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夢小説設定
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「伊織ちゃんっ! いる!?」
仙道だった。
先ほど行われたミニゲームのスコアブックを整理していた伊織は、急に響いたその声に驚いて顔をあげた。
入り口に立つ仙道の姿を目に入れて、ぽかんと大口をあけている。
「あ、彰さん?」
どうしたんですか、と伊織がこちらへ走り寄ってきた。
伊織がそのそばに立つ宗一郎に気付いて、ハッと表情を強張らせる。
その伊織の視線を追って、仙道も宗一郎に気付いた。
複雑そうな顔でよおと挨拶をしてくる仙道に、宗一郎もぎこちない表情で挨拶を返す。
完全に宗一郎はそこを離れるタイミングを逃してしまった。
気まずさを誤魔化すように、宗一郎は手元のドリンクを取り上げ再びすする。
自然、耳に入ってくる二人の会話。
「伊織ちゃん、よかった無事だ」
「無事? それはもちろん無事ですけど、どうしたんですか?」
仙道の問いかけの意味がわからず一歩仙道の方へ近づいた伊織を、仙道が慌てて制止する。
「わわ、伊織ちゃんストップ! それ以上オレに近づいちゃダメ!」
「え?」
「ごめん、オレまだ伊織ちゃんのこと諦められてない。だからそれ以上近づくとオレの抑えてた欲望が爆発しちゃうかもしれないから近づかないで! オレ、神に殺される!!」
「「…………」」
仙道のその言葉に、宗一郎と伊織の間に微妙な空気が流れた。
仙道はそれに気付いた様子もなく、足を止めた伊織にほっと息を吐き出した。
「うん。それくらい距離があれば大丈夫……ってあれ? どうしたの、伊織ちゃん。なんか目、腫れてない?」
「え? いや、これは……」
しどろもどろになる伊織を見て、仙道がハッと息を呑んだ。
「ああ! やっぱり無事じゃなかった!? 昨日、種田から連絡があったんだ。伊織ちゃんに会ったって! あいつ、伊織ちゃんに会うときは心配だから絶対オレを連れてくようにって言っておいたのに、また見事にオレの要求をスルーしやがって……! 昨日、種田にいじめられたんだろ?」
大丈夫? と仙道が心配そうに伊織を見て瞳を細めた。
いつもの仙道なら伊織の頭を撫でるくらいしそうなのに、今日の仙道はそれをしなかった。
仙道の小さく震えるこぶしが目に入って、ああ我慢してるんだなと宗一郎はどこか他人事のように思った。
今度はそんな宗一郎に仙道が視線を向ける。
「神! お前彼氏なんだから種田からちゃんと守ってやれよ!」
「……うん」
他に返すべき言葉が見つからなくて、宗一郎はとりあえず頷いた。
その返事に仙道がムッと表情を険しくさせる。
「うんじゃないだろ。オレは、伊織ちゃんのことすごく好きだけど、絶対絶対他のやつになんか渡したくなかったけど、それでもお前ならちゃんと伊織ちゃんを大切にしてくれるって思ったから諦めるって決めたんだ。オレにそう思わせたこと後悔させるな」
「…………」
鋭く睨んでくる仙道の視線を直視できなくて、思わず宗一郎は視線を逸らせた。
仙道の言葉が容赦なく宗一郎の心をえぐる。
(俺も、伊織のことずっと大切に守っていきたかったよ)
言葉にせず瞳を伏せたまま黙っていると、仙道に胸倉を掴まれた。
「おい、神……!」
それでも仙道の目を見ない宗一郎の態度に、仙道が思わず声を荒げたそのとき。