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「うん」
時折しゃくりあげながら、それでもまりあは必死に言葉を紡ぐ。
「大丈夫。ノブくんにもまりあがいるよ。ノブくんが辛いときは、まりあが駆けつけてあげる。ほんとうだったら時給が発生するんだけど、しょうがないから無償でノブくんのそばにいてあげる。超絶美少女のまりあが、貴重な時間を割いて助けてあげるんだから、早く立ち直りなさいよねええ!?」
「はは、うん。ありがとう、まりあちゃん……!」
上空で月が青く輝いている。
二人はそんな月に優しく見守られながら、涙が枯れるまで泣き続けた。
伊織はさっきからずっと止まらない涙を拭いながら、とぼとぼと海南大附属高校へと歩いていた。
仙道と海へ行く前、ケータイに信長からメールが届いていた。
それによると伊織の荷物は高校の体育館にあるらしい。
伊織はいま、仙道と別れてそれを取りに戻っていた。
頬を濡らす涙は一向に止まる気配を見せない。
胸は心臓が鼓動するたびにずきずきと痛んだ。
ときどき嗚咽をもらしながら大粒の涙を零して歩く伊織の姿に、道行く人々がぎょっとして振り返ったが、そんなのどうでもよかった。
仙道の泣き顔が頭を離れない。
仙道の震える声が伊織の耳から離れない。
伊織の頭を走馬灯のように仙道との思い出が駆け巡った。
いつもそばにいて笑いかけてくれた仙道。
不安なときはすぐに駆けつけてくれた仙道。
楽しいことや嬉しいことはもちろん、辛いことも苦しいことも悲しいこともすべて分かち合ってきた仙道。
そんな仙道を、伊織は最初から最後まで自分の都合で振りまわすだけ振りまわして終わってしまった。
仙道からはこんなにもたくさんのものをもらったのに。
何一つ、返すことができなかった。
(彰さん……!)
視界が霞んでもうなにも見えなかった。
崩れ落ちそうになる体になんとか力を入れて必死に踏ん張りながら、伊織は歩いた。
近づいてきた校門をくぐって、体育館へと足を進める。
体育館は電気がついていた。
中からはボールをつく音が聞こえてくる。
(誰だろう……)
こんな状態を人に見られたくはなかった。
伊織は中の人に気付かれないように、体育館のドアからそっとそこを覗き込んだ。
その先で一人、ボールをつく人物。
涙でぼんやりした視界でそれが誰だか認識すると、伊織は弾かれたようにその身を体育館の中へ滑り込ませた。
そのままこちらに背を向けているその人物の腰にすがりつく。
「わっ!?」
「宗先輩っ!」
「伊織ちゃん!?」
ひとり練習をしていた人物――宗一郎は、自分の腰にすがりついているのが伊織なのを首をめぐらせて確認すると、伊織と向かいあうように体を反転させた。
伊織は宗一郎に顔を見られたくなくて、両手で覆うようにしてそれを隠す。
きっといま自分は目も腫れて鼻も真っ赤で醜い顔をしているに違いない。
だけど涙はとまらない。どうしようもない。
「伊織ちゃん……」
二人きりの体育館で、伊織のすすり泣く声と宗一郎の心配そうにかけられた声だけが響く。
時折しゃくりあげながら、それでもまりあは必死に言葉を紡ぐ。
「大丈夫。ノブくんにもまりあがいるよ。ノブくんが辛いときは、まりあが駆けつけてあげる。ほんとうだったら時給が発生するんだけど、しょうがないから無償でノブくんのそばにいてあげる。超絶美少女のまりあが、貴重な時間を割いて助けてあげるんだから、早く立ち直りなさいよねええ!?」
「はは、うん。ありがとう、まりあちゃん……!」
上空で月が青く輝いている。
二人はそんな月に優しく見守られながら、涙が枯れるまで泣き続けた。
伊織はさっきからずっと止まらない涙を拭いながら、とぼとぼと海南大附属高校へと歩いていた。
仙道と海へ行く前、ケータイに信長からメールが届いていた。
それによると伊織の荷物は高校の体育館にあるらしい。
伊織はいま、仙道と別れてそれを取りに戻っていた。
頬を濡らす涙は一向に止まる気配を見せない。
胸は心臓が鼓動するたびにずきずきと痛んだ。
ときどき嗚咽をもらしながら大粒の涙を零して歩く伊織の姿に、道行く人々がぎょっとして振り返ったが、そんなのどうでもよかった。
仙道の泣き顔が頭を離れない。
仙道の震える声が伊織の耳から離れない。
伊織の頭を走馬灯のように仙道との思い出が駆け巡った。
いつもそばにいて笑いかけてくれた仙道。
不安なときはすぐに駆けつけてくれた仙道。
楽しいことや嬉しいことはもちろん、辛いことも苦しいことも悲しいこともすべて分かち合ってきた仙道。
そんな仙道を、伊織は最初から最後まで自分の都合で振りまわすだけ振りまわして終わってしまった。
仙道からはこんなにもたくさんのものをもらったのに。
何一つ、返すことができなかった。
(彰さん……!)
視界が霞んでもうなにも見えなかった。
崩れ落ちそうになる体になんとか力を入れて必死に踏ん張りながら、伊織は歩いた。
近づいてきた校門をくぐって、体育館へと足を進める。
体育館は電気がついていた。
中からはボールをつく音が聞こえてくる。
(誰だろう……)
こんな状態を人に見られたくはなかった。
伊織は中の人に気付かれないように、体育館のドアからそっとそこを覗き込んだ。
その先で一人、ボールをつく人物。
涙でぼんやりした視界でそれが誰だか認識すると、伊織は弾かれたようにその身を体育館の中へ滑り込ませた。
そのままこちらに背を向けているその人物の腰にすがりつく。
「わっ!?」
「宗先輩っ!」
「伊織ちゃん!?」
ひとり練習をしていた人物――宗一郎は、自分の腰にすがりついているのが伊織なのを首をめぐらせて確認すると、伊織と向かいあうように体を反転させた。
伊織は宗一郎に顔を見られたくなくて、両手で覆うようにしてそれを隠す。
きっといま自分は目も腫れて鼻も真っ赤で醜い顔をしているに違いない。
だけど涙はとまらない。どうしようもない。
「伊織ちゃん……」
二人きりの体育館で、伊織のすすり泣く声と宗一郎の心配そうにかけられた声だけが響く。