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「ううん。俺のほうこそごめん。くだらない勘違いして伊織を傷つけて」
「う、ううん。そんなことないです。わたしのほうこそ……! こんなの、宗先輩に嫌われて当然……」
言葉の途中で伊織の瞳から涙が零れた。
宗一郎は伊織の腕を掴むと一気に自分の方に引き寄せた。
短い悲鳴を上げて、伊織が自分の胸に飛び込んでくる。
宗一郎はそのからだをしっかり抱きしめた。
「そ、宗先輩!?」
「伊織ごめん。嫌ってないよ。俺は伊織が好きだよ」
「え? でも昨日……」
「うん。俺、ショウが男だって思って、伊織は俺がいるからショウに会いにいけないんだって思ったんた。だから、俺が伊織と別れれば、伊織はほんとうに大好きなショウの元に行けるってそう考えて……だから、俺……」
「宗先輩……! 違いますよ、わたしが好きなのは宗先輩だけです。他の男のひとなんて考えたこともありません」
「うん。そうだよね。俺、伊織がそんな子じゃないってわかってたはずなのに、頭に血が昇って全然なんにもわかんなくなってた……。ごめん、伊織。ごめん……!」
「あ、あの……。じゃあ、もう一回、付き合ってくれますか?」
震える声で訊ねる伊織を、宗一郎は泣きそうな顔で見つめた。
「伊織は俺なんかでいいの? こんなくだらない勘違いで、伊織をこんなにも悲しませたのに」
「で、でも。宗先輩のそれは、悪意じゃないですよね? むしろ、わたしのこと思って決断してくれたことで、それは逆に嬉しいです。愛されてるんだなって実感できます。……信じてもらえなかったのは悲しいですけど、でもちょっとあれはしょうがないっていうか、たしかにショウって響きだけだと男と勘違いしてもしょうがないし、昨日の会話の流れは自分で思い返してもそう勘違いしてもおかしくないっていうか……。だ、だから……わたしのこと嫌いじゃないなら、もう一回付き合って欲しいです。宗先輩のとなりにいられる権利、もう一度わたしにください」
「うん……。いいよ。俺のとなりにいられる権利だけじゃなくて、もう俺をまるごと全部伊織にあげる。こんな俺でよかったらもらって?」
耳元でそう囁くと、伊織のうなじから首筋、耳にかけてまでが一気に赤く染まった。
宗一郎は伊織の耳の下にちゅっと軽いリップ音を立ててキスをする。
ぴくんと反応を示す腕の中の伊織が、ほんとうに愛しくてたまらない。
「伊織、愛してるよ」
「そ、宗……くん。わたしも……」
「はは、やっと宗くんって呼んでくれた」
「だ、だって……。嫌われたと思ってたからどう呼んでいいかわからなくて」
「宗くんて呼んでよ。敬語ももうやめて。……あ、でも宗一郎がいいな」
「そ、それは無理!」
「残念。でもいつか呼んでね」
「ど、努力します……」
「はは。うん、お願いします」
宗一郎が伊織の頬に手を添えると、伊織はそっと瞳を閉じた。
自分も目を閉じて伊織に顔を寄せる。
と、そのとき。
「ふ~ん、そういうことだったの」
ふいにまりあの声が響いた。
「「うわあっ!」」
宗一郎と伊織は弾かれたようにからだを離すと、驚いて声のしたほうを振り向いた。
見るとそこには、まりあ、信長、牧、小百合の四人が集合していた。
「な、みんなしていつからそこに!?」
「えー、宗ちゃんが伊織ちゃん外に連れ出してからだから結構最初っから?」
「!!」
(じゃああれもこれもそれも全部見られてたって言うわけか……!?)
宗一郎は片手で顔を覆うと、微塵も気付かなかった自分の鈍さを呪った。
そんな宗一郎にもお構いなしに、まりあが言葉を続ける。
「まったく、ふたりが別れるなんておかしいって思ったのよね」
「神さん、ショウが女だったって知らなかったんスか……! だからあんなちんぷんかんぷんなこと……!」
「ふふ。でもだからってあーんなに大好きな伊織ちゃんから身を引くなんて、ほんっとうに神くんは伊織ちゃんが好きで好きでたまらないのね」
「まあ、俺は神が勘違いしてるんだろうなって気付いてたけどな」
牧のその言葉に宗一郎は弾かれたように顔をあげた。
「な、牧さん! じゃあなんで教えてくれなかったんですか!」
「障害があった方が愛は深まるだろう? まさか別れるとまでは思わなかったが、結果的に丸くおさまったんだからよかったじゃないか、神」
な、と仲良く笑い合う牧と小百合に、宗一郎は疲れたように肩を落とした。
「丸く収まらなかったらどうするつもりだったんです?」
「あ、はいはい! そのときはわたしが宗ちゃんの彼女になるー!」
「あ、じゃあオレは伊織をもらってやってもいいッスよ!」
「だああ、ダメダメ! 特にノブ! 伊織をやるわけないだろ!」
恥ずかしさともどかしさを誤魔化すように宗一郎は信長にげんこつを落とした。
いってー暴力反対っすよ! と信長がぎゃんぎゃんとわめく。
それをみて伊織が声をあげて笑い出した。
宗一郎は拗ねたように唇をとがらせて、そんな伊織を振り返る。
「伊織、笑ってる場合じゃないだろ……」
「あはは! でも、宗くん! 牧さんの言うとおり、丸く収まったしいいよね?」
「ま、まあ……。伊織がいいなら、俺はいいけど……。でも、本当にごめんね、伊織」
「うん!」
さあ、部活に戻るぞという牧の声に、みんながぞろぞろと体育館へと移動した。
全員がこちらに背を向けたのを確認すると、宗一郎は自分の少し前を行く伊織の腕を引いた。
「伊織」
「んっ」
振り向きざまに伊織の唇を奪うと、伊織が驚いたように顔を赤く染めて頬を膨らませた。
「も、もう、宗くん! みんなすぐ近くにいるのに」
「誰も見てないよ」
「もう、そういう問題じゃ……んっ」
言い募る伊織の唇をもう一度、今度は先ほどより少し長めに奪った。
唇を離すと恨めしげにこちらを見る伊織の瞳と視線がぶつかって、宗一郎は悪戯っ子のように微笑む。
「愛してるよ伊織。もう二度と離さない」
「――うん!」
ふたりは微笑み合うと、からだの後ろでこっそり手をつないで前を行くみんなに続いた。
To be continued...
「う、ううん。そんなことないです。わたしのほうこそ……! こんなの、宗先輩に嫌われて当然……」
言葉の途中で伊織の瞳から涙が零れた。
宗一郎は伊織の腕を掴むと一気に自分の方に引き寄せた。
短い悲鳴を上げて、伊織が自分の胸に飛び込んでくる。
宗一郎はそのからだをしっかり抱きしめた。
「そ、宗先輩!?」
「伊織ごめん。嫌ってないよ。俺は伊織が好きだよ」
「え? でも昨日……」
「うん。俺、ショウが男だって思って、伊織は俺がいるからショウに会いにいけないんだって思ったんた。だから、俺が伊織と別れれば、伊織はほんとうに大好きなショウの元に行けるってそう考えて……だから、俺……」
「宗先輩……! 違いますよ、わたしが好きなのは宗先輩だけです。他の男のひとなんて考えたこともありません」
「うん。そうだよね。俺、伊織がそんな子じゃないってわかってたはずなのに、頭に血が昇って全然なんにもわかんなくなってた……。ごめん、伊織。ごめん……!」
「あ、あの……。じゃあ、もう一回、付き合ってくれますか?」
震える声で訊ねる伊織を、宗一郎は泣きそうな顔で見つめた。
「伊織は俺なんかでいいの? こんなくだらない勘違いで、伊織をこんなにも悲しませたのに」
「で、でも。宗先輩のそれは、悪意じゃないですよね? むしろ、わたしのこと思って決断してくれたことで、それは逆に嬉しいです。愛されてるんだなって実感できます。……信じてもらえなかったのは悲しいですけど、でもちょっとあれはしょうがないっていうか、たしかにショウって響きだけだと男と勘違いしてもしょうがないし、昨日の会話の流れは自分で思い返してもそう勘違いしてもおかしくないっていうか……。だ、だから……わたしのこと嫌いじゃないなら、もう一回付き合って欲しいです。宗先輩のとなりにいられる権利、もう一度わたしにください」
「うん……。いいよ。俺のとなりにいられる権利だけじゃなくて、もう俺をまるごと全部伊織にあげる。こんな俺でよかったらもらって?」
耳元でそう囁くと、伊織のうなじから首筋、耳にかけてまでが一気に赤く染まった。
宗一郎は伊織の耳の下にちゅっと軽いリップ音を立ててキスをする。
ぴくんと反応を示す腕の中の伊織が、ほんとうに愛しくてたまらない。
「伊織、愛してるよ」
「そ、宗……くん。わたしも……」
「はは、やっと宗くんって呼んでくれた」
「だ、だって……。嫌われたと思ってたからどう呼んでいいかわからなくて」
「宗くんて呼んでよ。敬語ももうやめて。……あ、でも宗一郎がいいな」
「そ、それは無理!」
「残念。でもいつか呼んでね」
「ど、努力します……」
「はは。うん、お願いします」
宗一郎が伊織の頬に手を添えると、伊織はそっと瞳を閉じた。
自分も目を閉じて伊織に顔を寄せる。
と、そのとき。
「ふ~ん、そういうことだったの」
ふいにまりあの声が響いた。
「「うわあっ!」」
宗一郎と伊織は弾かれたようにからだを離すと、驚いて声のしたほうを振り向いた。
見るとそこには、まりあ、信長、牧、小百合の四人が集合していた。
「な、みんなしていつからそこに!?」
「えー、宗ちゃんが伊織ちゃん外に連れ出してからだから結構最初っから?」
「!!」
(じゃああれもこれもそれも全部見られてたって言うわけか……!?)
宗一郎は片手で顔を覆うと、微塵も気付かなかった自分の鈍さを呪った。
そんな宗一郎にもお構いなしに、まりあが言葉を続ける。
「まったく、ふたりが別れるなんておかしいって思ったのよね」
「神さん、ショウが女だったって知らなかったんスか……! だからあんなちんぷんかんぷんなこと……!」
「ふふ。でもだからってあーんなに大好きな伊織ちゃんから身を引くなんて、ほんっとうに神くんは伊織ちゃんが好きで好きでたまらないのね」
「まあ、俺は神が勘違いしてるんだろうなって気付いてたけどな」
牧のその言葉に宗一郎は弾かれたように顔をあげた。
「な、牧さん! じゃあなんで教えてくれなかったんですか!」
「障害があった方が愛は深まるだろう? まさか別れるとまでは思わなかったが、結果的に丸くおさまったんだからよかったじゃないか、神」
な、と仲良く笑い合う牧と小百合に、宗一郎は疲れたように肩を落とした。
「丸く収まらなかったらどうするつもりだったんです?」
「あ、はいはい! そのときはわたしが宗ちゃんの彼女になるー!」
「あ、じゃあオレは伊織をもらってやってもいいッスよ!」
「だああ、ダメダメ! 特にノブ! 伊織をやるわけないだろ!」
恥ずかしさともどかしさを誤魔化すように宗一郎は信長にげんこつを落とした。
いってー暴力反対っすよ! と信長がぎゃんぎゃんとわめく。
それをみて伊織が声をあげて笑い出した。
宗一郎は拗ねたように唇をとがらせて、そんな伊織を振り返る。
「伊織、笑ってる場合じゃないだろ……」
「あはは! でも、宗くん! 牧さんの言うとおり、丸く収まったしいいよね?」
「ま、まあ……。伊織がいいなら、俺はいいけど……。でも、本当にごめんね、伊織」
「うん!」
さあ、部活に戻るぞという牧の声に、みんながぞろぞろと体育館へと移動した。
全員がこちらに背を向けたのを確認すると、宗一郎は自分の少し前を行く伊織の腕を引いた。
「伊織」
「んっ」
振り向きざまに伊織の唇を奪うと、伊織が驚いたように顔を赤く染めて頬を膨らませた。
「も、もう、宗くん! みんなすぐ近くにいるのに」
「誰も見てないよ」
「もう、そういう問題じゃ……んっ」
言い募る伊織の唇をもう一度、今度は先ほどより少し長めに奪った。
唇を離すと恨めしげにこちらを見る伊織の瞳と視線がぶつかって、宗一郎は悪戯っ子のように微笑む。
「愛してるよ伊織。もう二度と離さない」
「――うん!」
ふたりは微笑み合うと、からだの後ろでこっそり手をつないで前を行くみんなに続いた。
To be continued...