16
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
伊織はハッと目を見開いた。
まりあの目から涙がこぼれるたびに、胸がぎしぎしと音を立てる。
「ひどいよ、伊織ちゃん! いくら伊織ちゃんが弱ってたからって、だからってまりあに何も言わないでまりあから宗ちゃんを奪うの!? ひどい……! いくらなんでもそれってあんまりよ! 裏切り者! 伊織ちゃんなんて大嫌い! 伊織ちゃんなんか、伊織ちゃんなんか……あのまま……っ、あのまま治らなければよかったのに!」
まりあの言葉が、鋭い矢のように伊織の心に突き刺さった。
まりあの肩に置いた伊織の手の力が一瞬緩む。
その隙をついてまりあは伊織の手から逃れると、勢いよくその場から駆け出した。
追いかけようとした伊織の前に、黙って成り行きを見守っていた信長が立ちふさがる。
「ノブ! どいて!」
「どかねえ」
「どいてよっ!」
伊織が金切り声をあげた。
傷つけた。
傷つけてしまった。
こんなかたちで、まりあに知られるなんて。
(ちゃんと自分の口から言うつもりだったのに……!)
これは罰だ。
最初に正直になれなかった自分への。打ち明けると決めてからもうじうじと言い出せずにいた自分への。
これは罰だ。
(どうしよう……!)
伊織は両手で顔を覆った。
ひどい事を言わせてしまった。
きっと伊織の何倍も、まりあの方が傷ついている。
「落ち着けよ伊織!」
ふいに肩に強い力を感じた。
あげた顔の先で、信長が諭すように口を開く。
「しっかりしろよ! お前が今まりあちゃん追いかけたってなんもできねえだろ!? ――とにかく、まりあちゃんのことはオレに任せろ。いいな? お前はとりあえず、散らばった弁当を片付けて、混乱した頭をちゃんと冷やして、オレたちが帰ってくるまでここにいろ。万が一授業が始まるようだったら教室に戻れ。いいな? わかったか?」
ゆっくりと、言い聞かせるように紡がれる信長の言葉に、伊織はこくこくと頷いた。
信長はよし、と満足そうに呟くと、まりあの消えた方へと駆け出した。
その背中が見えなくなると、伊織は足の力が抜けたようにその場にしゃがみこんだ。
まりあの涙。
きらきらと輝いて、とめどなく地面を塗らした、あの涙。
流させたのはわたしだ。
最悪の形でまりあに知られてしまった。
一番ひどい傷つけ方をしてしまった。
(でも、ちゃんと話さなきゃ……)
どんなに罵倒されても構わない。
どんなに殴られたとしても構わない。
ちゃんと宗一郎が好きだと打ち明けて、昨日あったことも全部まりあに話して。
それでもまりあが友達でいてくれるかなんてそんなのわからなかったけど、それでも友達でいたいなら話さなくてはならないと思った。
(だって、まりあちゃんはいつだってわたしに正直でいてくれたもの……!)
良いことも悪いことも全部、まりあは思っていることを口に出して伝えてくれた。
今度は自分の番だった。
(まりあちゃん……)
あのとき逃げた代償は、きっちり払わなければならない。
きちんとそれを理解すると、ぐちゃぐちゃだった頭の中身がすっと整理されたような気がした。
伊織は自分を落ち着けるように大きく息を吸い込むと、震える手を散らばったお弁当箱に伸ばした。
まりあの目から涙がこぼれるたびに、胸がぎしぎしと音を立てる。
「ひどいよ、伊織ちゃん! いくら伊織ちゃんが弱ってたからって、だからってまりあに何も言わないでまりあから宗ちゃんを奪うの!? ひどい……! いくらなんでもそれってあんまりよ! 裏切り者! 伊織ちゃんなんて大嫌い! 伊織ちゃんなんか、伊織ちゃんなんか……あのまま……っ、あのまま治らなければよかったのに!」
まりあの言葉が、鋭い矢のように伊織の心に突き刺さった。
まりあの肩に置いた伊織の手の力が一瞬緩む。
その隙をついてまりあは伊織の手から逃れると、勢いよくその場から駆け出した。
追いかけようとした伊織の前に、黙って成り行きを見守っていた信長が立ちふさがる。
「ノブ! どいて!」
「どかねえ」
「どいてよっ!」
伊織が金切り声をあげた。
傷つけた。
傷つけてしまった。
こんなかたちで、まりあに知られるなんて。
(ちゃんと自分の口から言うつもりだったのに……!)
これは罰だ。
最初に正直になれなかった自分への。打ち明けると決めてからもうじうじと言い出せずにいた自分への。
これは罰だ。
(どうしよう……!)
伊織は両手で顔を覆った。
ひどい事を言わせてしまった。
きっと伊織の何倍も、まりあの方が傷ついている。
「落ち着けよ伊織!」
ふいに肩に強い力を感じた。
あげた顔の先で、信長が諭すように口を開く。
「しっかりしろよ! お前が今まりあちゃん追いかけたってなんもできねえだろ!? ――とにかく、まりあちゃんのことはオレに任せろ。いいな? お前はとりあえず、散らばった弁当を片付けて、混乱した頭をちゃんと冷やして、オレたちが帰ってくるまでここにいろ。万が一授業が始まるようだったら教室に戻れ。いいな? わかったか?」
ゆっくりと、言い聞かせるように紡がれる信長の言葉に、伊織はこくこくと頷いた。
信長はよし、と満足そうに呟くと、まりあの消えた方へと駆け出した。
その背中が見えなくなると、伊織は足の力が抜けたようにその場にしゃがみこんだ。
まりあの涙。
きらきらと輝いて、とめどなく地面を塗らした、あの涙。
流させたのはわたしだ。
最悪の形でまりあに知られてしまった。
一番ひどい傷つけ方をしてしまった。
(でも、ちゃんと話さなきゃ……)
どんなに罵倒されても構わない。
どんなに殴られたとしても構わない。
ちゃんと宗一郎が好きだと打ち明けて、昨日あったことも全部まりあに話して。
それでもまりあが友達でいてくれるかなんてそんなのわからなかったけど、それでも友達でいたいなら話さなくてはならないと思った。
(だって、まりあちゃんはいつだってわたしに正直でいてくれたもの……!)
良いことも悪いことも全部、まりあは思っていることを口に出して伝えてくれた。
今度は自分の番だった。
(まりあちゃん……)
あのとき逃げた代償は、きっちり払わなければならない。
きちんとそれを理解すると、ぐちゃぐちゃだった頭の中身がすっと整理されたような気がした。
伊織は自分を落ち着けるように大きく息を吸い込むと、震える手を散らばったお弁当箱に伸ばした。