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夢小説設定
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「伊織ちゃんに風邪引かせたら、神に殺されちゃうな、オレ」
「大丈夫ですよ。わたし、こんなことで風邪引いたりなんてしませんから」
「はは、そうかな」
仙道は伊織の頬に片手を添えると、じっとその顔を見つめた。
中学の時にくらべてすっかり白くなった肌も、一点の曇りもなく澄んだその瞳も、小さな鼻も、桜色の唇も、すべらかな頬も、艶めく髪も、すべて。伊織を構成しているものの全てが愛しくてたまらなかった。
髪に触れる。
月の輝きを受けて、さらさらと手の間を滑り落ちる伊織の髪。
胸が詰まる。
自分がどれだけ伊織のことが好きなのか、最後のこのときになってまだ思い知るなんて。
仙道の視界が再び揺らめいた。
「彰さん……」
伊織の気遣うような声に仙道はきつく瞳を閉じて、涙がこぼれるのを防いだ。
その波を追いやると、ゆっくりと目を開けて伊織に微笑む。
「大丈夫」
そっと伊織の手が仙道の頬に伸ばされる。
「がまん、しなくてもいいんですよ? 思いっきり泣いたほうがすっきりしますから」
「うん……。でも伊織ちゃん、今は聞いて」
仙道は自分の頬に触れる伊織の手に、そっと自分の手を重ねた。
身も心も引き裂かれてしまいそうだった。
本当に執着したものを諦めるのは、こんなにも苦しく辛いものなんだろうか。
裂けるような胸の痛みを堪えるように、仙道は唇を持ち上げる。
「本当は、インターハイが決定したら、伊織ちゃんにもう一回ちゃんと交際を申し込むつもりだったんだ。断られるのはわかってるけど、でもそれでちゃんと終わらせたかった。……だけど、それもダメになっちゃったな」
「彰さん……!」
自嘲気味に呟く仙道に、伊織が瞳に涙を浮かべる。
仙道はそんな伊織を本当に心の底から愛しく思った。
でももう届かない。
「伊織ちゃん。オレ、少しわかったような気がする」
「え?」
「テニスを失ったときの、伊織ちゃんの気持ち」
「!」
伊織の瞳が小さく見開かれた。
仙道は、伊織の頬骨のあたりを慈しむようにそっと親指の腹で撫でる。
「もちろん、伊織ちゃんの苦しみは今のオレの苦しみなんかより何倍も何倍もツライことだっていうのはわかってるよ。オレはただ負けただけで、バスケを奪われたわけじゃない。それに、オレには来年もある」
「はい」
「だけど、このチームで……」
胸が軋んで、言葉が詰まった。
再び仙道の視界が滲む。
「魚住さんや池上さんたちとプレイすることは、もう永遠にできないんだ……!」
「――はい」
目の前の伊織の瞳にも涙がたまっていく。
「伊織ちゃんは、この何倍もの苦しみや絶望と、ひとりで戦ってきたんだな……」
仙道の瞳から涙がこぼれた。
「彰さん……」
「伊織ちゃんは、こんな気持ちをひとりで抱えて、こんな気持ちと共に、オレを諦めたんだな。――はは。そんなの、取り戻せるわけないよな。こんな苦しい思いを経て、よっぽどの覚悟で諦めたものに、もう一度手を伸ばすなんて……もう、出来るワケないんだ……!」
「彰さん……!」
「大丈夫ですよ。わたし、こんなことで風邪引いたりなんてしませんから」
「はは、そうかな」
仙道は伊織の頬に片手を添えると、じっとその顔を見つめた。
中学の時にくらべてすっかり白くなった肌も、一点の曇りもなく澄んだその瞳も、小さな鼻も、桜色の唇も、すべらかな頬も、艶めく髪も、すべて。伊織を構成しているものの全てが愛しくてたまらなかった。
髪に触れる。
月の輝きを受けて、さらさらと手の間を滑り落ちる伊織の髪。
胸が詰まる。
自分がどれだけ伊織のことが好きなのか、最後のこのときになってまだ思い知るなんて。
仙道の視界が再び揺らめいた。
「彰さん……」
伊織の気遣うような声に仙道はきつく瞳を閉じて、涙がこぼれるのを防いだ。
その波を追いやると、ゆっくりと目を開けて伊織に微笑む。
「大丈夫」
そっと伊織の手が仙道の頬に伸ばされる。
「がまん、しなくてもいいんですよ? 思いっきり泣いたほうがすっきりしますから」
「うん……。でも伊織ちゃん、今は聞いて」
仙道は自分の頬に触れる伊織の手に、そっと自分の手を重ねた。
身も心も引き裂かれてしまいそうだった。
本当に執着したものを諦めるのは、こんなにも苦しく辛いものなんだろうか。
裂けるような胸の痛みを堪えるように、仙道は唇を持ち上げる。
「本当は、インターハイが決定したら、伊織ちゃんにもう一回ちゃんと交際を申し込むつもりだったんだ。断られるのはわかってるけど、でもそれでちゃんと終わらせたかった。……だけど、それもダメになっちゃったな」
「彰さん……!」
自嘲気味に呟く仙道に、伊織が瞳に涙を浮かべる。
仙道はそんな伊織を本当に心の底から愛しく思った。
でももう届かない。
「伊織ちゃん。オレ、少しわかったような気がする」
「え?」
「テニスを失ったときの、伊織ちゃんの気持ち」
「!」
伊織の瞳が小さく見開かれた。
仙道は、伊織の頬骨のあたりを慈しむようにそっと親指の腹で撫でる。
「もちろん、伊織ちゃんの苦しみは今のオレの苦しみなんかより何倍も何倍もツライことだっていうのはわかってるよ。オレはただ負けただけで、バスケを奪われたわけじゃない。それに、オレには来年もある」
「はい」
「だけど、このチームで……」
胸が軋んで、言葉が詰まった。
再び仙道の視界が滲む。
「魚住さんや池上さんたちとプレイすることは、もう永遠にできないんだ……!」
「――はい」
目の前の伊織の瞳にも涙がたまっていく。
「伊織ちゃんは、この何倍もの苦しみや絶望と、ひとりで戦ってきたんだな……」
仙道の瞳から涙がこぼれた。
「彰さん……」
「伊織ちゃんは、こんな気持ちをひとりで抱えて、こんな気持ちと共に、オレを諦めたんだな。――はは。そんなの、取り戻せるわけないよな。こんな苦しい思いを経て、よっぽどの覚悟で諦めたものに、もう一度手を伸ばすなんて……もう、出来るワケないんだ……!」
「彰さん……!」