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海南大附属高校。
その校門を見上げるように、ひとりの男子高校生が佇んでいた。
190センチはあるだろう長身。袖を通しているのはぱりっと糊付けされているように皺ひとつない白の半袖シャツ。その胸ポケットには深緑で刺繍を施された校章マークが描かれている。黒のネクタイに黒のベルト。深緑と茶のチェックのズボン。片手には革の学生鞄。
この辺りでは見ない制服だった。
色素の薄い柔らかそうな茶色の髪がさらさらと風になびいている。
落ち着いた立ち姿はさらりとしていて、この猛暑の中彼のまわりだけ涼やかな印象を与える。
端整に整った眉目を黒ぶちの眼鏡の奥に隠し、彼は手元の紙切れを目を細めて見つめた。
「ここ……か」
小さくそう呟くと、彼は流れるような優雅なしぐさで紙切れを鞄にしまい、海南大附属高校へと足を踏み入れた。
インターハイまで後4日。
3日後には大会会場のある広島へと旅立つ。
海南大附属高校男子バスケ部は、最後の調整に入っていた。
バスケ部が今年掲げる目標は全国制覇だ。自然、部員たちの士気も否応なしに高まる。
宗一郎は額を流れる汗をふうと首にかけたタオルで拭った。
先ほどレギュラー陣はフォーメーションの確認も兼ねて簡単なミニゲームを行い、今はその休憩だった。
傍らにいる先輩の牧と後輩の信長も同じように首もとのタオルで汗をぬぐってドリンクに手を伸ばしている。
宗一郎も同じくドリンクに手をかけた。
このドリンクはバスケ部のマネージャーで宗一郎の彼女でもある伊織が作ってくれたものだ。
ひとくち嚥下して、宗一郎は胸からせり上がって来る生理的現象に逆らえず思わずぶふっとむせた。
(なんだか、妙にすっぱい……?)
そのままタオルで口許を押さえて幾度か咳をして、ドリンクのボトルをまじまじと見つめる。
両隣で牧と信長も同じようにごほごほやっていた。
「おい、神。鈴村はいったい俺たちに何を飲ませたんだ……?」
「さ、さあ」
牧が眉を潜めて訊ねた問いに、宗一郎は小さく首をかしげた。
残念ながら皆目検討もつかない。
「バカ伊織! こんなもん飲めっかー!!」
信長が大きく手を振り上げて吠えた。
なんとなく自分の彼女が侮辱されたようでおもしろくなくて、宗一郎はその頭を横から優しく小突く。
「いいから飲みなよ。せっかく伊織が俺たちのために作ってくれてるんだから」
「とはいってもこのすっぱさ犯罪級ですよ!? なんなんすかこれ!」
「……これがなにかはわからないけど。でもからだにはいいものなんじゃない?」
言って宗一郎はもうひとくち啜った。
すっぱくて思わず顔がきゅっとなる。
「……やっぱり酸っぱいね」
「これを全て飲むのは至難の業だな」
「でっしょー!!」
我が意を得たり! とばかりに偉そうにふんぞり返る信長に宗一郎が蹴りを入れたとき、まりあが近くを通りかかった。
「あ、まりあ」
宗一郎が呼びかけると、まりあはうん? とこちらに近づいてくる。
「ね、まりあ。これ、なにが入ってるか知らない?」
その校門を見上げるように、ひとりの男子高校生が佇んでいた。
190センチはあるだろう長身。袖を通しているのはぱりっと糊付けされているように皺ひとつない白の半袖シャツ。その胸ポケットには深緑で刺繍を施された校章マークが描かれている。黒のネクタイに黒のベルト。深緑と茶のチェックのズボン。片手には革の学生鞄。
この辺りでは見ない制服だった。
色素の薄い柔らかそうな茶色の髪がさらさらと風になびいている。
落ち着いた立ち姿はさらりとしていて、この猛暑の中彼のまわりだけ涼やかな印象を与える。
端整に整った眉目を黒ぶちの眼鏡の奥に隠し、彼は手元の紙切れを目を細めて見つめた。
「ここ……か」
小さくそう呟くと、彼は流れるような優雅なしぐさで紙切れを鞄にしまい、海南大附属高校へと足を踏み入れた。
インターハイまで後4日。
3日後には大会会場のある広島へと旅立つ。
海南大附属高校男子バスケ部は、最後の調整に入っていた。
バスケ部が今年掲げる目標は全国制覇だ。自然、部員たちの士気も否応なしに高まる。
宗一郎は額を流れる汗をふうと首にかけたタオルで拭った。
先ほどレギュラー陣はフォーメーションの確認も兼ねて簡単なミニゲームを行い、今はその休憩だった。
傍らにいる先輩の牧と後輩の信長も同じように首もとのタオルで汗をぬぐってドリンクに手を伸ばしている。
宗一郎も同じくドリンクに手をかけた。
このドリンクはバスケ部のマネージャーで宗一郎の彼女でもある伊織が作ってくれたものだ。
ひとくち嚥下して、宗一郎は胸からせり上がって来る生理的現象に逆らえず思わずぶふっとむせた。
(なんだか、妙にすっぱい……?)
そのままタオルで口許を押さえて幾度か咳をして、ドリンクのボトルをまじまじと見つめる。
両隣で牧と信長も同じようにごほごほやっていた。
「おい、神。鈴村はいったい俺たちに何を飲ませたんだ……?」
「さ、さあ」
牧が眉を潜めて訊ねた問いに、宗一郎は小さく首をかしげた。
残念ながら皆目検討もつかない。
「バカ伊織! こんなもん飲めっかー!!」
信長が大きく手を振り上げて吠えた。
なんとなく自分の彼女が侮辱されたようでおもしろくなくて、宗一郎はその頭を横から優しく小突く。
「いいから飲みなよ。せっかく伊織が俺たちのために作ってくれてるんだから」
「とはいってもこのすっぱさ犯罪級ですよ!? なんなんすかこれ!」
「……これがなにかはわからないけど。でもからだにはいいものなんじゃない?」
言って宗一郎はもうひとくち啜った。
すっぱくて思わず顔がきゅっとなる。
「……やっぱり酸っぱいね」
「これを全て飲むのは至難の業だな」
「でっしょー!!」
我が意を得たり! とばかりに偉そうにふんぞり返る信長に宗一郎が蹴りを入れたとき、まりあが近くを通りかかった。
「あ、まりあ」
宗一郎が呼びかけると、まりあはうん? とこちらに近づいてくる。
「ね、まりあ。これ、なにが入ってるか知らない?」