんだか」
「さあね。お互いに合意の上だし問題ないだろ? それに今は本命ひとりだけだし」
そう言うと相沢は振り返って後ろの席の彼女、宮本に手を振った。
宮本がそれに気付いて笑顔で相沢に手を振り返す。
それを見て九条がさらに嫌そうに顔をしかめた。
「くっそ、なんでこんなチャラいやつにあの美人な宮本がなびくんだ! 理解できねー!」
くううっと目に手の甲を押し当てて泣き真似をする九条に、それまで二人の会話をのんびり傍観していた宗一郎が小さく笑いながら言った。
「はは。なに、九条。宮本のことが好きだったの?」
「いや。オレはもっと活発な子が好みだ」
「へえ」
九条とは長いこと友人をやっているけれど、そういえば女性の好みを聞いたのは初めてかもしれない。
新鮮な情報に宗一郎は目を丸くする。
「琴美の魅力がわからないなんて残念な男だな、九条は」
「うるせえよ黙れチャラ男! オレたちは女よりも部活一筋だからいいんだよ! なー、宗!」
そんな言葉とともに宗一郎はがしっと九条に肩を組まれた。
その態勢のまま相沢に文句を言い続けている九条に、宗一郎は小さく苦笑を零す。
「まあ、部活一筋なのは認めるけど。俺は彼女いない前提なの?」
「前提もなにも彼女いねーじゃん、宗」
「いるよ」
「だろ、余計な見栄を……ん? ちょ、ちょっと待て。お前今なんて……」
「いるよって言ったんだよ、彼女」
「「――な、なにぃぃぃぃぃぃ!?」」