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「フラれる準備に来たんだ。そのために、伊織ちゃんにもう少しだけオレに時間をくれるように頼みに、ね」
「…………」
まりあは黙って仙道の顔を見つめた。
余裕の表情を見せているけれど、震える睫毛が仙道の胸中を物語っている気がした。
まりあの口元に寂しげな微笑が浮かぶ。
「ほんと、わたしたちって不毛ですね」
「そうだな」
「でも、簡単には諦められない。ノブくんみたいになれたらいいけど、それにはまだ覚悟が足りない」
「まあさ、ノブナガくんの場合は気付いたときにはもう伊織ちゃんに好きな人がいたってパターンなんでしょ? オレたちとは状況が違うから。オレたちはみっともなく足掻いてぶつからないと、気持ちがとても収まらないよな」
「……はい」
まりあの瞳から涙が一滴零れ落ちた。
仙道はそれに気付くと、まりあの頭を優しく撫でた。
「さて、そろそろ部活に戻ったほうがいいんじゃない?」
「そうですね」
「まりあちゃん、オレを気にかけてくれてありがとうね。お互い今日はがんばろうな」
「はい。ミルクティ、ごちそうさまでした」
まりあはぺこりと頭をさげると、体育館へ足を向けた。
伊織はカゴいっぱいにドリンクボトルをつめて外水道まで出た。
ほとんど中身がないとはいえ、30本以上もつめていればなかなかに重い。
一度足もとに置いたカゴを流しまで持ち上げようと取っ手を掴み、ぐっと力を込めたところで、
「伊織ちゃん」
ふいに名前を呼ばれた。
振り返ると宗一郎が立っていた。
「宗先輩! あ、もしかしてドリンクですか? すみません、いま出しますね」
言って伊織はしゃがむと、カゴの中のドリンクボトルを取り上げた。
その表面に書かれた名前をひとつひとつ確認して宗一郎の名前を探していると、宗一郎に笑顔で制された。
「大丈夫。ただ伊織ちゃんと話に来ただけだよ」
「あ、そ、そうですか」
穏やかに微笑んで言う宗一郎に、伊織の頬が赤く染まる。
伊織は立ち上がると宗一郎に向き直った。
「こうやって二人で話すの久しぶりだね」
「はい」
「ここのところまりあがすごく不安定でさ。ちょっと放っておけないんだ。最近まりあになにかあった?」
「あー、いや……多分ないと思います」
「そっか。伊織ちゃんでも知らないか。どうしたんだろうな」
まさか原因はあなたですなんて言えなくて、伊織は複雑な表情で宗一郎を見つめた。
きっとその事情を宗一郎は今日の帰りに知ることになるだろう。
知ったらどうなるんだろう。
伊織の胸が暗く沈む。
「宗先輩はまりあちゃんがほんとうに大切なんですね」
「うーん、たしかに大切なんだけど……。でも、伊織ちゃんにそれを言われるのは複雑かな。勘違いしないで欲しいんだけど、俺が触れたい愛しいって思うのは伊織ちゃんだけだよ」
「!」
「好きだよ、伊織ちゃん」
瞳だけに真剣な色を乗せて宗一郎が薄く微笑む。
「…………」
まりあは黙って仙道の顔を見つめた。
余裕の表情を見せているけれど、震える睫毛が仙道の胸中を物語っている気がした。
まりあの口元に寂しげな微笑が浮かぶ。
「ほんと、わたしたちって不毛ですね」
「そうだな」
「でも、簡単には諦められない。ノブくんみたいになれたらいいけど、それにはまだ覚悟が足りない」
「まあさ、ノブナガくんの場合は気付いたときにはもう伊織ちゃんに好きな人がいたってパターンなんでしょ? オレたちとは状況が違うから。オレたちはみっともなく足掻いてぶつからないと、気持ちがとても収まらないよな」
「……はい」
まりあの瞳から涙が一滴零れ落ちた。
仙道はそれに気付くと、まりあの頭を優しく撫でた。
「さて、そろそろ部活に戻ったほうがいいんじゃない?」
「そうですね」
「まりあちゃん、オレを気にかけてくれてありがとうね。お互い今日はがんばろうな」
「はい。ミルクティ、ごちそうさまでした」
まりあはぺこりと頭をさげると、体育館へ足を向けた。
伊織はカゴいっぱいにドリンクボトルをつめて外水道まで出た。
ほとんど中身がないとはいえ、30本以上もつめていればなかなかに重い。
一度足もとに置いたカゴを流しまで持ち上げようと取っ手を掴み、ぐっと力を込めたところで、
「伊織ちゃん」
ふいに名前を呼ばれた。
振り返ると宗一郎が立っていた。
「宗先輩! あ、もしかしてドリンクですか? すみません、いま出しますね」
言って伊織はしゃがむと、カゴの中のドリンクボトルを取り上げた。
その表面に書かれた名前をひとつひとつ確認して宗一郎の名前を探していると、宗一郎に笑顔で制された。
「大丈夫。ただ伊織ちゃんと話に来ただけだよ」
「あ、そ、そうですか」
穏やかに微笑んで言う宗一郎に、伊織の頬が赤く染まる。
伊織は立ち上がると宗一郎に向き直った。
「こうやって二人で話すの久しぶりだね」
「はい」
「ここのところまりあがすごく不安定でさ。ちょっと放っておけないんだ。最近まりあになにかあった?」
「あー、いや……多分ないと思います」
「そっか。伊織ちゃんでも知らないか。どうしたんだろうな」
まさか原因はあなたですなんて言えなくて、伊織は複雑な表情で宗一郎を見つめた。
きっとその事情を宗一郎は今日の帰りに知ることになるだろう。
知ったらどうなるんだろう。
伊織の胸が暗く沈む。
「宗先輩はまりあちゃんがほんとうに大切なんですね」
「うーん、たしかに大切なんだけど……。でも、伊織ちゃんにそれを言われるのは複雑かな。勘違いしないで欲しいんだけど、俺が触れたい愛しいって思うのは伊織ちゃんだけだよ」
「!」
「好きだよ、伊織ちゃん」
瞳だけに真剣な色を乗せて宗一郎が薄く微笑む。