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伊織はしょんぼりと下げられた仙道の頭を見つめて思った。
自分にこんなこと言う資格がないのなんて充分わかってる。
仙道彰をここまで追い詰めてるのは他ならない自分。
自分の身勝手さに吐き気がした。胸が詰まってなんだか泣き出したい気分だ。
でもだからこそ、気付かせたかった。
取り返しがつかなくなる前に。
「……彰さん、このチームが好きなんでしょ? 当たり前だけど、このチームでプレイできるのは今年だけなんですよ? わたしにとらわれて、まわりが見えなくなってるのはどっちなんですか。そんなんで後悔しない試合ができるんですか? わたしの……、わたしの二の舞になってもいいんですか?」
「伊織ちゃん……」
仙道が弾かれたように顔をあげて伊織を見た。
伊織は泣きそうになる自分を叱咤して、必死に微笑を浮かべる。
「しっかりしてください、彰さん。陵南のエースなんでしょう? エースがそんなんでどうするんですか。わたしのことはとりあえず置いておいて、ちゃんとバスケに集中してください。仙道彰なら、それができるはずです。……まあ、今日勝つのはうちの先輩たちですけど」
「伊織ちゃん」
「話はそれだけです」
何か言いかけた仙道を遮るように伊織は言った。
仙道が次の言葉を紡ぎだす前に、陵南の面々に視線を移してぺこりと頭を下げる。
「試合前の大事な時間にお騒がせしてすみませんでした。それじゃあ、失礼します」
矢継ぎ早にそれだけ言うと、伊織は一目散にその場所を駆け出した。
後ろから仙道が追いかけてくる気配がないことに、伊織はホッと息をつく。
その拍子に堪えていた涙が堰を切ったように溢れ出した。
身勝手な自分。仙道がたとえ全国の切符を手に入れて、自分に改めて告白をしてきたとしても、もう受け入れることなんかできないくせに。
それなのにあんなことを臆面もなく言い放てる自分に心底嫌気が差した。
でもそれでも、仙道に後悔をして欲しくなかった。
バスケを失わなかったとしても、高校二年生の貴重な一年間、三年の先輩たちの引退のかかった大事な試合に集中して臨めなかったという記憶は、苦いかたちできっと一生残ってしまう。
そんなの嫌だった。
せめてバスケだけは、悔いのないようにしっかりやり遂げて欲しかった。
伊織は自動販売機の立ち並ぶ細い廊下のさらに奥、関係者入り口へと続く人気のない廊下でひとりうずくまった。
「ごめんなさい、彰さん……! ごめんなさい……!」
謝ることしか出来ない、それさえも空々しく響く、そんな自分が心底嫌だった。
「…………」
仙道は控え室のドアに手をかけて、駆けていく伊織の背中を黙って見送った。
「追いかけなくていいのか?」
いつのまに隣りに来たのか、越野が言った。
仙道はそれに小さく首を振る。
いま伊織はそんなことは望まないだろう。
仙道にはそれがわかった。
「いい。多分いま追いかけたら、ちゃんと集中しろって怒られる」
「ふうん。……あれが、仙道彰の伊織ちゃん? あんな性格だったんだな」
「そう。かっこいいでしょ?」
「そうだな。お前が本気になるだけはあるかもな」
「あの子、オレたちが言いたくて言えなかったこと、思いっきり指摘していったな」
横から魚住も口をはさんだ。
仙道がそれに申し訳なさそうに眉を下げて笑う。
「はは、魚住さんもオレの一人相撲だって思ってました?」
「そこまでは思ってはないが、まあ、ひどく焦って周りが見えていないとは感じてたな。今日のポイントガード起用をどうしようかと監督と話していたところだったんだ」
自分にこんなこと言う資格がないのなんて充分わかってる。
仙道彰をここまで追い詰めてるのは他ならない自分。
自分の身勝手さに吐き気がした。胸が詰まってなんだか泣き出したい気分だ。
でもだからこそ、気付かせたかった。
取り返しがつかなくなる前に。
「……彰さん、このチームが好きなんでしょ? 当たり前だけど、このチームでプレイできるのは今年だけなんですよ? わたしにとらわれて、まわりが見えなくなってるのはどっちなんですか。そんなんで後悔しない試合ができるんですか? わたしの……、わたしの二の舞になってもいいんですか?」
「伊織ちゃん……」
仙道が弾かれたように顔をあげて伊織を見た。
伊織は泣きそうになる自分を叱咤して、必死に微笑を浮かべる。
「しっかりしてください、彰さん。陵南のエースなんでしょう? エースがそんなんでどうするんですか。わたしのことはとりあえず置いておいて、ちゃんとバスケに集中してください。仙道彰なら、それができるはずです。……まあ、今日勝つのはうちの先輩たちですけど」
「伊織ちゃん」
「話はそれだけです」
何か言いかけた仙道を遮るように伊織は言った。
仙道が次の言葉を紡ぎだす前に、陵南の面々に視線を移してぺこりと頭を下げる。
「試合前の大事な時間にお騒がせしてすみませんでした。それじゃあ、失礼します」
矢継ぎ早にそれだけ言うと、伊織は一目散にその場所を駆け出した。
後ろから仙道が追いかけてくる気配がないことに、伊織はホッと息をつく。
その拍子に堪えていた涙が堰を切ったように溢れ出した。
身勝手な自分。仙道がたとえ全国の切符を手に入れて、自分に改めて告白をしてきたとしても、もう受け入れることなんかできないくせに。
それなのにあんなことを臆面もなく言い放てる自分に心底嫌気が差した。
でもそれでも、仙道に後悔をして欲しくなかった。
バスケを失わなかったとしても、高校二年生の貴重な一年間、三年の先輩たちの引退のかかった大事な試合に集中して臨めなかったという記憶は、苦いかたちできっと一生残ってしまう。
そんなの嫌だった。
せめてバスケだけは、悔いのないようにしっかりやり遂げて欲しかった。
伊織は自動販売機の立ち並ぶ細い廊下のさらに奥、関係者入り口へと続く人気のない廊下でひとりうずくまった。
「ごめんなさい、彰さん……! ごめんなさい……!」
謝ることしか出来ない、それさえも空々しく響く、そんな自分が心底嫌だった。
「…………」
仙道は控え室のドアに手をかけて、駆けていく伊織の背中を黙って見送った。
「追いかけなくていいのか?」
いつのまに隣りに来たのか、越野が言った。
仙道はそれに小さく首を振る。
いま伊織はそんなことは望まないだろう。
仙道にはそれがわかった。
「いい。多分いま追いかけたら、ちゃんと集中しろって怒られる」
「ふうん。……あれが、仙道彰の伊織ちゃん? あんな性格だったんだな」
「そう。かっこいいでしょ?」
「そうだな。お前が本気になるだけはあるかもな」
「あの子、オレたちが言いたくて言えなかったこと、思いっきり指摘していったな」
横から魚住も口をはさんだ。
仙道がそれに申し訳なさそうに眉を下げて笑う。
「はは、魚住さんもオレの一人相撲だって思ってました?」
「そこまでは思ってはないが、まあ、ひどく焦って周りが見えていないとは感じてたな。今日のポイントガード起用をどうしようかと監督と話していたところだったんだ」