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仙道の腕が伊織のからだをぎゅうぎゅう締め付けて、呼吸がときどきできなくなる。
一瞬、このまま息が止まってしまったらいいのにと思った。
仙道を苦しめる自分という存在がいなくなったら、仙道はどんなにか楽になれるだろうか。
思って伊織は慌てて頭を振ってその思考を外に追い出す。
それは仙道の苦しみを直視せずに、それから逃げることだ。
それでは誰も救われない。
仙道をここまで苦しめたのはほかでもない伊織自身だった。
そのことをきちんと受け入れて、ちゃんと立ち直らせてあげなくては。
そう決意をしても、掛ける言葉がみつからなくて、伊織はただひたすらに仙道の背中を優しく撫で続けた。
少しでも苦しみが和らぐように祈りを込めながら、一生懸命撫で続けた。
「伊織ちゃん」
しばらくして仙道の落ち着いた声が耳に届いた。
「はい」
伊織は静かに返事をする。
「キミに、伝えたいことがあるんだ」
「はい」
「こんな風にじゃなくて、ちゃんと伝えたいことがあるんだ」
「……はい」
「オレが……」
仙道の言葉がそこで一回途切れた。
耳元で大きく息を吸い込む音がする。
伊織はそれを手伝うように背中を優しく撫でた。
それに後押しされるように、仙道が言葉を続ける。
「オレが、もしインターハイに行くことができたら、それをキミに伝えたい。だからそのときは、伊織ちゃん、オレの話を聞いてくれる……?」
「はい。聞かせて欲しいです、彰さんの話。だからわたし、待ちます。それまでは誰かのものになったりなんてしませんから。だから安心してください、彰さん」
「ありがとう……」
仙道が伊織を体から離して、優しく微笑んだ。
微笑み返す伊織の頬に、仙道の手が触れる。
「オレ、それまでは伊織ちゃんと会わない。連絡もしない」
「彰さん」
「怖いんだ。そうしないと、自分が何をしでかすかわからない。今日だって、オレは伊織ちゃんのこと、こんなに傷つけて……いっぱい泣かせて……守りたいのに……!」
「わたしは、大丈夫ですよ」
伊織は元気付けるように微笑んで見せた。
それに仙道が首をふる。
「ごめん、伊織ちゃん。こんな無理して笑わせて……。怖い思いさせてごめん。キミを縛り付けるのに会わないなんてわがままだけど、許して。きっとこれが最後のわがままだから……」
「……はい。待ちます。大丈夫です。わがままなんて思ってません。……だから、彰さんは、心配しないで練習がんばってくださいね」
「ありがとう、伊織ちゃん」
仙道が立ち去った後の公園で、伊織は膝を抱えて一人で泣いていた。
仙道の抱える痛みが、今も伊織を切り刻むように体中に突き刺さった。
あの優しい仙道が、いつだって余裕の表情を浮かべている仙道が、あそこまで追い詰められていたなんて……。
「どうしよう、どうしよう……!」
膝を抱える手に力を込めたそのとき。
「伊織ちゃん!」
自分を呼ぶ宗一郎の声が聞こえた気がして、伊織は顔をあげた。
一瞬、このまま息が止まってしまったらいいのにと思った。
仙道を苦しめる自分という存在がいなくなったら、仙道はどんなにか楽になれるだろうか。
思って伊織は慌てて頭を振ってその思考を外に追い出す。
それは仙道の苦しみを直視せずに、それから逃げることだ。
それでは誰も救われない。
仙道をここまで苦しめたのはほかでもない伊織自身だった。
そのことをきちんと受け入れて、ちゃんと立ち直らせてあげなくては。
そう決意をしても、掛ける言葉がみつからなくて、伊織はただひたすらに仙道の背中を優しく撫で続けた。
少しでも苦しみが和らぐように祈りを込めながら、一生懸命撫で続けた。
「伊織ちゃん」
しばらくして仙道の落ち着いた声が耳に届いた。
「はい」
伊織は静かに返事をする。
「キミに、伝えたいことがあるんだ」
「はい」
「こんな風にじゃなくて、ちゃんと伝えたいことがあるんだ」
「……はい」
「オレが……」
仙道の言葉がそこで一回途切れた。
耳元で大きく息を吸い込む音がする。
伊織はそれを手伝うように背中を優しく撫でた。
それに後押しされるように、仙道が言葉を続ける。
「オレが、もしインターハイに行くことができたら、それをキミに伝えたい。だからそのときは、伊織ちゃん、オレの話を聞いてくれる……?」
「はい。聞かせて欲しいです、彰さんの話。だからわたし、待ちます。それまでは誰かのものになったりなんてしませんから。だから安心してください、彰さん」
「ありがとう……」
仙道が伊織を体から離して、優しく微笑んだ。
微笑み返す伊織の頬に、仙道の手が触れる。
「オレ、それまでは伊織ちゃんと会わない。連絡もしない」
「彰さん」
「怖いんだ。そうしないと、自分が何をしでかすかわからない。今日だって、オレは伊織ちゃんのこと、こんなに傷つけて……いっぱい泣かせて……守りたいのに……!」
「わたしは、大丈夫ですよ」
伊織は元気付けるように微笑んで見せた。
それに仙道が首をふる。
「ごめん、伊織ちゃん。こんな無理して笑わせて……。怖い思いさせてごめん。キミを縛り付けるのに会わないなんてわがままだけど、許して。きっとこれが最後のわがままだから……」
「……はい。待ちます。大丈夫です。わがままなんて思ってません。……だから、彰さんは、心配しないで練習がんばってくださいね」
「ありがとう、伊織ちゃん」
仙道が立ち去った後の公園で、伊織は膝を抱えて一人で泣いていた。
仙道の抱える痛みが、今も伊織を切り刻むように体中に突き刺さった。
あの優しい仙道が、いつだって余裕の表情を浮かべている仙道が、あそこまで追い詰められていたなんて……。
「どうしよう、どうしよう……!」
膝を抱える手に力を込めたそのとき。
「伊織ちゃん!」
自分を呼ぶ宗一郎の声が聞こえた気がして、伊織は顔をあげた。