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宗一郎としっかり繋がった右手。
伊織は一瞬だけそこに力を込めた。
すると、うん? と優しい笑顔で顔を向けてくれる宗一郎。
そんななんでもないことで、伊織の胸が苦しいくらいにきゅっとなる。
「宗くん、好き!」
思わず堪えきれなくなって伊織は隣りを歩く宗一郎の腰に抱きついた。
「わっ。どしたの急に?」
不意打ちに少しバランスを崩しながらも、しっかり伊織の体を支えてくれる宗一郎。
ハッと我に返って伊織は慌てて宗一郎から離れた。
ここは公道で、まわりに人もいる。しまった、とんでもない失態だ。
「ご、ごめん。ちょっと何かがわからなくなった……!」
「はは、なにそれ? まあ、嬉しいからいいけど。なんなら抱っこして展望台まで行ってあげようか?」
冗談とも本気ともつかない調子で宗一郎はそう言うと悪戯に口の端を持ち上げた。
伊織は慌てて首を振る。
「いやいやいや! 結構です」
「そっか。残念だな」
「残念て!」
「はは、冗談だよ」
「……宗くんの冗談、わかりにくい」
「そう? いつでも半分本気だからかな」
「!?」
「はは、冗談だって。伊織が単純すぎるんだよ。ほんとかわいいなぁもう」
宗一郎の大きな手が伸びてきて伊織の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「あー、ここが人通りなかったらキスしちゃうのにな」
「ちょ、宗くん!」
「人通りがあってもいい?」
「な、ダメに決まってるでしょ! もう、そんなこと言い出すなんてまるで彰さんみたい」
「……へえ。伊織、仙道にそんなこと言われたことあるんだ」
急に隣りを歩く宗一郎の温度がすっと冷えた。
伊織は自分の失言に気付いて青ざめる。
「ない! ないです! わたしの勝手なイメージっていうか……!」
「ふうん。まあどっちでも俺には関係ないけどね」
「そ、宗くん……」
そのさらりとした冷たい声音に、伊織の心臓が凍りついた。
どうしよう。確実に怒っている。
伊織が宗一郎の顔を横から見上げても、宗一郎は気付かないフリをして頑なに前を向き続けていた。
しばらく二人は無言のまま歩いた。
江ノ島へ続く橋を渡り終えて、お店が立ち並ぶ場所に来ても宗一郎は黙ったままだった。
途方に暮れて伊織が眉根を下げたとき、宗一郎の手が伊織の手からするりと離れた。
「!」
そのまま宗一郎は何事もなかったかのように早足で歩いて行ってしまう。
(今日は手を繋いだままって言ってたのに……)
伊織は思わず立ち止まって、宗一郎の背中を見つめた。
だんだんと広がっていく宗一郎と自分の距離。
遠くなる宗一郎の背中が強く自分の存在を拒絶しているように感じて、伊織は追いかけることができずにいた。
振り返りもしない宗一郎。
伊織の視界がじんわりと滲む。
(初デートだったのに、無神経なこと言って嫌われちゃったかも……)
せっかく今まで楽しくデートしてたのに。
急に止まった伊織に、後ろを歩いていた人が対処できなかったのか背中に衝撃を感じた。
伊織は一瞬だけそこに力を込めた。
すると、うん? と優しい笑顔で顔を向けてくれる宗一郎。
そんななんでもないことで、伊織の胸が苦しいくらいにきゅっとなる。
「宗くん、好き!」
思わず堪えきれなくなって伊織は隣りを歩く宗一郎の腰に抱きついた。
「わっ。どしたの急に?」
不意打ちに少しバランスを崩しながらも、しっかり伊織の体を支えてくれる宗一郎。
ハッと我に返って伊織は慌てて宗一郎から離れた。
ここは公道で、まわりに人もいる。しまった、とんでもない失態だ。
「ご、ごめん。ちょっと何かがわからなくなった……!」
「はは、なにそれ? まあ、嬉しいからいいけど。なんなら抱っこして展望台まで行ってあげようか?」
冗談とも本気ともつかない調子で宗一郎はそう言うと悪戯に口の端を持ち上げた。
伊織は慌てて首を振る。
「いやいやいや! 結構です」
「そっか。残念だな」
「残念て!」
「はは、冗談だよ」
「……宗くんの冗談、わかりにくい」
「そう? いつでも半分本気だからかな」
「!?」
「はは、冗談だって。伊織が単純すぎるんだよ。ほんとかわいいなぁもう」
宗一郎の大きな手が伸びてきて伊織の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「あー、ここが人通りなかったらキスしちゃうのにな」
「ちょ、宗くん!」
「人通りがあってもいい?」
「な、ダメに決まってるでしょ! もう、そんなこと言い出すなんてまるで彰さんみたい」
「……へえ。伊織、仙道にそんなこと言われたことあるんだ」
急に隣りを歩く宗一郎の温度がすっと冷えた。
伊織は自分の失言に気付いて青ざめる。
「ない! ないです! わたしの勝手なイメージっていうか……!」
「ふうん。まあどっちでも俺には関係ないけどね」
「そ、宗くん……」
そのさらりとした冷たい声音に、伊織の心臓が凍りついた。
どうしよう。確実に怒っている。
伊織が宗一郎の顔を横から見上げても、宗一郎は気付かないフリをして頑なに前を向き続けていた。
しばらく二人は無言のまま歩いた。
江ノ島へ続く橋を渡り終えて、お店が立ち並ぶ場所に来ても宗一郎は黙ったままだった。
途方に暮れて伊織が眉根を下げたとき、宗一郎の手が伊織の手からするりと離れた。
「!」
そのまま宗一郎は何事もなかったかのように早足で歩いて行ってしまう。
(今日は手を繋いだままって言ってたのに……)
伊織は思わず立ち止まって、宗一郎の背中を見つめた。
だんだんと広がっていく宗一郎と自分の距離。
遠くなる宗一郎の背中が強く自分の存在を拒絶しているように感じて、伊織は追いかけることができずにいた。
振り返りもしない宗一郎。
伊織の視界がじんわりと滲む。
(初デートだったのに、無神経なこと言って嫌われちゃったかも……)
せっかく今まで楽しくデートしてたのに。
急に止まった伊織に、後ろを歩いていた人が対処できなかったのか背中に衝撃を感じた。