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「甘ったれたこと……」
言葉と同時に、仙道の頬に平手を喰らわせる。
「言うなぁっ!」
ばちんと硬い音が響く。
仙道が驚いて赤くなった頬を押さえた。
なにが起こったのかわからずに、長い睫毛に縁取られた目をまん丸に見開いてぱちくりとまばたきをする。
伊織の突然の行動に、陵南の部員たちもみんな一様に目を瞠って伊織を見つめた。
伊織は自身のうちを駆け巡る感情を抑えるように、低く押し殺した声で言う。
「期待もたせるようなことするなですって!? してないでしょ最初からそんなこと! 再会してからずっと彰さんにはもう恋愛感情ないって言い続けてるでしょ!? ――わたしがっ、彰さんに頑張って欲しいと思うこと自体が邪魔だって言うならもう伝えません! だけど……だけどっ」
そこで伊織は一旦言葉を切った。
乱れた呼吸を整えるように大きく息を吸い込んだ。
あの日伊織が武里戦を見て感じたこと。
仙道のいつもと違う勝利を急ぐような焦ったプレイに、伊織の胸は不安でいっぱいになる。
わかって欲しかった。
いま自分がどういう状態なのか。どういうプレイをしているのか。
ちゃんと理解して欲しかった。
仙道のいまの姿に、一年前の自分の姿が重なってみえた。
勝利を焦ったあのときの自分の判断ミス。もう二度とできなくなったテニス。
このままでは繰り返されてしまうかもしれない。
そんなのは絶対だめだった。
仙道に自分と同じ思いはさせたくない。
伊織は顔をあげると、痛みをこらえるような表情で仙道を見つめた。
その表情に仙道がハッと息を呑む。
「伊織ちゃん……」
「……武里戦、見ました。なんなんですか、あの試合。彰さん、どうしちゃったんですか? 全部ひとりよがりのプレイばっかりで、あんなの全っ然ダメじゃないですか。焦りが前面に出てて一人相撲丸出し。あれが仙道彰のプレイですか? だいたい今だって、なんですかその顔! その強張った肩! がちがちの足!」
伊織は言葉とともに、顔、肩、足と両手で挟みこむようにしてそこから喝をいれるように順に叩いた。
そして強いまなざしで仙道を見上げる。
「試合に緊張感は必要だけど、これはダメでしょう? こんなんでいいプレイができるわけないじゃないですか。だいたい彰さん昔っからムラッ気ありすぎなんですよ! それで種田先輩にいつもぼっこぼこに言われてたの忘れたんですか!?」
「な、種田はいま関係ないだろ!?」
仙道は懐かしい中学時代のチームメイトの名前を出されて、思わずたじろいだ。
種田修。中学時代、バスケ部のキャプテンだった種田に、仙道はいつも頭が上がらなかった。
「あります! こういうときにいっつもぐうの音も出ないくらいぼっこぼこにしてくれるのは種田先輩だったじゃないですか! いまのチームにはいないんですか、そういう人!」
言って伊織は息を呑んでこちらを見守る陵南の面々に視線を移した。
そのひとりひとりに訴えかけるように言う。
「いいんですよ、みなさん! マジメに練習してなかったらドリンクのポカリにレモン汁大量に混ぜてやればいいし、練習サボるようならロッカーにかっちかちのパンでもつめこんでやったらいいし、あんまり腹が立ったらユニフォームとかバッシュとか隠しちゃえばいいんですよ! 彰さんがしっかりしてるのはコート上だけですよ、気付いてるでしょう? 彰さんだってまだまだ17歳の高校生なんだから、彰さんの余裕ぶった雰囲気に騙されちゃダメですよ! 仙道彰には地味な嫌がらせが一番きくんです、覚えといてくださいこれ」
「ちょ、伊織ちゃん、みんなに変なこと教えないでよ!」
「種田修直伝仙道彰飼いならし術! 同じチームのみんなには必須知識でしょ?」
「ええ~!」
情けない声をあげる仙道を伊織は鋭く見やる。
仙道は伊織のその迫力に小さくうなだれた。
「はい」
言葉と同時に、仙道の頬に平手を喰らわせる。
「言うなぁっ!」
ばちんと硬い音が響く。
仙道が驚いて赤くなった頬を押さえた。
なにが起こったのかわからずに、長い睫毛に縁取られた目をまん丸に見開いてぱちくりとまばたきをする。
伊織の突然の行動に、陵南の部員たちもみんな一様に目を瞠って伊織を見つめた。
伊織は自身のうちを駆け巡る感情を抑えるように、低く押し殺した声で言う。
「期待もたせるようなことするなですって!? してないでしょ最初からそんなこと! 再会してからずっと彰さんにはもう恋愛感情ないって言い続けてるでしょ!? ――わたしがっ、彰さんに頑張って欲しいと思うこと自体が邪魔だって言うならもう伝えません! だけど……だけどっ」
そこで伊織は一旦言葉を切った。
乱れた呼吸を整えるように大きく息を吸い込んだ。
あの日伊織が武里戦を見て感じたこと。
仙道のいつもと違う勝利を急ぐような焦ったプレイに、伊織の胸は不安でいっぱいになる。
わかって欲しかった。
いま自分がどういう状態なのか。どういうプレイをしているのか。
ちゃんと理解して欲しかった。
仙道のいまの姿に、一年前の自分の姿が重なってみえた。
勝利を焦ったあのときの自分の判断ミス。もう二度とできなくなったテニス。
このままでは繰り返されてしまうかもしれない。
そんなのは絶対だめだった。
仙道に自分と同じ思いはさせたくない。
伊織は顔をあげると、痛みをこらえるような表情で仙道を見つめた。
その表情に仙道がハッと息を呑む。
「伊織ちゃん……」
「……武里戦、見ました。なんなんですか、あの試合。彰さん、どうしちゃったんですか? 全部ひとりよがりのプレイばっかりで、あんなの全っ然ダメじゃないですか。焦りが前面に出てて一人相撲丸出し。あれが仙道彰のプレイですか? だいたい今だって、なんですかその顔! その強張った肩! がちがちの足!」
伊織は言葉とともに、顔、肩、足と両手で挟みこむようにしてそこから喝をいれるように順に叩いた。
そして強いまなざしで仙道を見上げる。
「試合に緊張感は必要だけど、これはダメでしょう? こんなんでいいプレイができるわけないじゃないですか。だいたい彰さん昔っからムラッ気ありすぎなんですよ! それで種田先輩にいつもぼっこぼこに言われてたの忘れたんですか!?」
「な、種田はいま関係ないだろ!?」
仙道は懐かしい中学時代のチームメイトの名前を出されて、思わずたじろいだ。
種田修。中学時代、バスケ部のキャプテンだった種田に、仙道はいつも頭が上がらなかった。
「あります! こういうときにいっつもぐうの音も出ないくらいぼっこぼこにしてくれるのは種田先輩だったじゃないですか! いまのチームにはいないんですか、そういう人!」
言って伊織は息を呑んでこちらを見守る陵南の面々に視線を移した。
そのひとりひとりに訴えかけるように言う。
「いいんですよ、みなさん! マジメに練習してなかったらドリンクのポカリにレモン汁大量に混ぜてやればいいし、練習サボるようならロッカーにかっちかちのパンでもつめこんでやったらいいし、あんまり腹が立ったらユニフォームとかバッシュとか隠しちゃえばいいんですよ! 彰さんがしっかりしてるのはコート上だけですよ、気付いてるでしょう? 彰さんだってまだまだ17歳の高校生なんだから、彰さんの余裕ぶった雰囲気に騙されちゃダメですよ! 仙道彰には地味な嫌がらせが一番きくんです、覚えといてくださいこれ」
「ちょ、伊織ちゃん、みんなに変なこと教えないでよ!」
「種田修直伝仙道彰飼いならし術! 同じチームのみんなには必須知識でしょ?」
「ええ~!」
情けない声をあげる仙道を伊織は鋭く見やる。
仙道は伊織のその迫力に小さくうなだれた。
「はい」