18
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
苦しそうに伊織の瞳が細められた。
その拍子に伊織の瞳から透明な涙が零れ落ちる。
こんなときでも、そんな伊織を綺麗だなんて思う自分に、仙道は胸が苦しくなった。
もう届かないのに。どんなに欲しても手に入らないのに。
自分は今、それを実感と共にはっきり確信してしまったのに。
「ねえ、伊織ちゃん。オレ、どうしてあの時伊織ちゃんに付き合おうって言わなかったんだろうとか、どうしてあの時伊織ちゃんちのチャイムを押さなかったんだろうとか、後悔してることいっぱいあるよ。けど、伊織ちゃんと出会ったこと、後悔してない。こうして再会して、また前みたいに話せるようになったことも、後悔してない」
「わ、わたしも、嬉しかったです。彰さんとまた話せるようになったこと。彰さんが、約束を守れなかったわたしに笑顔を向けてくれて、逃げるわたしに立ち向かう勇気をくれて、そばでいつも力をくれて……! それなのに……それなのにわたし……っ!」
目の前の伊織が両手で顔を覆ってむせび泣く。
「彰さん、ごめんなさい。わたし、ひとりで勝手に彰さんを諦めて……彰さんのこと置き去りにして……ごめんなさい……!」
「伊織ちゃん。伊織ちゃんのせいじゃないんだ。オレが弱かったから。それが一番大きな原因なんだ」
「違う! わたし、わたしが……!」
伊織が大きく首を振った。
仙道の心がぎゅうっと締め付けられる。
ずっと、こうやって彼女も苦しんできたんだろうか。
約束に破れて。ケガをして何もかも失って。そんな中で自分に会いたがる気持ちを抑えて。もう諦めなくちゃいけないのだと言い聞かせて。
何度も何度もくじけそうになる心を叱咤しながら。それでもなお、伸ばしたがる手を必死で我慢して。
そうしてやっと諦めたのに。
そんなときに自分が目の前に現れたときの伊織の絶望は、どんなものだっただろう。
必死で諦めた仙道が、まだ自分のことが好きだと気付いたときの絶望は、どんなものだっただろう。
あの時は想像することしかできなかった伊織の気持ちが、今は実感をともなって理解することができる。
こんな苦しい気持ちを、自分は伊織にずっと強要していた。
伊織はそれに最後までこうやって向き合ってくれている。
すぐそばにある自分の幸せを見送ってまで。
(もう、解放してやらなくちゃ)
「神と、うまくいくように……応援、してる」
仙道は何度もつかえそうになりながら、なんとかその言葉を押し出した。
「彰さん……!」
伊織の瞳からさらに涙が溢れ出す。
仙道は自分の瞳からも涙が零れ続けていることを自覚しながら、伊織の頬に手を伸ばした。
とめどなく流れる伊織の涙を、仙道は優しく拭う。
「でも、ツライこととか、苦しいことがあったら、いつでもオレを思い出して。オレは、いつだって伊織ちゃんの力になるから……」
「――はい」
「神に泣かされたら、絶対に教えて。オレ、そのときは神を殴りに行くから。……それくらいはさせて」
「はい。じゃあ、そのときは……彰さんに、お願いします」
涙を堪えてにこりと笑う伊織を、仙道はもう一度抱きしめた。
その存在を確かめるように、腕の力を強めたり弱めたりして伊織の感触を体に刻み込む。
もうこの腕に伊織を抱くことはない。これがきっと最後になる。
「……っ、伊織ちゃん!」
思うとたまらなかった。
最後だなんて信じたくなかった。
仙道は強く伊織を抱きしめる。
香る、伊織の甘い匂い。柔らかな肌の感触。
手放したくなんてない。気持ちが届かなかったとしても、それでも。
諦めることなんてできない。
だけど、もうこれ以上キミを縛りたくもない。
これ以上キミを苦しめることはできないから。
だから。
その拍子に伊織の瞳から透明な涙が零れ落ちる。
こんなときでも、そんな伊織を綺麗だなんて思う自分に、仙道は胸が苦しくなった。
もう届かないのに。どんなに欲しても手に入らないのに。
自分は今、それを実感と共にはっきり確信してしまったのに。
「ねえ、伊織ちゃん。オレ、どうしてあの時伊織ちゃんに付き合おうって言わなかったんだろうとか、どうしてあの時伊織ちゃんちのチャイムを押さなかったんだろうとか、後悔してることいっぱいあるよ。けど、伊織ちゃんと出会ったこと、後悔してない。こうして再会して、また前みたいに話せるようになったことも、後悔してない」
「わ、わたしも、嬉しかったです。彰さんとまた話せるようになったこと。彰さんが、約束を守れなかったわたしに笑顔を向けてくれて、逃げるわたしに立ち向かう勇気をくれて、そばでいつも力をくれて……! それなのに……それなのにわたし……っ!」
目の前の伊織が両手で顔を覆ってむせび泣く。
「彰さん、ごめんなさい。わたし、ひとりで勝手に彰さんを諦めて……彰さんのこと置き去りにして……ごめんなさい……!」
「伊織ちゃん。伊織ちゃんのせいじゃないんだ。オレが弱かったから。それが一番大きな原因なんだ」
「違う! わたし、わたしが……!」
伊織が大きく首を振った。
仙道の心がぎゅうっと締め付けられる。
ずっと、こうやって彼女も苦しんできたんだろうか。
約束に破れて。ケガをして何もかも失って。そんな中で自分に会いたがる気持ちを抑えて。もう諦めなくちゃいけないのだと言い聞かせて。
何度も何度もくじけそうになる心を叱咤しながら。それでもなお、伸ばしたがる手を必死で我慢して。
そうしてやっと諦めたのに。
そんなときに自分が目の前に現れたときの伊織の絶望は、どんなものだっただろう。
必死で諦めた仙道が、まだ自分のことが好きだと気付いたときの絶望は、どんなものだっただろう。
あの時は想像することしかできなかった伊織の気持ちが、今は実感をともなって理解することができる。
こんな苦しい気持ちを、自分は伊織にずっと強要していた。
伊織はそれに最後までこうやって向き合ってくれている。
すぐそばにある自分の幸せを見送ってまで。
(もう、解放してやらなくちゃ)
「神と、うまくいくように……応援、してる」
仙道は何度もつかえそうになりながら、なんとかその言葉を押し出した。
「彰さん……!」
伊織の瞳からさらに涙が溢れ出す。
仙道は自分の瞳からも涙が零れ続けていることを自覚しながら、伊織の頬に手を伸ばした。
とめどなく流れる伊織の涙を、仙道は優しく拭う。
「でも、ツライこととか、苦しいことがあったら、いつでもオレを思い出して。オレは、いつだって伊織ちゃんの力になるから……」
「――はい」
「神に泣かされたら、絶対に教えて。オレ、そのときは神を殴りに行くから。……それくらいはさせて」
「はい。じゃあ、そのときは……彰さんに、お願いします」
涙を堪えてにこりと笑う伊織を、仙道はもう一度抱きしめた。
その存在を確かめるように、腕の力を強めたり弱めたりして伊織の感触を体に刻み込む。
もうこの腕に伊織を抱くことはない。これがきっと最後になる。
「……っ、伊織ちゃん!」
思うとたまらなかった。
最後だなんて信じたくなかった。
仙道は強く伊織を抱きしめる。
香る、伊織の甘い匂い。柔らかな肌の感触。
手放したくなんてない。気持ちが届かなかったとしても、それでも。
諦めることなんてできない。
だけど、もうこれ以上キミを縛りたくもない。
これ以上キミを苦しめることはできないから。
だから。