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地区大会も終わって決勝リーグ。
海南大附属高校は一試合目の湘北高校を90-88でくだし、本日は同じく一試合目の武里戦を白星で飾った陵南高校と対戦する。
事実上の決勝戦とも言われているこの試合、体育館に集まる人の数も一試合目のときに比べてさらに増したようだった。
伊織は海南大附属高校のバスケ部メンバーと一緒に控え室へと向かいながら、ポケットの中をまさぐった。
ハーフタイムの練習も終わって、あとはいま会場で行われている湘北対武里戦が終了するまでの間、自由時間となっていた。
仙道に会いに行くなら、今しかない。
伊織は思い立つと、ひとり集団から外れて踵を返した。
そのまま陵南の控え室へと向かう。
陵南対武里戦。伊織はこの試合を、監督の高頭に言われてまりあと二人見に行っていた。
もちろんデータ収集が目的の観戦だったが、そのときの仙道のプレイが、伊織の心にとても引っかかっていた。
陵南の控え室の前。
意を決してドアをノックしようとしたとき、それが突然勢いよく開かれた。
「うわっ」
伊織は危うく打ち付けそうになった顔を紙一重のところで後ろに跳び退って回避すると、中からドアを開けた本人と目が合った。
陵南のキャプテン、魚住だった。
(う、うわ……。近くで見るとやっぱり大きい)
「ん? キミは……?」
魚住のその声に、伊織はハッと我に返った。慌てて頭を下げる。
「あ、こ、こんにちは! 海南マネージャーの鈴村伊織です」
「……ああ! キミはたしか仙道の……」
魚住はそれだけ言うと、控え室の中に首をめぐらした。
「仙道! お前にお客さんだ」
呼ぶと、伊織の姿が中からも確認できるように魚住は体をずらした。
伊織の姿を認め、仙道が驚いたように目を見開いているのが見える。
「伊織ちゃん……?」
仙道は立ち上がると、薄く笑いながら伊織の前に来た。
そのあやしげな表情に、伊織は自分の体が少し強張るのを自覚する。
緊張に、つばを飲み込む音が耳元で大きく鳴った。
目の前に立つ仙道の口角の持ち上がった唇が、薄く開かれる。
「どうしたの、伊織ちゃん。いまオレに近づかない方がいいよ。ねえ、愛してるから壊したいって感情、知ってる?」
耳元でわざと囁くように言う仙道。
その首筋にかかる吐息に、伊織は一瞬あの公園でのことが脳裏を掠め胸にわずかな恐怖が生まれたが、小さく首を振ってその感情を追い払うと真剣に仙道を見つめた。
ポケットの中で握り締めていたものを仙道に差し出す。
「……彰さんにこれ、渡したくて」
必勝祈願のお守りだった。
「……っ!」
仙道がそれを見て突然表情を険しくした。伊織の手の平の中のお守りを乱暴に掴むと、そのままの勢いでそれを横の壁に投げつける。
ぱしんと渇いた音が控え室内に響いた。そのうえに激昂する仙道の怒鳴り声がかぶさる。
「勝って欲しいなんて本気で思ってないくせに……っ! オレのこと愛してるわけでもないくせに、よくもこんなマネができるな! 気持ちに応えられないなら期待もたせるようなことすんな!」
普段ひょうひょうとした仙道の檄する声に、陵南のメンバーが驚いて仙道を振り返った。
しんと水を打ったような静けさと、ぴんと糸を張ったような緊張感が辺りを支配する。
伊織はひとり、そんな仙道にも怯まずに表情を厳しくしてその瞳を見つめ返した。
伊織の瞳の中、強い意志の光が瞬く。
海南大附属高校は一試合目の湘北高校を90-88でくだし、本日は同じく一試合目の武里戦を白星で飾った陵南高校と対戦する。
事実上の決勝戦とも言われているこの試合、体育館に集まる人の数も一試合目のときに比べてさらに増したようだった。
伊織は海南大附属高校のバスケ部メンバーと一緒に控え室へと向かいながら、ポケットの中をまさぐった。
ハーフタイムの練習も終わって、あとはいま会場で行われている湘北対武里戦が終了するまでの間、自由時間となっていた。
仙道に会いに行くなら、今しかない。
伊織は思い立つと、ひとり集団から外れて踵を返した。
そのまま陵南の控え室へと向かう。
陵南対武里戦。伊織はこの試合を、監督の高頭に言われてまりあと二人見に行っていた。
もちろんデータ収集が目的の観戦だったが、そのときの仙道のプレイが、伊織の心にとても引っかかっていた。
陵南の控え室の前。
意を決してドアをノックしようとしたとき、それが突然勢いよく開かれた。
「うわっ」
伊織は危うく打ち付けそうになった顔を紙一重のところで後ろに跳び退って回避すると、中からドアを開けた本人と目が合った。
陵南のキャプテン、魚住だった。
(う、うわ……。近くで見るとやっぱり大きい)
「ん? キミは……?」
魚住のその声に、伊織はハッと我に返った。慌てて頭を下げる。
「あ、こ、こんにちは! 海南マネージャーの鈴村伊織です」
「……ああ! キミはたしか仙道の……」
魚住はそれだけ言うと、控え室の中に首をめぐらした。
「仙道! お前にお客さんだ」
呼ぶと、伊織の姿が中からも確認できるように魚住は体をずらした。
伊織の姿を認め、仙道が驚いたように目を見開いているのが見える。
「伊織ちゃん……?」
仙道は立ち上がると、薄く笑いながら伊織の前に来た。
そのあやしげな表情に、伊織は自分の体が少し強張るのを自覚する。
緊張に、つばを飲み込む音が耳元で大きく鳴った。
目の前に立つ仙道の口角の持ち上がった唇が、薄く開かれる。
「どうしたの、伊織ちゃん。いまオレに近づかない方がいいよ。ねえ、愛してるから壊したいって感情、知ってる?」
耳元でわざと囁くように言う仙道。
その首筋にかかる吐息に、伊織は一瞬あの公園でのことが脳裏を掠め胸にわずかな恐怖が生まれたが、小さく首を振ってその感情を追い払うと真剣に仙道を見つめた。
ポケットの中で握り締めていたものを仙道に差し出す。
「……彰さんにこれ、渡したくて」
必勝祈願のお守りだった。
「……っ!」
仙道がそれを見て突然表情を険しくした。伊織の手の平の中のお守りを乱暴に掴むと、そのままの勢いでそれを横の壁に投げつける。
ぱしんと渇いた音が控え室内に響いた。そのうえに激昂する仙道の怒鳴り声がかぶさる。
「勝って欲しいなんて本気で思ってないくせに……っ! オレのこと愛してるわけでもないくせに、よくもこんなマネができるな! 気持ちに応えられないなら期待もたせるようなことすんな!」
普段ひょうひょうとした仙道の檄する声に、陵南のメンバーが驚いて仙道を振り返った。
しんと水を打ったような静けさと、ぴんと糸を張ったような緊張感が辺りを支配する。
伊織はひとり、そんな仙道にも怯まずに表情を厳しくしてその瞳を見つめ返した。
伊織の瞳の中、強い意志の光が瞬く。