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夢小説設定
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ドリンクボトルを小さく振りながら訊ねると、まりあがああ、と声を出す。
「知ってるよ。今日のドリンクはポカリにクエン酸配合。疲れてる人が飲むとすっごく酸っぱいんだって! でも疲れるとたまる乳酸をどうのこうのしてくれるからスポーツ選手にはすごくいいらしいよ? 伊織ちゃんが言ってた」
「へえ……」
クエン酸ねえ……と三人はドリンクをまじまじと見つめた。
確かに疲労回復にはいいのかもしれないが、これほどまでに酸っぱいと水分補給が円滑にできない。
ちなみにこれを入れた張本人である伊織は、職員室にある冷蔵庫に凍らせてあるタオルを取りに行っていてこの場にはいない。
ドリンクを飲む手の止まっている牧と信長とは対照的に、宗一郎は気合を入れてそのドリンクに口をつけると、流し込むように中身を全て飲み干した。
愛しい彼女の作ったドリンクを、彼氏である自分が残すわけにはいかない。
だけれどどんな愛のパワーも迫り来る酸っぱさと生理現象に勝てるはずもなかった。
体を折り曲げてごほごほと咽る宗一郎の背中を、まりあがさする。
「わあ、宗ちゃん大丈夫!? それ、一気に飲むなんて無茶だよ!」
「いや、もう一回手を止めたら飲めなくなる気がして……」
「おお、飲み干したのか……。愛のパワーだな」
「当たり前ですよ、伊織が一生懸命作ってくれてるんですから。牧さんたちもちゃんと全部飲んでくださいね」
茶化すように言う牧に宗一郎が釘を刺したとき、開け放していた体育館の入り口に長身の人影が現れた。
白い半袖シャツに黒のネクタイ、深緑と茶のチェックのズボンという見慣れない制服に身を包んだその人物は、体育館の中に顔だけを覗かせて誰かを探すようにきょろきょろと視線をさまよわせている。
「誰だろう、あれ……」
ちょうど入り口側の壁にもたれて休んでいた宗一郎は、少し離れたところにある体育館の入り口にじっと目を凝らした。
その呟きを聞いて、牧たちも宗一郎の視線の先を追いかけた。
「ん、あれは……種田か!?」
牧が驚いたように声を上げた。
その牧の声を聞きつけて入り口に立っていた人物がこちらに首をめぐらせた。
振り向いたその顔は、整った賢そうな顔立ちをしていた。もしかしたら彼のかけている黒ぶちの眼鏡がそう見せているのかもしれない。
やはり見覚えのないその顔に、宗一郎は首をひねる。
「牧さん、お知り合いですか?」
「おう。お前らもちょっと来い」
「はい」
言われるがままに宗一郎と信長とまりあは牧の後をついていった。
牧がその人物の前に行くと、彼がすっと頭を下げた。
ただ普通にお辞儀をしただけなのに、なぜか彼がそうすると品のあるしぐさに見えた。
「牧さん、お久しぶりです」
静かに川を流れる清水のようにさらりとした声で彼が挨拶をする。
すべての動作がなめらかで優雅だ。きっと育ちがいいんだろう。
(ノブにこの人の爪の垢でも煎じて飲ましてやりたいな)
そんなことを考えながら宗一郎が傍らの後輩に目をやると、当の本人はきらきらとした目で宗一郎を見て、かっこいい人ッスね! なんて言ってきた。
宗一郎はそうだね、と適当な相槌をうって視線を目の前の人物に戻す。
彼は宗一郎たちにも小さく頭を下げてきた。
宗一郎も同じように頭を下げる。
「よう、今日はどうしたんだ種田。こいつらはうちのレギュラーの神と清田。それからマネージャーの雪原だ」
「神……? へえ、君がもしかして神宗一郎?」
牧の紹介に、種田と呼ばれた男は興味深そうな視線を宗一郎に向けた。そのままじろじろとまるで値踏みでもするかのように宗一郎を凝視してくる。
「知ってるよ。今日のドリンクはポカリにクエン酸配合。疲れてる人が飲むとすっごく酸っぱいんだって! でも疲れるとたまる乳酸をどうのこうのしてくれるからスポーツ選手にはすごくいいらしいよ? 伊織ちゃんが言ってた」
「へえ……」
クエン酸ねえ……と三人はドリンクをまじまじと見つめた。
確かに疲労回復にはいいのかもしれないが、これほどまでに酸っぱいと水分補給が円滑にできない。
ちなみにこれを入れた張本人である伊織は、職員室にある冷蔵庫に凍らせてあるタオルを取りに行っていてこの場にはいない。
ドリンクを飲む手の止まっている牧と信長とは対照的に、宗一郎は気合を入れてそのドリンクに口をつけると、流し込むように中身を全て飲み干した。
愛しい彼女の作ったドリンクを、彼氏である自分が残すわけにはいかない。
だけれどどんな愛のパワーも迫り来る酸っぱさと生理現象に勝てるはずもなかった。
体を折り曲げてごほごほと咽る宗一郎の背中を、まりあがさする。
「わあ、宗ちゃん大丈夫!? それ、一気に飲むなんて無茶だよ!」
「いや、もう一回手を止めたら飲めなくなる気がして……」
「おお、飲み干したのか……。愛のパワーだな」
「当たり前ですよ、伊織が一生懸命作ってくれてるんですから。牧さんたちもちゃんと全部飲んでくださいね」
茶化すように言う牧に宗一郎が釘を刺したとき、開け放していた体育館の入り口に長身の人影が現れた。
白い半袖シャツに黒のネクタイ、深緑と茶のチェックのズボンという見慣れない制服に身を包んだその人物は、体育館の中に顔だけを覗かせて誰かを探すようにきょろきょろと視線をさまよわせている。
「誰だろう、あれ……」
ちょうど入り口側の壁にもたれて休んでいた宗一郎は、少し離れたところにある体育館の入り口にじっと目を凝らした。
その呟きを聞いて、牧たちも宗一郎の視線の先を追いかけた。
「ん、あれは……種田か!?」
牧が驚いたように声を上げた。
その牧の声を聞きつけて入り口に立っていた人物がこちらに首をめぐらせた。
振り向いたその顔は、整った賢そうな顔立ちをしていた。もしかしたら彼のかけている黒ぶちの眼鏡がそう見せているのかもしれない。
やはり見覚えのないその顔に、宗一郎は首をひねる。
「牧さん、お知り合いですか?」
「おう。お前らもちょっと来い」
「はい」
言われるがままに宗一郎と信長とまりあは牧の後をついていった。
牧がその人物の前に行くと、彼がすっと頭を下げた。
ただ普通にお辞儀をしただけなのに、なぜか彼がそうすると品のあるしぐさに見えた。
「牧さん、お久しぶりです」
静かに川を流れる清水のようにさらりとした声で彼が挨拶をする。
すべての動作がなめらかで優雅だ。きっと育ちがいいんだろう。
(ノブにこの人の爪の垢でも煎じて飲ましてやりたいな)
そんなことを考えながら宗一郎が傍らの後輩に目をやると、当の本人はきらきらとした目で宗一郎を見て、かっこいい人ッスね! なんて言ってきた。
宗一郎はそうだね、と適当な相槌をうって視線を目の前の人物に戻す。
彼は宗一郎たちにも小さく頭を下げてきた。
宗一郎も同じように頭を下げる。
「よう、今日はどうしたんだ種田。こいつらはうちのレギュラーの神と清田。それからマネージャーの雪原だ」
「神……? へえ、君がもしかして神宗一郎?」
牧の紹介に、種田と呼ばれた男は興味深そうな視線を宗一郎に向けた。そのままじろじろとまるで値踏みでもするかのように宗一郎を凝視してくる。