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まりあを体から離すと、伊織は二人に向けて頭を下げた。
伊織の肩に小百合の綺麗な白い手が触れる。
「伊織ちゃん、顔をあげて」
ふわりと小百合に抱きしめられる。
伊織は驚いて目を白黒させた。
「さ、小百合先輩!?」
「伊織ちゃんごめんね。わたし、知っていたのに……。肝心なときにあなたを守ることができなくて、ほんとうにごめんなさい……!」
抱きしめられた体から、小百合が小さく震えているのが伝わってくる。
伊織の胸にじんわりとあたたかいものが広がっていく。
信長もまりあも牧も、小百合も。みんなが伊織のことを心配してくれている。
それだけで胸がいっぱいだった。
その気持ちだけで涙が出るくらい嬉しかった。
だから小百合がそんなこと気に病むことなんてないのに。
伊織は小百合を体から離すと瞳を細めて微笑んだ。
「小百合先輩、そんなことないです。先輩はなんにも悪くないです。だから謝ることないです。……ただ、小百合先輩がそんな風に気にかけてくださったことは、とても嬉しいです。ありがとうございます」
「伊織ちゃん……!」
小百合が伊織にしがみついて涙を零した。
伊織は優しくその背中を撫でる。
すると、牧がそんな小百合を伊織から引き剥がした。
「きゃっ!?」
「感動のご対面はここまででいいだろう、小百合。――もう吹っ切れたみたいだな、鈴村」
「はい! 完全にってわけにはいかないですけど……でももう大丈夫です! あんな風に取り乱したりはしません」
「はは、そうか。いい顔をしてるぞ、鈴村。お前にはそういう表情がよく似合う」
「牧先輩……!」
伊織は感動して目を潤ませた。
牧はそんな伊織に意地悪く微笑む。
「感動してくれるのはいいがな、鈴村。今までサボってた分、お前には仕事がいっぱいだぞ」
「サボ……っ!? 仕事……!?」
「ああ。……これからも、ばりばり頼むぞ。マネージャー」
その言葉に伊織は目を見開いた。
泣きたいような衝動が胸に押し寄せてくる。
迷惑ばかりかけて、バスケ部に対して申し訳なく思っていた伊織の不安がゆっくりと溶けていく。
ここにいてもいいと言ってもらえた。
必要としていると言ってもらえた。
そんなことが、今の伊織には泣きたくなるほど嬉しかった。
「はい! 鈴村伊織、誠心誠意頑張りますので、これからもよろしくお願いします!」
がばりと体を折り曲げた頭の上、牧と小百合の笑い声が聞こえてくる。
「はは、大げさだな。でも、頼りにしてるぞ」
「はい!」
顔をあげて満面の笑みで微笑めば、牧が頭を撫でてくれた。
あたたかいこの場所。
大好きな友達と、大好きな先輩に囲まれて。
自分の存在もまた、相手に必要とされて。
かけがえのないこの場所を大切にしたいと、伊織は心の底から強く思った。