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夢小説設定
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飛び散る汗。
飛び交う声。
体育館中に響き渡る、キュッキュと鳴るスニーカーの音。
朝練も残すところあと5分で終了だ。
伊織は片付けの準備のために、マネージャー席から腰を上げた。
用具室へ向かい、ドリンクを回収するためのカゴと、ビブスを回収するためのカゴを持って来る。
「ありがとう、伊織ちゃん」
「いえ!」
にこりと綺麗に微笑む小百合に、伊織は笑みを返す。
それと同時に、タイマー付き電子得点板が練習終了のブザーを鳴らした。
キャプテンの牧が手を挙げる。
「そこまで! 全員集まれ」
反省をまとめるために小百合は選手と一緒に牧の元へ集まり、他のマネージャーたちは道具を片付けるために散らばった。
ボール、ビブス、ドリンクなど、軽いものは次々と片付けられていく。しかし、最重量の電子得点板は、やはり誰も手をつけようとしなかった。
(……やれやれ。あれを運びますか)
朝練の準備の反省を踏まえて、ひとりで運ぶのは避けたい。
伊織が隣りにいたまりあに視線を向けると、まりあの口が少し引きつった。
「わ、わたしモップ用意してこよーっと」
そういって、まりあは足取りも軽く用具室へ駆け込んでいく。
「…………まりあちゃん、逃げたな」
伊織は周囲を見回したが、他に手伝ってくれそうな人もいなかった。
諦めるようにひとつため息をつくと、得点板に足を向ける。
早く片付けなくては、床をモップ清掃できなくなってしまう。
「よっ」
渾身の力を溜めて得点板を押すと、思ったより軽くそれは動いた。
「あれ?」
不思議に思って顔を上げると、伊織の持つさらに上を宗一郎が押してくれていた。
どうやら朝練のミーティングは終了して、選手も片付けにまわっているようだ。
「神先輩!」
「また懲りずにひとりで運ぼうとしてる。さっきケガしたばっかりでしょ」
宗一郎がしょうがないなあと言うように笑う。
学習能力のない子だと思われたくなくて、伊織は慌てて弁解のため口を開く。
「いや、違うんです先輩! 今度は誰かと運ぼうと思ったんですけど――!」
「誰もいなかった?」
宗一郎が先を引き取って言う。伊織はこくこくと頷いた。
「知ってる。この得点板、重くて大変だからみんな避けるんだよね」
「あ、やっぱり。なんかそんな気がしました」
「でしょ? みんなもう少しうまく避ければいいのに、露骨過ぎるんだよ」
「あはは。確かに。だ~れも目を合わせてくれませんでしたね」
ため息交じりの宗一郎の言葉に、伊織は先ほどの状況を思い出して小さく笑った。
宗一郎は、そんな伊織を目を細めて見つめる。
「伊織ちゃんは偉いね」
「え?」
「俺、そうやって人の嫌がることを率先して出来る子って好きだな。いいと思うよ。伊織ちゃんのそういうところ」
「あっ、ありがとうございます!」
伊織の胸がトクンと音をたてる。
飛び交う声。
体育館中に響き渡る、キュッキュと鳴るスニーカーの音。
朝練も残すところあと5分で終了だ。
伊織は片付けの準備のために、マネージャー席から腰を上げた。
用具室へ向かい、ドリンクを回収するためのカゴと、ビブスを回収するためのカゴを持って来る。
「ありがとう、伊織ちゃん」
「いえ!」
にこりと綺麗に微笑む小百合に、伊織は笑みを返す。
それと同時に、タイマー付き電子得点板が練習終了のブザーを鳴らした。
キャプテンの牧が手を挙げる。
「そこまで! 全員集まれ」
反省をまとめるために小百合は選手と一緒に牧の元へ集まり、他のマネージャーたちは道具を片付けるために散らばった。
ボール、ビブス、ドリンクなど、軽いものは次々と片付けられていく。しかし、最重量の電子得点板は、やはり誰も手をつけようとしなかった。
(……やれやれ。あれを運びますか)
朝練の準備の反省を踏まえて、ひとりで運ぶのは避けたい。
伊織が隣りにいたまりあに視線を向けると、まりあの口が少し引きつった。
「わ、わたしモップ用意してこよーっと」
そういって、まりあは足取りも軽く用具室へ駆け込んでいく。
「…………まりあちゃん、逃げたな」
伊織は周囲を見回したが、他に手伝ってくれそうな人もいなかった。
諦めるようにひとつため息をつくと、得点板に足を向ける。
早く片付けなくては、床をモップ清掃できなくなってしまう。
「よっ」
渾身の力を溜めて得点板を押すと、思ったより軽くそれは動いた。
「あれ?」
不思議に思って顔を上げると、伊織の持つさらに上を宗一郎が押してくれていた。
どうやら朝練のミーティングは終了して、選手も片付けにまわっているようだ。
「神先輩!」
「また懲りずにひとりで運ぼうとしてる。さっきケガしたばっかりでしょ」
宗一郎がしょうがないなあと言うように笑う。
学習能力のない子だと思われたくなくて、伊織は慌てて弁解のため口を開く。
「いや、違うんです先輩! 今度は誰かと運ぼうと思ったんですけど――!」
「誰もいなかった?」
宗一郎が先を引き取って言う。伊織はこくこくと頷いた。
「知ってる。この得点板、重くて大変だからみんな避けるんだよね」
「あ、やっぱり。なんかそんな気がしました」
「でしょ? みんなもう少しうまく避ければいいのに、露骨過ぎるんだよ」
「あはは。確かに。だ~れも目を合わせてくれませんでしたね」
ため息交じりの宗一郎の言葉に、伊織は先ほどの状況を思い出して小さく笑った。
宗一郎は、そんな伊織を目を細めて見つめる。
「伊織ちゃんは偉いね」
「え?」
「俺、そうやって人の嫌がることを率先して出来る子って好きだな。いいと思うよ。伊織ちゃんのそういうところ」
「あっ、ありがとうございます!」
伊織の胸がトクンと音をたてる。