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夢小説設定
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「あはは、なにそれ残念会? その割りにはずいぶん明るいね」
「暗いって。オレ、ダメージでかいもん」
「……遅くなるかもよ?」
「いいぜ、待ってる。終わったらケータイに連絡しろよ。ショックで動けそうにもなかったら近くまで迎えに行ってやるからさ」
「五時間くらいかかるかも」
「五時間!? あー、まあ、いいぜ。オレの涙もそれぐらいあれば枯れるだろ。そしたら少しはまりあちゃんの話聞いてやれっかもしれねえしな」
「ええ、待ってる間泣くつもりなの!?」
「当たり前だろ! むしろまりあちゃんが来てからも泣くつもりだぜ!? オレだってツライんだって言ってるだろ!」
「やだなぁ、もう。合流したときにお岩さんみたいな顔でまりあのこと迎えないでよ?」
「自分はもうはれぼったい目のくせしてよく言うぜ」
言いながら信長がまりあの腫れたまぶたにそっと触れた。
その優しいぬくもりにまりあの胸がどきんと跳ねる。
「まりあちゃん」
信長の声音が、今までと違って真剣なものに変わった。
まりあは胸を落ち着かなくさせながら信長を見た。
「なに?」
「オレ、バカだからうまくいえないけど……まりあちゃんはひとりじゃないから、さ。オレが近くで待ってるから。だからがんばれよ?」
信長のその言葉に、まりあは目を瞠った。
全てが終わったあとに泣く場所が用意されている。そこで待ってくれているひとがいる。たったそれだけのことで、一気に心強くなった。
受け入れがたい現実に逃げ出しそうだった心が前を向く力を持つ。
勇気付けるように微笑む信長の笑顔に、まりあの胸がぎゅっとなってそこからなにか熱いものが込みあげてきた。
まりあは慌てて顔を伏せる。
「……もう! ノブくん泣かせないでよ!」
「……おう」
信長の手が、もう一度まりあの頭を乱暴に撫でた。
まりあはその大きな手の影に、一滴だけ頬を伝った涙を隠した。
潮風が伊織の頬を優しく撫でた。
伊織は今、仙道と海に来ていた。
穴場スポットだからなのか、夕闇が迫る時間帯だからなのか、海には伊織と仙道以外の人影がなかった。
仙道は伊織のちょっと前で、波打ち際を静かに歩いている。
伊織はその背中を少し離れたところで見つめていた。
海南の控え室を出た伊織は、自動販売機横でポカリを飲んでいた仙道を見つけた。
伊織が声をかけると、仙道は「海へ行こうか」とそれだけ言って歩きだした。
その途中、仙道は陵南の部員のひとりに電話をかけて抜ける事を伝えた。それからいままで、仙道は一言も発していない。
伊織もそんな仙道に声をかけることはしなかった。
言葉なんかなくっても、仙道の痛みが伝わってきて、どうしようもなかった。
伊織の少し先を行く仙道の大きな背中。
その背中にふいに夕日がかかって、伊織の胸が突然言いようのない不安にとらわれた。
「彰さん!」
仙道がそのまま儚く消えてしまう気がして、伊織は無意識にその名前を呼ぶ。
びくりと仙道の肩が大きく震え、立ち止まった。
伊織に背を向けたまま、仙道の肩が大きく息を吸い込むように上下する。
「伊織ちゃんに、かっこ悪いトコ見せちゃったな」
「暗いって。オレ、ダメージでかいもん」
「……遅くなるかもよ?」
「いいぜ、待ってる。終わったらケータイに連絡しろよ。ショックで動けそうにもなかったら近くまで迎えに行ってやるからさ」
「五時間くらいかかるかも」
「五時間!? あー、まあ、いいぜ。オレの涙もそれぐらいあれば枯れるだろ。そしたら少しはまりあちゃんの話聞いてやれっかもしれねえしな」
「ええ、待ってる間泣くつもりなの!?」
「当たり前だろ! むしろまりあちゃんが来てからも泣くつもりだぜ!? オレだってツライんだって言ってるだろ!」
「やだなぁ、もう。合流したときにお岩さんみたいな顔でまりあのこと迎えないでよ?」
「自分はもうはれぼったい目のくせしてよく言うぜ」
言いながら信長がまりあの腫れたまぶたにそっと触れた。
その優しいぬくもりにまりあの胸がどきんと跳ねる。
「まりあちゃん」
信長の声音が、今までと違って真剣なものに変わった。
まりあは胸を落ち着かなくさせながら信長を見た。
「なに?」
「オレ、バカだからうまくいえないけど……まりあちゃんはひとりじゃないから、さ。オレが近くで待ってるから。だからがんばれよ?」
信長のその言葉に、まりあは目を瞠った。
全てが終わったあとに泣く場所が用意されている。そこで待ってくれているひとがいる。たったそれだけのことで、一気に心強くなった。
受け入れがたい現実に逃げ出しそうだった心が前を向く力を持つ。
勇気付けるように微笑む信長の笑顔に、まりあの胸がぎゅっとなってそこからなにか熱いものが込みあげてきた。
まりあは慌てて顔を伏せる。
「……もう! ノブくん泣かせないでよ!」
「……おう」
信長の手が、もう一度まりあの頭を乱暴に撫でた。
まりあはその大きな手の影に、一滴だけ頬を伝った涙を隠した。
潮風が伊織の頬を優しく撫でた。
伊織は今、仙道と海に来ていた。
穴場スポットだからなのか、夕闇が迫る時間帯だからなのか、海には伊織と仙道以外の人影がなかった。
仙道は伊織のちょっと前で、波打ち際を静かに歩いている。
伊織はその背中を少し離れたところで見つめていた。
海南の控え室を出た伊織は、自動販売機横でポカリを飲んでいた仙道を見つけた。
伊織が声をかけると、仙道は「海へ行こうか」とそれだけ言って歩きだした。
その途中、仙道は陵南の部員のひとりに電話をかけて抜ける事を伝えた。それからいままで、仙道は一言も発していない。
伊織もそんな仙道に声をかけることはしなかった。
言葉なんかなくっても、仙道の痛みが伝わってきて、どうしようもなかった。
伊織の少し先を行く仙道の大きな背中。
その背中にふいに夕日がかかって、伊織の胸が突然言いようのない不安にとらわれた。
「彰さん!」
仙道がそのまま儚く消えてしまう気がして、伊織は無意識にその名前を呼ぶ。
びくりと仙道の肩が大きく震え、立ち止まった。
伊織に背を向けたまま、仙道の肩が大きく息を吸い込むように上下する。
「伊織ちゃんに、かっこ悪いトコ見せちゃったな」