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まりあは校舎の中を全力疾走すると、屋上へと向かった。
海南大附属高校の屋上は開放日が決まっており、今日はその日ではなかったけれど、そんなの関係なかった。
むしろそちらの方が都合がいい。
まりあは立ち入り禁止と書かれた札のぶら下がるロープをまたぐと、屋上へと続く鉄扉のノブをまわした。
よほど生徒を信頼しているのか、それともただ無用心なだけなのか、それはなんの抵抗もなく回転した。
ギッと言う音を立てて、まりあを屋上へと導く。
まりあは転落防止に立てられたフェンスまで歩いて行くと、それに手をかけた。
がしゃんと金属のこすれる音がする。
時折強く吹く風が、まりあの柔らかな栗色の髪をさらった。
そよぐ髪の合間を、きらきらと輝く雫が流れていく。
フェンスを掴む手にまりあは力を入れた。
気付かなかったわけではない。
宗一郎の伊織を見つめるあの目。
嫌な予感はしていた。
あの日。はじめて二人を目撃したあの日。
いつかこうなるんじゃないかと、あの日からずっと心のどこかで思ってた。
だけど、そのいつかがまさか今日になるなんて。
(宗ちゃん……!)
心の準備なんかなにも出来ていない。
嫌だ。宗一郎がもう自分のものじゃないなんて。
自分のために用意されていたあたたかい腕が、体温が、今度は自分じゃなく伊織のために存在するようになるなんて。
そんなの受け入れられない。
生きていけない。
自分にはこんなにも宗一郎が必要なのに。
「いやぁっ! 宗ちゃん、宗ちゃん……!」
まりあはその場にくずおれた。
生まれたときからずっと一緒だった。
誰よりもそばで、誰よりも優しく見守ってくれて。
いけないことはちゃんとダメだと叱ってくれて。
でもいつでもまりあを一番に優先してくれる。
そんな宗一郎が大好きなのに。
まりあは自分で自分を抱きしめるように、両腕を体にまわした。
そうしないと、いまにも千切れそうな心臓と一緒に、自分の体がばらばらになってしまいそうな気がした。
まりあは小さくうずくまる。
「伊織ちゃん……!」
伊織の裏切りが信じられなかった。
自分になにも告げずに宗一郎を奪っていくなんて、思ってもみなかった。
(伊織ちゃんなら、絶対まりあに言ってくれると思ってたのに……!)
自分を抱きしめる手に力がこもる。
爪が腕に食い込む。
あのバカ正直な伊織なら、絶対に宗一郎と付き合う前にまりあに打ち明けてくると、まりあはこどもみたいに純粋にそう信じきっていた。
体育倉庫で宗一郎と伊織が話しているのを聞いて、目の前が真っ暗になった。
世界の根幹が揺らいだようだった。
盲目に信じてきたものに裏切られて、なにを信じていいのかがわからなくなった。
宗一郎も伊織も、自分にとってかけがえのない存在なのに。
自分の気持ちに微塵も気付いていないだろう宗一郎はともかく、全て知っている伊織にまでなにも話してもらえなかったことがショックだった。
(伊織ちゃん、本当はまりあのこと嫌いだった?)
ふと脳裏によぎったその考えに、再び心臓に身を引き裂かれそうなほどの痛みを感じた。
海南大附属高校の屋上は開放日が決まっており、今日はその日ではなかったけれど、そんなの関係なかった。
むしろそちらの方が都合がいい。
まりあは立ち入り禁止と書かれた札のぶら下がるロープをまたぐと、屋上へと続く鉄扉のノブをまわした。
よほど生徒を信頼しているのか、それともただ無用心なだけなのか、それはなんの抵抗もなく回転した。
ギッと言う音を立てて、まりあを屋上へと導く。
まりあは転落防止に立てられたフェンスまで歩いて行くと、それに手をかけた。
がしゃんと金属のこすれる音がする。
時折強く吹く風が、まりあの柔らかな栗色の髪をさらった。
そよぐ髪の合間を、きらきらと輝く雫が流れていく。
フェンスを掴む手にまりあは力を入れた。
気付かなかったわけではない。
宗一郎の伊織を見つめるあの目。
嫌な予感はしていた。
あの日。はじめて二人を目撃したあの日。
いつかこうなるんじゃないかと、あの日からずっと心のどこかで思ってた。
だけど、そのいつかがまさか今日になるなんて。
(宗ちゃん……!)
心の準備なんかなにも出来ていない。
嫌だ。宗一郎がもう自分のものじゃないなんて。
自分のために用意されていたあたたかい腕が、体温が、今度は自分じゃなく伊織のために存在するようになるなんて。
そんなの受け入れられない。
生きていけない。
自分にはこんなにも宗一郎が必要なのに。
「いやぁっ! 宗ちゃん、宗ちゃん……!」
まりあはその場にくずおれた。
生まれたときからずっと一緒だった。
誰よりもそばで、誰よりも優しく見守ってくれて。
いけないことはちゃんとダメだと叱ってくれて。
でもいつでもまりあを一番に優先してくれる。
そんな宗一郎が大好きなのに。
まりあは自分で自分を抱きしめるように、両腕を体にまわした。
そうしないと、いまにも千切れそうな心臓と一緒に、自分の体がばらばらになってしまいそうな気がした。
まりあは小さくうずくまる。
「伊織ちゃん……!」
伊織の裏切りが信じられなかった。
自分になにも告げずに宗一郎を奪っていくなんて、思ってもみなかった。
(伊織ちゃんなら、絶対まりあに言ってくれると思ってたのに……!)
自分を抱きしめる手に力がこもる。
爪が腕に食い込む。
あのバカ正直な伊織なら、絶対に宗一郎と付き合う前にまりあに打ち明けてくると、まりあはこどもみたいに純粋にそう信じきっていた。
体育倉庫で宗一郎と伊織が話しているのを聞いて、目の前が真っ暗になった。
世界の根幹が揺らいだようだった。
盲目に信じてきたものに裏切られて、なにを信じていいのかがわからなくなった。
宗一郎も伊織も、自分にとってかけがえのない存在なのに。
自分の気持ちに微塵も気付いていないだろう宗一郎はともかく、全て知っている伊織にまでなにも話してもらえなかったことがショックだった。
(伊織ちゃん、本当はまりあのこと嫌いだった?)
ふと脳裏によぎったその考えに、再び心臓に身を引き裂かれそうなほどの痛みを感じた。