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夢小説設定
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そのとき、ふたりの間を風が吹きぬけた。
長い髪をその風に躍らせて、心地よさそうに目を細める信長の横顔に、まりあの胸がとくんと小さな音を立てた。
まりあが信長に連れられて中庭まで戻ると、そこにまだ伊織がいた。
放置されていた三人のお弁当箱を膝に抱えて俯きながら、一人で静かに涙を零している。
まりあはなんだかそれにどうしようもないくらい愛しさが込み上げてきて、思わず微笑んだ。
だけど、このまま許してなんてあげない。
思ってまりあは表情を怒りモードに切り替えて、足音も荒く伊織に近づく。
その音に、ハッと伊織が顔をあげた。
頬をぬらす涙を乱暴にこすって、まりあに駆け寄ってくる。
「まりあちゃん!」
「…………」
黙って伊織に睨みを利かせてやると、伊織が勢いよく頭をさげた。
「まりあちゃんごめんなさい! 謝って許してもらえるなんて思ってないけど、でも、ほんとうにごめんなさい……! わたし、宗先輩が好きなの。ほんとうは、あのときまりあちゃんに聞かれたときからずっとずっと好きだった。でも言えなくて。まりあちゃんの宗先輩への想いの深さを知ってたから、諦めようと努力して、でもできなくて……。そう気付いたときにまりあちゃんに気持ちを打ち明けるべきだったのに、ずるずると引き延ばして、あげくこんな形でまりあちゃんを傷つけてしまって……。ほんとうにごめんなさい!」
「……許してあげてもいいよ」
「ほんとう!?」
弾かれたように顔をあげる伊織に、まりあはわざと冷たく、冷淡に言い放つ。
「うん。でもそのかわり、宗ちゃんのこと諦めて。まりあと友達でいたいならできるでしょ? これだけまりあを傷つけといて、まさかできないなんて言わないよね? 宗ちゃんのこと諦めてくれるでしょ?」
伊織の瞳が驚きに見開かれた。
まりあはそれを見て思う。
祈るように思う。
(お願い、伊織ちゃん。諦めないって言って)
ウソの上に成り立つ友情なんていらない。
そんなもの、いざという時にはもろく崩れ去る。
そんなまやかしの友情はなんて必要なかった。
好きなものは好きだと、どんなにまりあのことが大切でも譲れないものは譲れないと、ちゃんとはっきり言って。
まりあの足が緊張に小さく震える。
きっと伊織ならノーと言ってくれる。
でももし。
脳裏に不安がよぎる。
もしも伊織にイエスと言われてしまったら……。
恐怖に支配されそうになったとき、伊織の唇が静かに持ち上がった。
「ごめん、まりあちゃん。わたし、宗先輩を諦められない」
「!」
その言葉に、まりあは瞳を少しだけ見開いた。
ノーと言ってくれた。
伊織が、ちゃんと本音を語ってくれた。
それだけで飛び上がりたいくらいの喜びが全身を駆け抜ける。
まりあはそんな気持ちを必死に不機嫌な表情の下に隠して、そのまま伊織を黙って見つめ続けた。
「ま、まりあちゃんが、それでわたしと絶交するって言うなら……」
伊織の目から涙が溢れ出す。
嗚咽をこらえるように、伊織は必死に言葉を続ける。
「す……すごく、悲しいけど、受け……入れる。わたし、まりあちゃんに、もうこれ以上ウソ……つき、たくない。まりあちゃんが、いつでも本音でわたしにぶつかってくれてたように、わた、わたしもまりあちゃんに対してそうありたい……。だから……」
長い髪をその風に躍らせて、心地よさそうに目を細める信長の横顔に、まりあの胸がとくんと小さな音を立てた。
まりあが信長に連れられて中庭まで戻ると、そこにまだ伊織がいた。
放置されていた三人のお弁当箱を膝に抱えて俯きながら、一人で静かに涙を零している。
まりあはなんだかそれにどうしようもないくらい愛しさが込み上げてきて、思わず微笑んだ。
だけど、このまま許してなんてあげない。
思ってまりあは表情を怒りモードに切り替えて、足音も荒く伊織に近づく。
その音に、ハッと伊織が顔をあげた。
頬をぬらす涙を乱暴にこすって、まりあに駆け寄ってくる。
「まりあちゃん!」
「…………」
黙って伊織に睨みを利かせてやると、伊織が勢いよく頭をさげた。
「まりあちゃんごめんなさい! 謝って許してもらえるなんて思ってないけど、でも、ほんとうにごめんなさい……! わたし、宗先輩が好きなの。ほんとうは、あのときまりあちゃんに聞かれたときからずっとずっと好きだった。でも言えなくて。まりあちゃんの宗先輩への想いの深さを知ってたから、諦めようと努力して、でもできなくて……。そう気付いたときにまりあちゃんに気持ちを打ち明けるべきだったのに、ずるずると引き延ばして、あげくこんな形でまりあちゃんを傷つけてしまって……。ほんとうにごめんなさい!」
「……許してあげてもいいよ」
「ほんとう!?」
弾かれたように顔をあげる伊織に、まりあはわざと冷たく、冷淡に言い放つ。
「うん。でもそのかわり、宗ちゃんのこと諦めて。まりあと友達でいたいならできるでしょ? これだけまりあを傷つけといて、まさかできないなんて言わないよね? 宗ちゃんのこと諦めてくれるでしょ?」
伊織の瞳が驚きに見開かれた。
まりあはそれを見て思う。
祈るように思う。
(お願い、伊織ちゃん。諦めないって言って)
ウソの上に成り立つ友情なんていらない。
そんなもの、いざという時にはもろく崩れ去る。
そんなまやかしの友情はなんて必要なかった。
好きなものは好きだと、どんなにまりあのことが大切でも譲れないものは譲れないと、ちゃんとはっきり言って。
まりあの足が緊張に小さく震える。
きっと伊織ならノーと言ってくれる。
でももし。
脳裏に不安がよぎる。
もしも伊織にイエスと言われてしまったら……。
恐怖に支配されそうになったとき、伊織の唇が静かに持ち上がった。
「ごめん、まりあちゃん。わたし、宗先輩を諦められない」
「!」
その言葉に、まりあは瞳を少しだけ見開いた。
ノーと言ってくれた。
伊織が、ちゃんと本音を語ってくれた。
それだけで飛び上がりたいくらいの喜びが全身を駆け抜ける。
まりあはそんな気持ちを必死に不機嫌な表情の下に隠して、そのまま伊織を黙って見つめ続けた。
「ま、まりあちゃんが、それでわたしと絶交するって言うなら……」
伊織の目から涙が溢れ出す。
嗚咽をこらえるように、伊織は必死に言葉を続ける。
「す……すごく、悲しいけど、受け……入れる。わたし、まりあちゃんに、もうこれ以上ウソ……つき、たくない。まりあちゃんが、いつでも本音でわたしにぶつかってくれてたように、わた、わたしもまりあちゃんに対してそうありたい……。だから……」