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夢小説設定
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伊織は慌てて振り返る。
「す、すいません!」
「急に止まると危ないですよ。ここは人通り多いですからね」
「ほ、本当にすみません。お怪我はなかったですか?」
「大丈夫よ、ありがとう」
伊織にぶつかったのは人の良さそうなおばあちゃんだった。
伊織がぺこりと頭を下げると、おばあちゃんは優しげな笑みを浮かべて歩いていった。
伊織も再び歩き出そうと前を向いて、今度は胸がぎゅっとつかまれたように痛んだ。
もう視界の先には宗一郎の姿がどこにもなかった。
背の高い宗一郎の姿はある程度離れたって頭ひとつ出ているから見つけることができるのに、それがどこにもない。
伊織は大慌てでお店の立ち並ぶ狭い小道を走った。
人が多くて思うように前に進むことができない。
遠くへ目を凝らしても、それらしい頭を見つけることもできない。
小道の終着点、江島神社の鳥居の場所まで来ても宗一郎の姿を見つけることが出来なかった。
(ど、どうしよう……!)
さすがに一人で神社に入って行ったってことはないだろう。
ここにもいないってことは、もしかしたら怒って帰ってしまったのかもしれない。
伊織はショートパンツのポケットからケータイを取り出した。
宗一郎の番号を呼び出して、思わず手が止まる。
もしかしたら、電話をしても出てくれないかもしれない。
(で、でもでもこのままでいるわけにもいかないし……)
思って伊織が震える指を通話ボタンにかけたそのとき。
手元のケータイが突然鳴り出した。
ディスプレイには宗一郎の名前。
伊織は慌てて電話を取る。
「は、はい!」
『伊織!? 今どこ!?』
耳に当てたケータイから、慌てたような宗一郎の声が飛び込んでくる。
伊織はふいに泣き出したい気持ちになって、震える声で答える。
「じ、神社の鳥居のとこ……」
『神社ぁ!? もうそんなとこにいるの!?』
「え?」
『まあいいや。今から急いでそっちに行くから、そこで待ってて。誰かに声かけられても反応しちゃだめだからね』
それだけ言うと荒々しく通話が途切れた。
それからしばらくも経たないうちに宗一郎が姿を現す。
伊織の瞳に思わず涙が浮かんだ。
「宗くん……!」
「伊織、お待たせ……って、ちょっとなんで泣いてるの!? ああ、ほら、涙拭いて」
宗一郎の手が優しく頬を零れる涙を拭う。
そのあたたかい感触に、伊織の瞳から余計涙が流れた。
(どうしよう。こんなところで泣いたら宗くんを困らせるだけなのに)
思っても涙は止まらなかった。
ふいに腕を宗一郎に掴まれた。
宗一郎はそのまま無言で伊織を引っ張って行くと、人気のない場所で立ち止まった。
宗一郎はしゃがみこんで、伊織の顔を覗き込むようにして見てくる。
「伊織、どうしたの? はぐれたのがそんなに心細かった?」
「ち、ちが……。今日は手、繋いだまんまって言ってたのに、宗くん怒って……ひとりでどんどん先に行っちゃうから……。顔をあげたらもう姿も見えなくなってて、嫌われちゃったって……」
「え? ちょ、伊織、なんでそんなことになってるの?」
「え?」
宗一郎の戸惑うような声に、伊織は顔をあげた。
宗一郎は伊織の涙を親指の腹で拭いながら、優しく微笑んだ。
「伊織、俺怒ってないよ。たしかに仙道の名前出されたときはちょっとむっとしたけど、それだけだし」
「す、すいません!」
「急に止まると危ないですよ。ここは人通り多いですからね」
「ほ、本当にすみません。お怪我はなかったですか?」
「大丈夫よ、ありがとう」
伊織にぶつかったのは人の良さそうなおばあちゃんだった。
伊織がぺこりと頭を下げると、おばあちゃんは優しげな笑みを浮かべて歩いていった。
伊織も再び歩き出そうと前を向いて、今度は胸がぎゅっとつかまれたように痛んだ。
もう視界の先には宗一郎の姿がどこにもなかった。
背の高い宗一郎の姿はある程度離れたって頭ひとつ出ているから見つけることができるのに、それがどこにもない。
伊織は大慌てでお店の立ち並ぶ狭い小道を走った。
人が多くて思うように前に進むことができない。
遠くへ目を凝らしても、それらしい頭を見つけることもできない。
小道の終着点、江島神社の鳥居の場所まで来ても宗一郎の姿を見つけることが出来なかった。
(ど、どうしよう……!)
さすがに一人で神社に入って行ったってことはないだろう。
ここにもいないってことは、もしかしたら怒って帰ってしまったのかもしれない。
伊織はショートパンツのポケットからケータイを取り出した。
宗一郎の番号を呼び出して、思わず手が止まる。
もしかしたら、電話をしても出てくれないかもしれない。
(で、でもでもこのままでいるわけにもいかないし……)
思って伊織が震える指を通話ボタンにかけたそのとき。
手元のケータイが突然鳴り出した。
ディスプレイには宗一郎の名前。
伊織は慌てて電話を取る。
「は、はい!」
『伊織!? 今どこ!?』
耳に当てたケータイから、慌てたような宗一郎の声が飛び込んでくる。
伊織はふいに泣き出したい気持ちになって、震える声で答える。
「じ、神社の鳥居のとこ……」
『神社ぁ!? もうそんなとこにいるの!?』
「え?」
『まあいいや。今から急いでそっちに行くから、そこで待ってて。誰かに声かけられても反応しちゃだめだからね』
それだけ言うと荒々しく通話が途切れた。
それからしばらくも経たないうちに宗一郎が姿を現す。
伊織の瞳に思わず涙が浮かんだ。
「宗くん……!」
「伊織、お待たせ……って、ちょっとなんで泣いてるの!? ああ、ほら、涙拭いて」
宗一郎の手が優しく頬を零れる涙を拭う。
そのあたたかい感触に、伊織の瞳から余計涙が流れた。
(どうしよう。こんなところで泣いたら宗くんを困らせるだけなのに)
思っても涙は止まらなかった。
ふいに腕を宗一郎に掴まれた。
宗一郎はそのまま無言で伊織を引っ張って行くと、人気のない場所で立ち止まった。
宗一郎はしゃがみこんで、伊織の顔を覗き込むようにして見てくる。
「伊織、どうしたの? はぐれたのがそんなに心細かった?」
「ち、ちが……。今日は手、繋いだまんまって言ってたのに、宗くん怒って……ひとりでどんどん先に行っちゃうから……。顔をあげたらもう姿も見えなくなってて、嫌われちゃったって……」
「え? ちょ、伊織、なんでそんなことになってるの?」
「え?」
宗一郎の戸惑うような声に、伊織は顔をあげた。
宗一郎は伊織の涙を親指の腹で拭いながら、優しく微笑んだ。
「伊織、俺怒ってないよ。たしかに仙道の名前出されたときはちょっとむっとしたけど、それだけだし」