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退屈な授業も全課程終了し、やっと部活の時間になった。
まりあは所属している美化委員会で呼び出しをくらっており、伊織は信長と二人で先に体育館に来ていた。
更衣室でジャージに着替え、紅白戦の準備に取り掛かろうとしたところで、伊織はゴール近くに立つ宗一郎の姿を見つけた。
「神先輩!」
振り向き、伊織に気付くと、微笑んでくれる宗一郎。
そんな宗一郎に伊織は駆け寄って、先ほど借りた軟膏を差し出す。
「これ、ありがとうございます」
「ああ。いつでもよかったのに」
「いえいえ、忘れないうちに返さないと」
「はは、伊織ちゃんらしいね。どれ。少しは良くなったかな」
そう言って、宗一郎はおもむろに伊織の前髪を持ち上げた。
「!」
伊織の体が驚きに硬直し、全身が一気に熱くなる。
「うん。もうほとんどわからない。これなら大丈夫。よかったね、伊織ちゃん」
「は、はい」
伊織は動揺を隠し切れず、しどろもどろになって返事をする。
宗一郎はそんな伊織を見て可笑しそうに笑うと、その手をおでこから離した。
何かを考えるようにふと目を細め、伊織の耳元に口を寄せる。
伊織の肩が、びくりと震えた。
ひどく近い距離で鼓膜に響く、宗一郎の声。
「伊織ちゃん。今日の紅白戦さ、俺頑張るから応援してて」
耳にかかる宗一郎の吐息。
伊織は、やっとのことでコクコクと首を縦に振ると、ふらふらと宗一郎から離れた。
心臓がバクバクと音を立てている。
顔に熱が集まるのを止めることが出来ない。
自分の顔を隠すように両手を頬に当てると、伊織は動悸を鎮めるように深く息を吸い込んだ。
あれは無意識にやっているのだろうか。だとしたら、手に負えない。
(もう、神先輩ってほんとうに……)
天然のタラシなんじゃないだろうか。
女の子に、あんなふうに簡単に触れたり近づいたりしてはいけないと思う。自分がモテるという自覚はないのだろうか。
伊織が壁に向かって深呼吸を繰り返していると、ふいに横から訝しむような声がした。
「伊織ちゃん……?」
怪訝に思っていることを隠すことなく、眉根を寄せてこちらを窺っているのは、小百合だった。
そんな表情をしていても、小百合の美しさはまるで揺るがない。
伊織は慌てて姿勢を正した。変なところを見られてしまった。
「さっ、小百合先輩、お疲れさまです」
「お疲れさま。伊織ちゃん、具合でも悪いの? 顔、すごく赤いけど」
「や、大丈夫です! なんでもないです、すっごく元気です!」
「そう? 無理しちゃダメよ? 具合が悪かったら座って休んでてもいいし、もちろん早退したってかまわないんだからね?」
「小百合先輩……。ありがとうございます、ほんとうに大丈夫です」
本当に、小百合は優しい。
ある種の感動を胸に、伊織が心から感謝を込めてそういうと、小百合は綺麗に唇を持ち上げてにこりと微笑んだ。
まりあは所属している美化委員会で呼び出しをくらっており、伊織は信長と二人で先に体育館に来ていた。
更衣室でジャージに着替え、紅白戦の準備に取り掛かろうとしたところで、伊織はゴール近くに立つ宗一郎の姿を見つけた。
「神先輩!」
振り向き、伊織に気付くと、微笑んでくれる宗一郎。
そんな宗一郎に伊織は駆け寄って、先ほど借りた軟膏を差し出す。
「これ、ありがとうございます」
「ああ。いつでもよかったのに」
「いえいえ、忘れないうちに返さないと」
「はは、伊織ちゃんらしいね。どれ。少しは良くなったかな」
そう言って、宗一郎はおもむろに伊織の前髪を持ち上げた。
「!」
伊織の体が驚きに硬直し、全身が一気に熱くなる。
「うん。もうほとんどわからない。これなら大丈夫。よかったね、伊織ちゃん」
「は、はい」
伊織は動揺を隠し切れず、しどろもどろになって返事をする。
宗一郎はそんな伊織を見て可笑しそうに笑うと、その手をおでこから離した。
何かを考えるようにふと目を細め、伊織の耳元に口を寄せる。
伊織の肩が、びくりと震えた。
ひどく近い距離で鼓膜に響く、宗一郎の声。
「伊織ちゃん。今日の紅白戦さ、俺頑張るから応援してて」
耳にかかる宗一郎の吐息。
伊織は、やっとのことでコクコクと首を縦に振ると、ふらふらと宗一郎から離れた。
心臓がバクバクと音を立てている。
顔に熱が集まるのを止めることが出来ない。
自分の顔を隠すように両手を頬に当てると、伊織は動悸を鎮めるように深く息を吸い込んだ。
あれは無意識にやっているのだろうか。だとしたら、手に負えない。
(もう、神先輩ってほんとうに……)
天然のタラシなんじゃないだろうか。
女の子に、あんなふうに簡単に触れたり近づいたりしてはいけないと思う。自分がモテるという自覚はないのだろうか。
伊織が壁に向かって深呼吸を繰り返していると、ふいに横から訝しむような声がした。
「伊織ちゃん……?」
怪訝に思っていることを隠すことなく、眉根を寄せてこちらを窺っているのは、小百合だった。
そんな表情をしていても、小百合の美しさはまるで揺るがない。
伊織は慌てて姿勢を正した。変なところを見られてしまった。
「さっ、小百合先輩、お疲れさまです」
「お疲れさま。伊織ちゃん、具合でも悪いの? 顔、すごく赤いけど」
「や、大丈夫です! なんでもないです、すっごく元気です!」
「そう? 無理しちゃダメよ? 具合が悪かったら座って休んでてもいいし、もちろん早退したってかまわないんだからね?」
「小百合先輩……。ありがとうございます、ほんとうに大丈夫です」
本当に、小百合は優しい。
ある種の感動を胸に、伊織が心から感謝を込めてそういうと、小百合は綺麗に唇を持ち上げてにこりと微笑んだ。