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そう言って越野が歩きだしたときだった。
仙道がその背中に向けて囁くように呟いた。
「ごめん、越野」
越野が振り返る。
「あ?」
「……ダメに、なりそうなんだ」
「? ダメにって……あの子と?」
越野が仙道のもとに戻って訊ねた。
仙道は傍らに立つ越野に苦笑を向ける。
「そう。多分オレはもうフラれる。それどころか――この前、ちょっと襲っちゃったしもう嫌われちゃったかもしんない」
「おそっ……!?」
越野がその言葉に目を剥いた。
「襲ったってお前まさか、最後まで……!?」
「ううん。それはしてない。唇にキスもしてないよ。だけど、頬とおでこと首にむりやり口付けた」
「それ……は、セーフなのかアウトなのか、相手の子にもよると思うけど……。あの子はなんて?」
「気にしてないって、大丈夫だって言ってくれたけど、そんなわけないよな。あんときすごく怯えてたんだ、伊織ちゃん……」
瞳を閉じれば今でも鮮明に伊織の怯えた顔がまぶたの裏によみがえる。
信じられないものを見るような、あの瞳。
震える唇。からだ。声。
とめどなく溢れる涙。
そのひとつひとつを思い出すだけで、胸が潰れるように痛い。
ふいに仙道の顔にタオルが投げつけられた。
驚いて越野に目を向けると、越野が慌てて顔をうつむけた。
「お前無意識かもしんないけど、とりあえず拭け」
「?」
「いいから顔拭けっての!」
「……!」
越野に言われて初めて、仙道は自分が泣いていることに気がついた。
顔を隠すようにタオルを押し当て、そこからくぐもった声を出す。
「ごめん。気付かなかった」
「……別にいいけど。俺しか見てねえし。たまには泣くのもいいんじゃねえか? 今大泣きされても困るけどよ、休憩あと10分で終わりだし」
「うん。だな。サンキュー越野。恥ずかしいからこのことはナイショにしといて」
「おう。……あのさ、その伊織ちゃんだけどさ」
「うん?」
「結構ひどくねえか」
「え?」
仙道はタオルを顔から外して越野を見つめた。
越野は下を向いたままきつく地面を睨みつけて言う。
「だってよ。襲うっていったって、そういうシチュエーションじゃなきゃできないだろ? 人気のないところで二人っきりとかさ。仙道の気持ち知っててそういうところにのこのこ来るなんて、お前に期待持たせるようなもんじゃねえか」
「ああ、なるほど。そういうことになるのか」
仙道はどこか他人事のように相槌を返した。
たしかに事情を知らない他人がみれば、伊織の行動がそういう風に取られかねないのかもしれない。
でも違う。伊織はそんな子じゃない。
仙道にはなぜ伊織が自分の呼びかけに応じてくれるのか、ちゃんとわかっていた。
それを思うと、仙道の胸に鈍い痛みが走る。
越野は自分の考えに仙道が賛同したと思い、身を乗り出して力説をする。
「だろ!? 自分に好意を寄せる男とそういう場所で二人っきりになる時点で、なにされたって文句言えねえだろ普通。自業自得だろうが」
「はは、言うねえ越野」