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「付き合ったのはわたしが高校生のときからだけど、知り合ったのはもっと前よ。わたしたち、家が近所で幼馴染みだったの。真幸さんはわたしの三つ上。だから中学も高校も別々でね」
「へえ。そうだったんだ」
「真幸さんもモテたのよ~。たまに学校まで迎えに来てくれたんだけど、それから女子生徒の人気に火がついちゃって大変だったんだから」
ねー、なんて年甲斐もなく顔を見合わせて笑い合う両親に伊織は微苦笑をもらした。
今でも変わらずかわいいよ、美奈子。やあだあ真幸さんたら、なんていう甘ったるいやり取りを横目で見て、伊織は宗一郎に苦笑を向ける。
「ごめんね宗くん、こんな両親で」
「どうして? 素敵だよ」
「そうかなぁ……。もうちょっとこう恥じらいや分別ってものを……」
「何を言うか伊織。好きなものを好きと、愛しているものを愛していると言って何が悪い」
「いや、悪くはないけど、時と場合をね? 見極めようってことだよね?」
「やあだ、伊織ちゃんたら若いのにじじむさいこと言って」
「じじむさくないもん!」
「若い頃は情熱がないとな。父さんたちもお前たちくらいの頃は……」
そこで真幸が不自然に言葉を止めた。
急に神妙な顔つきになって、宗一郎に向き直る。
真幸はおもむろにテーブル越しに宗一郎に顔を寄せると、こそっと囁くように言った。
「ところで宗一郎くん。伊織とはもうシたのかい?」
「!? え、え!?」
「ちょ、お父さん!!」
伊織と宗一郎がその質問に驚いて、全身を真っ赤にした。
両親二人はにこにこと微笑みながら返事を待っている。
伊織はそれを見て絶句した。
いつもどこかぶっ飛んだところがある両親だったけれど、さすがに今回のこれは伊織の理解の範疇を軽く何万光年分超えた。
ぐったり力尽きて打ち上げられたマグロのようにテーブルに突っ伏す伊織とは対照的に、顔を真っ赤にしながらも宗一郎が律儀に質問に答える。
「あ、いえ、あの、その……まだ、です」
「そうか! それはよかった。じゃあ宗一郎くん、お願いだ。くれぐれも予防だけはしてくれ」
真幸が真剣な顔でそう述べた。
伊織はもう我慢ならないと荒々しくイスから立ち上がった。
こんな話、娘と付き合いたての彼氏にするなんてほんとうに信じられない。
恥ずかしさで目尻に涙が浮かぶ。
「ちょっともうやだ今すぐ黙ってなに言ってるのほんとうに! もう宗くんこんな人たち無視していいから! 部屋行こう、部屋!」
「わ、ちょっと伊織」
ぐいぐい宗一郎の袖を引っ張る伊織を、美奈子がやんわりと制止する。
「あら、ダメよ伊織ちゃん。これは大事な話なのよ? ちゃんと席に座りなさい」
「お母さん!」
「座りなさい」
有無を言わせぬその口調に、伊織は今にも泣き出しそうな顔で下唇を噛みながら席についた。
美奈子がそれを見て満足そうに微笑む。
「伊織ちゃん、恥ずかしがらずにちゃんと聞きなさい。お母さんたちはね、伊織ちゃんにしあわせになって欲しいのよ。最近はこういう話は家庭でも敬遠されがちであまりされないようだけれど、うちは違うわ。性教育は恥ずかしいことじゃなくて大事なことよ。そういうことがどんどん早くなっている今は特に、ね」
「その通りだ」
いつになく真剣な顔で語る美奈子に大きく頷いて、真幸が宗一郎に視線を向ける。
宗一郎は無意識に姿勢を正して、真幸の瞳をまっすぐ見返した。
「宗一郎くん。わたしも男だ。君が伊織に感じるだろう衝動には覚えがあるし、またそれが悪いものだとは思わない。まあ、正直言って男親とすれば複雑だが……むしろ耐えがたくもあるが……しかしそれは俺が美奈子のおとうさんにも味わわせていた思いであるからして……。うぅむ、因果応報というやつか……。しかしかわいい娘に手を出される男親がよもやここまでの気持ちだとは……」