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夢小説設定
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自分を呼ぶ声が聞こえた。
振り返ろうとした伊織の視界が、小さな衝撃とともに突然真っ暗に染まる。
ついで鼻腔をくすぐる懐かしい香り。
仙道だ。
「あ、彰さん……!?」
名前を呼ぶと強まる自分を捕らえる腕の力。
「よかった……会えた……!」
選手専用通路なので人はあまりいないとはいえ、いつだれがここを通るかわからない。
さらに少し先には海南の部員たちがいて、当然そこには宗一郎もいる。万が一宗一郎が振り返りでもしたら、仙道に抱きしめられているのを見られてしまう。
(そ、それはマズイ……!)
恥ずかしさ、驚き、混乱。いろんな感情がないまぜになって、伊織は仙道の体を強く押し返す。
「あ、彰さん!? は、離してくださ……!」
「伊織ちゃん、この前はひどいこと言ってごめんね。伊織ちゃんのおかげで目が覚めた。ありがとう」
自分を抱きしめる仙道の体。それが小さく震えていた。
伊織はそれに気付くと、抵抗する力を緩めた。
再び仙道が耳元で囁く。
「お守り、持ってる。大事にしてるから。この前は投げたりしてごめん」
「彰さん……」
「伊織ちゃん。オレ、今日がんばるから。少しだけでもいいから応援してて」
震える声とともに吐き出されたその言葉に伊織は表情を柔らかくした。
仙道の感じているプレッシャーが触れ合う肌を通して伝わってきて、少しでもそれが和らぐようにと伊織は仙道の背中を優しく撫でる。
「当たり前じゃないですか。わたしはいつだって仙道彰を応援してますよ? だから、肩の力を抜いて、ちゃんとリラックスして頑張ってください。ね?」
「うん……」
仙道の腕の力が再び強まった。
仙道が落ち着くまで。伊織はそう思ってしばらくされるがままになっていたが、いつまで経っても仙道の腕の力が一向に弱まる気配がない。
伊織の心がだんだんと落ち着かなくなった。
幸い今は人気がないが、またいつ誰がここを通るかもわからない。
できれば人には見られたくなかった。
伊織は恐る恐る仙道に呼びかける。
「彰さん?」
「うん?」
「あの、落ち着きました?」
「……まだ」
仙道は名残を惜しむようにそう言って、さらに腕の力を強めてくる。
伊織は困って眉を下げた。
「彰さん。あの、だ、誰か来ちゃいますよ?」
「うん……」
「し、試合が……」
「まだ時間平気だよ」
「あの、でも……」
「うん」
再び強まる腕の力。